小売業(スーパー/ドラッグストア/アパレル)は2026年に何が変わる?シフトの“カオス解消”実務ガイド
〜棚卸し・早朝品出し・深夜シフト…小売特有の「時間のゆがみ」を、勤務間インターバル・連続勤務・休日設計で整える〜
2026年に向けて進められている労基法改正の検討の中で、飲食業と並んで影響が出やすいのが小売業(スーパー/ドラッグストア/アパレル)です。
小売業は「営業時間の長さ」だけでなく、開店前作業・棚卸し・閉店後の売場整理など、シフト外に見えやすい作業が実態として積み上がりやすい業種です。 その結果、勤務間インターバル不足、連続勤務の増加、週40時間の誤判定、休日設計の曖昧さが連鎖して、現場が“カオス化”しやすくなります。
重要なのは、法律の細部を暗記することではありません。 現場で事故を起こすパターンは、だいたい決まっています。
- 棚卸しが深夜まで伸びて、翌日も普通に早番
- 早朝品出しが固定メンバー化し、遅番と噛み合って勤務間インターバルが崩れる
- 短時間パートの“時間ムラ”で、週40時間の管理が見えなくなる
- 休日が「結果的に休んだ日」扱いになり、連続勤務の判定が店舗ごとにバラつく
- シフト表と勤怠が一致せず、締め後に地獄の修正が発生する
本記事では、小売業で起こりやすい労務リスクを整理したうえで、店舗が“今から整えるべき運用”を実務の型として落とし込みます。
小売業で起こる典型的な労務リスク
● 開店前作業
開店前の品出し・清掃・レジ準備は、小売業の標準業務です。 ただし、早朝勤務が常態化すると「前日の遅番」と接続しやすく、勤務間インターバル不足が起きやすくなります。
特に危険なのは、閉店後作業が延びた日です。 退勤時刻が想定より遅れた瞬間に、翌朝の早番が一気にリスク化します。
● 棚卸しロングシフト
棚卸しは“深夜に寄る”前提で設計されがちです。 しかし、棚卸し翌日を通常営業の早番にすると、勤務間インターバルが崩れるだけでなく、疲労蓄積からミス・事故・欠勤が連鎖します。
棚卸しはイベント業務なので、ルール化が効きます。 「棚卸し翌日は原則休み/午後以降のみ」など、店舗ルールとして先に決めるのが現実的です。
● 早番→遅番の連続
小売はピークが複数あります。 午前(開店〜昼)と夕方(帰宅需要)に寄るため、早番→遅番の“通し”が発生しやすい構造です。
通し勤務が常態化すると、週40時間の超過だけでなく、連続勤務の歯止めが効かなくなり、翌日の配置にも無理が出ます。
● パートの時間ムラ
短時間パートを「繁忙時間だけ」入れる運用は合理的です。 一方で、欠員や繁忙で“ちょい足し”を繰り返すと、本人も管理側も総時間が見えなくなり、週40時間や割増の判定が崩れやすくなります。
2026改正が小売業に直撃する理由
● 早朝シフトの勤務間インターバル違反
勤務間インターバルは「退勤から次の始業までの休息時間」です。 小売は、遅番(閉店対応)と早番(開店前作業)が同じ週に混在しやすく、ここが最初の事故ポイントになります。
現場で起きがちなミスは、退勤予定で組んでいることです。 閉店後作業が押した瞬間に、勤務間インターバル不足へ転落します。
● 連続勤務の増加リスク
連続勤務は、休日の定義と運用が曖昧だと増えます。 審議会でも、36協定の休日労働を含めた連続勤務日数を制限する規制の必要性が議論されています。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
小売では繁忙期・棚卸し・催事が連続しやすく、結果的に「休んでいるつもりが休めていない」状態が発生します。 連続勤務は“気合い”では止まりません。 仕組みで止める必要があります。
● 週44時間特例の見直し論点
商業の週44時間特例は、現場運用に“44時間前提”が残りやすい領域です。 ただし、制度の見直しが議論される局面では、現場が44時間運用に依存しているほどダメージが大きくなります。
実務的には、週40時間前提に寄せたシフト設計へ先に移行しておくほうが安全です。
● 休日の明示と判定の厳格化
休日は「結果的に休んだ日」ではなく、「事前にどう設計しているか」が争点になりやすい領域です。 連続勤務の議論でも、休日制度(労基法35条)との関係が整理されています。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
小売店の“シフト再設計ポイント”
● 棚卸し日の翌日は休みにする
棚卸しは例外業務だからこそ、例外ルールが作れます。 棚卸し翌日は「休み」または「午後以降のみ」に固定すると、勤務間インターバル不足と連続勤務の連鎖を一気に止められます。
- 棚卸し担当者は翌日を原則休みにする
- 翌日出勤が必要なら午後以降に限定する
- 棚卸し翌日の早番は“禁止ルール”にする
● 早朝品出しの担当固定化
早朝品出しを固定化すると、出勤時刻が安定し、勤務間インターバルの設計がしやすくなります。 ただし固定化しすぎると、その人が遅番にも入りがちです。
おすすめは「早朝チーム」と「遅番チーム」を分け、交差を最小化することです。
● 短時間パートと混在の最適配置
短時間パートを入れるなら、枠を決めます。 「17〜20時」「9〜12時」など、ピーク枠の固定で時間ムラを抑えると、週40時間の見落としが減ります。
● 深夜営業時間の見直し
深夜営業を続けるかは経営判断です。 ただし深夜営業は、勤務間インターバル、深夜割増、翌日の配置制約が同時に増えます。 売上が“深夜帯に依存しているか”を棚卸しし、深夜帯を縮めるだけでもリスクが落ちます。
店舗運営の落とし穴
● 店長1人への負担集中
シフト作成と勤怠修正が店長1人に集中すると、チェックが粗くなり、勤務間インターバル・連続勤務・週40時間の“事故率”が上がります。
店長が判断するのは「例外」だけにして、通常運用はルールで回す。 ここまで落とすと、店長の負担は確実に減ります。
● 勤怠とシフトが一致しない
小売で多いのが、作業開始が前倒しされ、打刻が後追いになるケースです。 このズレが蓄積すると、週40時間や割増の計算だけでなく、勤務間インターバルの判定も崩れます。
「シフト表どおりに打刻する」ではなく、「実態どおりに打刻し、シフト側を整える」方向に寄せるのが安全です。
● 突発欠勤に弱い体制
欠勤が出たとき、いつもの人に“お願い”で入れてしまうと、勤務間インターバルや連続勤務が崩れます。 欠勤時の代替ルール(誰を優先するか、どの枠を削るか)を事前に決めておく必要があります。
小売業の改正対応チェックリスト
- 棚卸し翌日の早番がゼロになっている
- 早朝品出しの担当と遅番担当の交差が最小化されている
- 休日が事前に明示され、店舗内で認識が揃っている
- 勤務間インターバル不足が発生した場合に、必ず修正が入る
- 連続勤務が長期化しそうな人を事前に検知できる
- 週40時間の超過が出る週を、前月の時点で潰せる
- 短時間パートの“ちょい足し”がルール化されている
- 勤怠とシフトが一致している(ズレの原因が潰されている)
小売業のシフトは、気合いで回すほど壊れます。 逆に、型を作るほど楽になります。
2026年に向けた議論の流れを“脅威”として受け取るより、今のうちに店舗運用を標準化するチャンスと捉えたほうが、結果的に人も定着しやすくなります。
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