2026年改正で人件費はどれくらい増える?|中小企業が知るべき経営インパクトの実態
〜飲食・小売・サービス業を中心に、人件費増加の構造を専門家視点で整理〜
2026年に向けた労働基準法をめぐる一連の改正の動きは、中小企業、とくに飲食・小売・サービス業において 「人件費がどれくらい増えるのか」という不安を強く生んでいます。
勤務間インターバル、連続勤務の制限、週40時間管理への完全移行、法定休日の事前特定など、 複数の制度が同時に動くことで、これまでと同じシフト・同じ人数では回らなくなる場面が増えることが想定されています。
ただし注意したいのは、人件費が増える理由は「賃金単価が上がるから」ではないという点です。 実務上の影響は、もっと構造的なところにあります。
この記事では、厚生労働省や労働局が公表している一次情報を前提に、 2026年改正によって人件費が増えやすくなる仕組みと、 経営としてどう向き合うべきかを整理します。
人件費が増える3つの主要因
● 勤務間インターバルによる早番・遅番整理
2026年に向けて議論が進んでいる勤務間インターバル(終業から次の始業までの休息時間)は、 シフト設計に大きな影響を与えます。
たとえば、
- 22時まで勤務した従業員を、翌朝9時から早番に入れる
- 閉店作業後に、翌日の開店準備を同じ人に任せる
といった運用は、インターバルの観点から見直しが必要になる可能性が高まります。
その結果、
- 早番と遅番を別の人員で確保する必要が出る
- シフトの「隙間」を埋めるための追加配置が発生しやすくなる
- これまで1人で回していた時間帯に、複数名配置が必要になる
といった形で、間接的に人件費が増える構造が生まれます。
● 週40時間管理への移行による残業コスト
小売業・サービス業などで認められてきた週44時間特例についても、 今後の制度整理の中で見直しが進む方向性が示されています。
これにより、
- これまで通常労働として扱っていた時間が、時間外扱いになる
- 月単位・週単位で見たときの残業時間が増える
- 固定残業(みなし残業)の設計が実態と合わなくなる
といった変化が起こりやすくなります。
同じ働き方をしていても、 「残業としてカウントされる時間が増える」ことで、人件費が上がる点が重要です。
● 休日の事前特定による調整余地の減少
法定休日を事前に特定する運用が求められる方向になると、 これまで現場で行われていた「休日の後ろ倒し」「月またぎ調整」が使いにくくなります。
その結果、
- 休日不足が明確に可視化される
- 不足分を補うために代替要員が必要になる
- 休日を守るためのシフト再編が発生する
といった形で、人件費の増加要因になりやすくなります。
飲食・小売で特に増えやすいコスト項目
● 深夜労働に関する割増コスト
飲食・小売では、22時以降の深夜帯に閉店作業・清掃・棚卸しが集中しがちです。
インターバルや連続勤務の制限が重なることで、
- 深夜帯を短時間で終わらせにくくなる
- 深夜作業を複数名で分担せざるを得なくなる
結果として、深夜割増を含む人件費が増加しやすくなります。
● 管理職・店長の休日確保に伴う代替配置
管理職や店長についても、休日や連続勤務の管理がより重視される方向にあります。
その結果、
- 店長不在時の代行者配置
- 副店長・リーダー層の増員
といった形で、間接的な人件費が増えるケースが見られます。
● 副業者の労働時間通算による割増
副業・兼業をしている従業員については、健康確保の観点から、他社での労働時間も含めて把握することが求められる方向で議論が進んでいます。
一方で、時間外割増賃金の計算自体は、あくまで各事業場ごとに行う整理が前提です。
これにより、
- 短時間勤務のつもりでも、インターバル不足や連続勤務の観点からシフト調整が必要になる
- 繁忙期に「入れたい時間帯に入れられない」ケースが増えやすくなる
- 代替要員の手当てや配置転換が必要になり、人件費に間接的な影響が出る可能性がある
といった運用上の負荷が増える点に注意が必要です。
人件費増にどう向き合うべきか
● 業務の棚卸し
最初に取り組むべきは、業務の棚卸しです。
- 深夜でなくてもできる作業はないか
- 社員でなくてもできる業務はないか
- 売上に直結しない作業が惰性で残っていないか
これだけでも、配置人数を見直せる余地が見えてきます。
● 営業時間の見直し
30分〜1時間の営業時間短縮でも、
- 深夜割増の削減
- 管理職の負担軽減
といった効果が見込める場合があります。
● オペレーションの自動化
セルフオーダー、セルフレジ、モバイルオーダーなどの導入により、 1店舗あたりの必要人員を抑えられるケースも増えています。
● 採用戦略の変更
「誰でもいいから採る」ではなく、
- 早番専任
- 遅番専任
- 土日限定
といった時間帯固定型の採用に切り替えることで、 インターバルや休日管理と相性のよい体制を作りやすくなります。
2026年に向けて今からできるコスト対策
- シフト構造の棚卸し
- 早番・遅番の分離
- 月末の休日抜け防止ルール
- 副業者の申告制度整備
- 勤怠システムのアラート見直し
これらはすべて、大きな投資をせずに着手できる現実的な対策です。
まとめ
2026年改正による人件費増は、単純な賃金上昇ではなく、 運用構造の変化によって生じるコストです。
勤務間インターバル、週40時間管理、休日の整理は、 シフト設計・人員配置・管理職の役割と切り離して考えることはできません。
この改正を「コスト増」と捉えるか、 「無理のある運用を整理する機会」と捉えるかで、 その後の経営の安定度は大きく変わってきます。
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