法定休日の「事前特定」とは?労基法35条の考え方と2026を見据えた実務対応
〜「どこかで休ませればOK」から、「休日を先に位置づける」運用へ〜
「週1日は休ませているつもりなんですが……」「シフト上、どこかで休みが入っていれば大丈夫ですよね?」——この感覚のまま運用している店舗・企業は少なくありません。ところが近年、労基署対応・割増賃金・連続勤務・副業通算などの論点が絡み合い、休日運用は“結果オーライ”では通りにくくなっています。
ここでよく出てくるのが「法定休日の事前特定」という言い方です。ただし大事なのは、労基法35条が「必ず毎週この曜日を休日にせよ」と書いているわけではない点です。一方で行政解釈や実務では、週休制度の趣旨・振替休日の要件・是正指導の観点から、休日が曖昧な運用はリスクとして評価されやすくなっています。
この記事では、法定休日がなぜ“事前に決めて説明できる状態”を求められるのかを整理します。
- 労基法35条の原則
- 曖昧運用が増えた背景
- 実務で必要になる変更
- 就業規則の直しどころ
- よくある誤解
店長・管理職・経営者が現場に説明できる形に落とし込むのが目的です。
法定休日の原則(労基法35条)
● 「週1回」の意味
労基法35条は「毎週少なくとも1回の休日」または「4週間を通じ4日以上の休日」を与える義務を定めています。ここでいう休日は、原則として暦日(0時〜24時)で労働義務がない日を指す、と整理されます。シフト業態でトラブルになりがちなのは、休日が“半日休み”のように扱われたり、休日の定義と実態がズレたりするケースです。
週1回の原則に沿って運用するなら、設計としては「6連勤+1日休み」を基本線に置き、例外(繁忙・欠勤対応)が出ても、連続勤務が積み上がらないように“歯止め”を用意する必要があります。
● 「4週4日」の意味
「4週4日」は「月に4日休めばよい」という意味ではありません。連続した4週間の期間で4日以上の休日が必要、という考え方です。月末月初でカレンダーをまたぐと、この“連続期間”の感覚が崩れやすく、結果として連続勤務・休日不足の見落としが起きます。
4週4日で運用する場合ほど、「どの日を休日として扱うのか」を先に押さえ、シフト変更が出ても休日の位置づけが崩れない設計が重要になります。
● 月をまたぐ場合の取扱い
実務で混乱が多いのが「月をまたぐ週」です。棚卸し、セール、締め作業などが月末月初に集中し、シフトが膨らむほど、休日カウントの見落としが起きやすくなります。ポイントは「カレンダーの月」ではなく「会社で定めた週の区切り(起算日)」で管理することです。
- 会社として「週の起算日」(例:月曜〜日曜)を明確にする
- 起算日ベースで、法定休日(最低限の休日)を配置する
- 月末月初の繁忙期ほど、連続勤務が伸びないよう先にブレーキを入れる
なぜ「事前に特定して説明できる運用」が求められるのか
● 休日が曖昧な運用が増えている
現場では「欠勤が出たから、誰かの休みを動かした」「今週は忙しいから休みは来週に」など、場当たり調整が起きがちです。ですが休日が曖昧だと、労働者本人が予定を立てられないだけでなく、会社として「法定休日をどう確保しているのか」を説明しにくくなります。
また、休日が曖昧な職場ほど、割増賃金(法定休日労働かどうか)や、連続勤務の把握、勤怠修正の正当性など、他の論点も連鎖して崩れます。
● 管理職・店長の休日が「未定義」になりやすい
「管理職は休日規制の対象外」といった誤解のまま、店長が実質“休みなし”で回しているケースがあります。しかし、管理監督者に当たるかどうかは厳格に判断され、名ばかり管理職問題も含めてリスクが高い領域です。さらに、たとえ管理監督者であっても安全配慮義務の観点から、休日や健康管理を“会社が放置してよい”わけではありません。
だからこそ、店長・管理職にも「休日の位置づけ」と「例外時の処理(振替・代休・記録)」を会社として持っておくことが、防衛線になります。
● 副業・兼業が増え、通算管理と衝突する
副業・兼業では、労働時間の通算(労基法38条)や健康確保が論点になります。自社だけで休日が確保されていても、他社就労と重なることで実態として休めていない、というケースが起き得ます。ここで問われやすいのは「副業申告の仕組みがあり、リスクを把握できる体制だったか」です。
