週44時間特例廃止の移行期間はいつまで?実務対応スケジュールと再設計ポイント【2026年版】
〜小売・飲食・宿泊など“特例対象”の勤務体系を、40時間制にスムーズ移行するための実務ロードマップ〜
「週44時間までOKだったはずなのに、いつの間にか残業扱いになっていた…」
この手のトラブルは、制度が切り替わるタイミングで一気に増えます。
週44時間特例の見直しは、小売・飲食・宿泊など“現場が回っているがゆえに”長時間化しやすい業種ほど影響が大きいテーマです。
単に「4時間減る」ではなく、所定労働時間・シフト基準・固定残業の設計・36協定の運用まで、仕組み全体に連鎖します。
この記事では、2026年以降を見据えた議論の方向性(労働基準関係の検討資料等)を前提に、現場で“今から準備できる”実務対応を、スケジュールとモデルケースで整理します。
「気づいたら運用がズレていた」を避けるための、実務ガイドとしてお使いください。
特例廃止の背景とスケジュール
● 2026年の適用範囲
週44時間特例は、労働基準法の労働時間規制(原則:週40時間)に対する例外として、一定の小規模事業場・特定業種に認められてきた運用です。
ただし近年は、労働時間管理の厳格化や働き方改革の流れを背景に、例外の縮小・見直しが議論されています。
実務上は、制度が切り替わると「週40時間を超えた分」の扱いが変わります。
これまで特例枠で吸収していた時間が、所定外労働(時間外)として計算対象になり、賃金計算・36協定・割増の考え方が連動して変わります。
- 影響が出やすいポイント:週40時間超の発生頻度が増える
- 連鎖する論点:割増賃金、36協定の上限、シフトの組み方、固定残業の根拠
● 業種ごとの注意点
同じ「週40時間への寄せ方」でも、業種によって詰まりやすい箇所が違います。
現場のボトルネックを先に押さえておくと、再設計がスムーズになります。
- 小売:開店準備・締め作業が見えにくく、実働が膨らみやすい
- 飲食:仕込み・片付け・深夜帯で時間が伸びやすい
- 宿泊:夜勤・長拘束が絡み、勤務設計が複雑化しやすい
「どの時間が売上に効いていて、どの時間が惰性になっているか」を把握できる企業ほど、40時間制への移行は短期間で仕上がります。
● 経過措置の有無
制度見直しが進む場合でも、すべての事業場に一律の“長い猶予”が置かれるとは限りません。
実務対応としては、経過措置の有無に依存するのではなく、「来期の就業規則・雇用契約・シフト基準をどう置くか」を先に確定させる方が安全です。
- 実務の基本方針:2025年中に再設計の骨組みを固める
- 運用の狙い:2026年以降に“残業が増える構造”を先に潰す
移行期間にやるべきこと
● 所定労働時間の再設計
最初に手を付けるべきは、所定労働時間(会社が定める通常の労働時間)の再設計です。
なぜなら、ここがズレたままだと、固定残業・シフト・賃金計算がすべて歪むからです。
見直し対象になりやすい典型例は、6日勤務前提の設計です。
週40時間に寄せる場合、勤務日の組み方自体を変えないと、構造的に時間外が出やすくなります。
- 再設計の方向性:8時間×5日(週40時間)に寄せる
- 7.5時間型:5日+短時間日(半日など)で調整する
- 6日勤務:時間外が発生しやすい前提になるため、業務設計の見直しが必須
ポイントは「今の勤務表をそのまま縮める」のではなく、
業務量・ピーク時間・役割分担まで含めて、40時間内に収める設計に置き換えることです。
● 固定残業の見直し
所定労働時間が変わると、固定残業(いわゆるみなし残業)の根拠が揺れます。
特に、所定時間の設計が曖昧なまま固定残業を組んでいる企業は、未払いトラブルに発展しやすい領域です。
- 注意点:固定残業は「所定外労働」に対する支払い設計
- 影響:所定労働時間が変われば、固定残業の前提計算も再構築が必要
- 実務:固定分を超える時間外の扱い(差額支払い)を明確にする
ここは、賃金規程・雇用契約書・就業規則の整合が問われます。
運用だけで逃げず、書面側の整備もセットで進めるのが鉄則です。
● アルバイトの時間調整
現場で一番“見落としやすい”のが、パート・アルバイトの週時間管理です。
曜日固定や繁忙期の延長で、気づかないうちに週40時間に近づくケースが出ます。
- 基準化:週40時間を超えない上限ルールをシフト作成側に落とす
- 回避:6日勤務を常態化させない
- 設計:繁忙期は「延長」ではなく「人員配置の追加」で吸収する
アルバイトの調整は、現場が“なんとか回す”ほど破綻が遅れて見えます。
だからこそ、基準(上限・例外・承認フロー)を先に作っておく価値があります。
移行シミュレーション(モデルケース)
● 小売
小売では「開店準備・締め作業」の吸収が鍵になります。
レジ締め、発注、棚卸し、品出しなど、売上に直結しづらい作業が時間を押し上げます。
- 施策:作業を平準化し、繁忙時間帯に人員を集中させる
- 設計:棚卸し日・検品日を平日化してピークから外す
- 文化:6日勤務前提をやめ、週5日中心に組み替える
● 飲食
飲食は深夜帯と仕込み・片付けで延びやすく、遅番固定化も起きがちです。
深夜帯は割増賃金にも直結するため、時間の増加=コスト増になりやすい構造です。
- 施策:仕込みを日中に寄せ、閉店後作業を短縮する
- 運用:遅番固定の偏りを減らし、役割分担を明確化する
- 注意:勤務間インターバル制度/勤務間インターバルと衝突しやすい勤務形を点検する
● 宿泊
宿泊は夜勤の拘束時間が長く、ローテーション設計が難しい領域です。
「夜勤の回数」だけでなく、「拘束・休憩・実働」の切り分けが実務の焦点になります。
- 施策:夜勤の拘束を分割し、週内の実働をコントロールする
- 設計:夜勤と日勤のローテーションを再定義する
- 注意:勤務間インターバル制度/勤務間インターバルとの整合を事前に確認する
宿泊業は“現場の工夫”だけで成立しづらく、就業規則・シフト基準・役割配置を同時に組み替える必要が出やすい業種です。
まとめ
週44時間特例の見直しは、勤務体系を「週40時間の構造」に置き換える作業です。
4時間の違いに見えても、所定労働時間・固定残業・36協定・シフト運用に連鎖するため、準備不足ほど痛みが増えます。
- ポイント:2025年中に再設計の骨組みを固め、運用を先に寄せる
- 優先順位:所定労働時間→固定残業→アルバイトの週時間基準の順で整える
- 現場別:小売は準備・締め作業、飲食は深夜帯、宿泊は夜勤設計が要注意
制度の切替期は、現場が頑張るほど“ズレ”が見えにくくなります。
だからこそ、早めに基準と設計を固め、2026年以降のシフト崩れやコスト増を抑える体制を作っておくことが重要です。
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