2026年の労基法改正に向けた「最初の30日」実務リスト|中小企業スターターパック
〜いきなり完璧にしなくていい。“最初の30日”で土台だけは必ず固める〜
「改正対応、そろそろ本気で動かないと…」と思いつつ、何から着手すべきかが一番むずかしい。中小企業の現場は、だいたいここで止まります。
そこで本記事は、“最初の30日”でやることをやる順番まで落としたスターターパックです。ポイントは、制度の細部を暗記することではなく、会社として説明できる運用骨格を先に作ること。
なお、勤務間インターバルは現在「導入が努力義務」とされ、導入・運用のマニュアルも公表されています。まずは自社ルール化しやすい形に落とし込むのが近道です。
また、副業・兼業の労働時間は、事業主が異なっても通算するのが原則(労基法38条)であり、通算の考え方が資料でも整理されています。
30日以内に絶対やるべき“優先度A”対応
● 勤務間インターバルの設定
勤務間インターバルは「退勤から次の始業までの休息時間を確保する仕組み」で、生活時間・睡眠時間の確保を狙いとします。まず30日でやるのは、シフトの全面改造ではなく、会社の方針を紙に落とすことです。
- 基本ルール(例:退勤→次の始業まで最低○時間)
- 現場で起きがちな崩れ方(閉店作業長引き、棚卸し、早朝立上げ等)
- 例外の扱い(誰が承認し、何を記録するか)
“店長のその場調整”を残すと、あとで説明不能になります。例外は「上長承認+記録」で固定化するのが安全側です。
● 休日の事前特定ルールの決定
法定休日(労基法35条)は「毎週少なくとも1回」または「4週を通じ4日以上」が原則です。
- 週の起算日(会社としての週の切り方)
- 法定休日と所定休日の区別(シフト表と勤怠で表記ルール化)
- 月末またぎ週の点検手順(誰が、いつ、何を見るか)
厚労省資料でも、法定休日の特定は通達に基づく指導の考え方が整理されています。ここを決めないと、連続勤務や割増賃金の話が全部ぐらつきます。
● 週44時間特例の“該当有無”を棚卸し
法定労働時間は原則「1週40時間」ですが、一定の小規模事業場には「1週44時間」の特例措置があります。まずやるのは、自社(店舗)が該当するか/していないかの確認です。
- 常時使用する労働者数(10人未満か)
- 業種が特例対象か
- 契約書・雇用条件が「44時間前提」になっていないか
ここが曖昧だと、残業判定・36協定・人件費試算が全部ズレます。
● 管理職(店長・SV)の労働時間を“見える化”
「管理職だから大丈夫」は、実務では一番事故ります。30日でやるのは、責めることではなく実態の把握です。
- 直近4週間の実働(始業終業・休憩・休日)
- 深夜(22〜5時)にかかる頻度
- 休みが“結果論”になっていないか
時間外労働や休日労働の考え方は、基本資料でも整理されています。
● 副業者の申告ルートを整備
副業・兼業の労働時間は通算が原則です。ここでの目的は「知らなかった」を無くすこと。
- 副業の有無(はい/いいえ)
- 勤務曜日と時間帯(目安でOK)
- 深夜帯の有無(22〜5時)
- 申告の更新頻度(例:月1回、変更時は都度)
優先度B(60日以内にやること)
● シフト確定を前倒しする
休日の事前特定やインターバル確保は、シフトが直前だと設計できません。60日以内に「翌月分は前月○日まで」を社内ルールにします。
● ダブルワーク者の“危ないパターン”を抽出
全員を完璧に管理しようとすると破綻します。まずは危険パターンの洗い出し。
- 深夜副業→翌朝始業
- 通算で長時間になりやすい(週あたりが膨らむ)
- 休日が実質的に消えている
● 人件費インパクトをラフ試算する
週40時間、時間外、深夜割増の基本は「どの時間が割増対象になるか」を押さえることからです。
- “今のまま”だと残業が何時間発生しそうか
- 深夜帯の比率(割増が乗るゾーン)
- 追加採用が必要か(週時間が足りるか)
● 店舗別の就業規則(ローカル運用)の設計図を作る
多店舗は「本則」と「店舗ルール」を分けないと、現場が守れません。ここは“条文づくり”より先に、運用設計図を作るのが勝ち筋です。
優先度C(90日以内にやること)
● 勤怠システム改修(止める仕組み)
- インターバル不足アラート
- 連続勤務の自動カウント
- 週40時間超えの警告
- 深夜帯の抽出
人力チェックは、繁忙期に必ず抜けます。“鳴る仕組み”を先に置くのが現実的です。
● 管理者研修(店長が同じ判断をする状態)
ルールだけ渡すと、現場は「例外」で回そうとします。研修は、NG例とOK例をセットで配るのが一番効きます。
● 36協定の見直し(40時間基準で整合)
時間外・休日労働の前提がズレたままの36協定は、運用で事故ります。基本の考え方をベースに、自社の実態に合わせて整合を取り直します。
● 個別通知の準備(従業員に説明できる資料)
- シフトルールの変更点
- 休日の区別(法定/所定/振替/代休)
- 副業申告のお願い(目的と範囲)
チェックリスト(そのまま使える)
● 30日(A)
- インターバル方針(基本・例外・承認・記録)を決めた
- 週の起算日と法定休日の表記ルールを決めた
- 週44時間特例の該当有無を確認し、契約を棚卸しした
- 管理職の実働を4週間分で見える化した
- 副業申告の入口(フォーム・更新ルール)を作った
● 60日(B)
- 翌月シフトの確定期限を決めた
- 危険な副業パターン(深夜→朝など)を抽出した
- 人件費インパクトをラフ試算した
- 本則と店舗ルールの切り分け方針を作った
● 90日(C)
- 勤怠アラート要件を決め、改修に着手した
- 管理者向け研修(NG/OK例)を作った
- 36協定の整合を見直した
- 従業員向け通知のドラフトを作った
まとめ
改正対応は、「一気に完璧」を目指した瞬間に止まります。勝ち筋は、30日で“説明できる骨格”を作り、60日で運用に落とし、90日で仕組み化することです。
勤務間インターバルは導入・運用の指針が示されており、まずは自社の運用ルールに翻訳するのが現実的です。
副業・兼業は労基法38条の通算が原則で、申告ルートを作らない会社ほど、あとで苦しくなります。
まずはこのリストのA(30日)だけでOK。“動き始めた会社”になった瞬間から、2026に向けた負担は確実に軽くなります。
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