休日の事前特定は、副業者にとっても「この日は休める」という前提を作る土台になります。副業申告制度とセットで運用しないと、店舗側も本人側も“事故りやすい構造”になります。
● 労基署対応では「休日の位置づけ」と「記録」が見られる
是正指導の場面では、単に「休ませました」ではなく、「どの日を法定休日として扱い、いつ確定し、変更時にどう処理したか」が問われやすくなります。特に振替休日は、就業規則の規定、休日の特定、前日までの通知など、事前性が要件として整理されています。結果的に、休日全体の運用も“事前に説明できる形”が強く求められます。
事前特定で必要になる実務
● シフト確定日の前倒し
休日を事前に位置づけるには、「シフト確定が直前」だと成立しません。最低限、シフト確定日を会社ルールとして置き、確定時点で法定休日の配置が目で見て分かる状態にします。目安としては、翌月分を前月20日前後までに確定できると、月末またぎの事故が減ります。
● 休日の記載ルールを変える
シフト表・勤怠システムで「休み」とだけ書かれていると、法定休日なのか所定休日なのか説明できません。少なくとも次の区別を“見える化”します。
- 法定休日(35条上の最低限の休日)
- 所定休日(会社が追加で設ける休日)
- 振替休日(事前に休日を他日に振り替える)
- 代休(休日労働の代償として後日与える休み)
この区別は、休日労働の割増計算や、週・4週の休日確保の説明に直結します。
● 月末またぎは「先に危険週を塗る」
月末月初が忙しい業種(小売・飲食・宿泊など)は、危険週を先に特定し、連続勤務が伸びない配置にします。ポイントは、繁忙対応を“後から埋める”のではなく、先に「休みを動かせない枠」として置く発想です。
● 店長・管理職の休日を「会社ルール」にする
店長が最後の調整弁として休みを削る運用は、短期的には回っても長期的に崩れます。店長・管理職にも法定休日の位置づけを設定し、例外対応が出たら振替・代休・記録・承認フローで処理します。属人的な“美談運用”は、法務・労務上は負債になりやすいのが現実です。
企業がやるべき就業規則の修正
● 休日の種類を定義する
就業規則には、法定休日・所定休日・振替休日・代休の定義を整理して記載します。定義が曖昧だと、休日労働の割増や休日確保の説明が崩れます。
● 代休制度の運用ルール
代休は「休日労働を帳消しにする仕組み」ではなく、休日労働は休日労働として割増賃金の対象になり得ます。だからこそ、代休の付与期限、申請方法、賃金取扱いを文章化しておきます。
● 週の起算日を明記する
週の起算日(例:月曜開始)を就業規則・シフト規程・勤怠設定で統一します。起算日が曖昧だと、「週1回」や「4週4日」の判断がブレて事故ります。
● 店舗ごとの特定ルール
店舗ごとに営業時間や繁忙が違う場合でも、最低限の共通ルール(法定休日の考え方、表示方法、変更時の処理)を本部で統一し、店舗例外は“例外として”文章で管理します。現場裁量だけで回すと、監査・労基署対応で説明が割れます。
事前特定に関するよくある誤解
● 誤解① 結果として休ませていればOK
休日の結果が合っていても、運用が場当たりだと説明責任が弱くなります。特に振替休日のように事前性が要件になる場面では、休日全体の設計も“事前に決めている状態”が強く求められます。
● 誤解② シフト表に「休み」と書けば法定休日になる
法定休日・所定休日の区別がないと、割増賃金や休日確保の説明が崩れます。「休み」ではなく「何の休みか」を表示できる形にします。
● 誤解③ 管理職は休日を考えなくてよい
管理監督者性は厳格で、名ばかり管理職問題もあります。加えて安全配慮義務の観点から、会社は健康確保の設計を放棄できません。管理職こそ“休日の未定義”が事故を呼びます。
● 誤解④ 副業の休日は相手先の問題
通算管理や健康確保の観点から、副業申告の仕組みがないこと自体がリスクになります。自社の法定休日を事前に位置づけたうえで、副業申告とセットで運用するのが現実解です。
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