勤務間インターバル11時間の法的根拠|2026年を見据えた労基法整理と実務対応

〜「なぜ11時間なのか?」が分かれば、現場運用の設計が一気にクリアになる〜


2026年を見据えた労働時間管理の中で、現場への影響が最も大きい論点の一つが勤務間インターバル11時間です。飲食・小売・宿泊などの現場では、「今のシフトでは回らないのではないか」「遅番から早番はもう組めないのか」といった不安の声がすでに出始めています。

この制度は、単なる働き方改革のスローガンではありません。背景には、国際基準との整合性、過労死や健康被害の防止、深夜労働と事故発生率の関係、WHOやEUの研究データといった科学と法の両面があります。

「なぜ11時間なのか」という根拠を理解せずに運用だけを変えようとすると、現場は混乱します。一方で、意味を理解した上で設計すれば、シフトはむしろ組みやすくなり、事故やトラブルも減らせます。

本記事では、勤務間インターバル制度の法的整理、11時間という数字のエビデンス、条文上の注意点、企業に求められる遵守体制、違反時のリスクまでを、実務に落とし込める形で解説します。


勤務間インターバル制度とは何か(法的整理)


● 労基法に整理される休息時間確保の考え方

勤務間インターバルとは、退勤から次の始業までに一定時間の休息を確保する考え方です。厚生労働省の整理では、労働時間管理の一部として位置づけられており、2026年を見据えて11時間以上の休息確保を前提とした運用が求められる方向で議論が進んでいます。

ポイントは、「長く働かせない」ではなく回復する時間を確保するという発想に軸足が移っている点です。

● EU指令との比較

EUでは、1日あたり連続11時間の休息確保が法的に義務づけられています。日本はこれまで努力義務にとどまっていましたが、国際基準との乖離が指摘されてきました。今回の整理は、国際水準への是正という意味合いも持っています。

● 努力義務から実効性重視への流れ

努力義務では現場に定着せず、健康被害や労災相談が減らなかったという背景があります。そのため、形式ではなく実効性のある運用が重視される流れになっています。

● 厚労省ガイドラインの位置づけ

厚労省は、深夜帯(22時〜5時)の労働は疲労が蓄積しやすく、事故や健康障害のリスクが高まると整理しています。ガイドラインは、現場運用を判断する際の重要な基準として扱われます。


なぜ「11時間」なのか(エビデンス)


● WHOの疲労・健康研究

WHOの研究では、休息時間が短くなるほど疲労が蓄積し、判断力低下や事故リスクが高まるとされています。特に深夜労働を含む場合、休息が10時間を下回るとリスクが急上昇する傾向が示されています。

● 睡眠時間の確保という現実

インターバル11時間は、睡眠7時間と通勤・生活時間を含めた最低限の生活を前提にした数字です。9〜10時間では、生活として成立しにくいという点が国際的にも共通認識になっています。

● 事故率との相関

運輸・製造・サービス業のデータでは、休息が10時間未満になると事故率が1.8〜2倍以上に上昇する傾向が報告されています。立ち仕事が多い飲食・小売では、疲労の影響がより顕著に表れます。

● 深夜労働の健康リスク

深夜労働は、生活リズムの乱れ、心疾患・脳血管疾患のリスク上昇、睡眠の質低下を招くとされています。深夜明けに翌朝勤務を組むことは、医学的にも危険性が高いとされています。


条文整理で押さえるべき実務ポイント


● 休息時間の最低基準

基本は「退勤から次の始業まで11時間以上」です。確保できない場合は、必ず代替措置が必要になります。

● 深夜またぎの扱い

閉店作業や棚卸しが長引き、実際の退勤が深夜になるケースは要注意です。シフト上は成立していても、実態として休息不足になると違反リスクが高まります。

● 例外規定の範囲

例外は、災害対応や人命に関わる緊急業務などに限られます。繁忙や人手不足は例外にはなりません。

● 代替措置の考え方

11時間を確保できなかった場合は、短縮分を後日補填する休息が必要です。理由と対応内容を記録として残すことが重要になります。


企業に求められる遵守体制


● システム設定

インターバル不足のアラート、深夜明け早番の制限、連勤カウントなどは、勤怠システム側で止める設計が必要です。

● 就業規則への明記

休息時間の基準、勤務帯の定義、代替措置の手続きなどを明文化し、運用基準を曖昧にしないことが求められます。

● 勤務帯設計と裁量管理

遅番と早番を分離し、深夜業務は固定化するなど、勤務帯そのものの再設計が必要です。店長の裁量に任せきりにしない仕組みづくりが重要になります。


違反した場合のリスク


インターバルが確保できていない状態は、労基署指導や是正勧告、行政対応の対象になります。事故や健康被害が発生した場合、安全配慮義務違反として企業責任が問われる可能性もあります。深夜明け早朝勤務は、特にリスクが高い運用です。


人事・労務の実務対応でお困りの方へ

副業・労働時間管理・割増賃金対応など、
制度だけでなく「実務でどう動くか」のご相談を受け付けています。

※中小企業の経営者・人事担当者の方からのご相談が中心です。

👉 人事部門導入のご相談は: トナリの人事課長®公式ページ

「トナリの人事課長®」は、中小企業の“人事部門まるごと導入ではなく、実務伴走で仕組みを整えるHR支援サービス”です。


※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

ブログ一覧に戻る

人事ニュースを受け取る

※登録はいつでも解除できます