就業規則改正の“順番”と2026年までに絶対に漏らさないためのチェックリスト
〜法改正対応を“やったつもり”で終わらせないための、実務プロセスと優先順位ガイド〜
「2026年の労基法改正が近づいているけれど、どこから手をつければいいのか分からない」
「就業規則を直す必要があるのは理解しているが、優先順位が整理できていない」
「勤怠・シフトとの整合性も気になるが、誰が何を確認すればいいのか…」
こうした声は、飲食・小売・宿泊・サービス・物流など、シフト制・多店舗運営の企業から特によく聞かれます。
2026年前後の制度見直しでは、
休日、労働時間、連続勤務、勤務間インターバル、副業時間の扱い など、
複数のテーマが同時に動くため、「どこをどう変えればよいのか」という全体像がつかみにくいのが特徴です。
さらに、多くの企業では次のような状態が見られます。
- 就業規則を古いテンプレートのまま使い続けている
- 労基署への届出のためにだけ「最低限の修正」をしている
- シフト運用と規程がリンクしておらず、現場が独自運用になっている
- 店舗や部署ごとに「ローカルルール」が散在している
- 勤怠システムの設定が、ここ数年の法改正に追いついていない
この状態で2026年を迎えると、
休日・連続勤務・インターバル・割増計算など、複数のポイントで違法状態が発生するリスクが一気に高まります。
今回の見直しのポイントは、
「就業規則の文言」だけでなく、「シフト運用」と「勤怠システム」が連動しているかどうかが問われることです。
そのため、少なくとも次の4つを一体で整える必要があります。
- 就業規則(本則・関連規程)
- シフト作成ルール・マニュアル
- 勤怠システムの設定
- 店長・管理職への教育
本記事では、一般論として次の流れで整理します。
- 就業規則改正の正しい手順(順番)
- 2026年改正に向けて「どこから着手するか」の優先順位
- 就業規則と勤怠システムの整合性を取るポイント
- 改定漏れが発生しがちな企業の共通パターン
- 2026年までに仕上げるための“完全対応チェックリスト”
「どこから直せばよいか分からない」「何か抜け漏れていそうで不安」という状態を、
“順番どおり進めれば、自然と一通りの改正が終わる”状態に変えるための整理としてご活用ください。
就業規則改正の正しい手順
まずは、就業規則を見直す際の基本的なプロセス(順番)を整理します。
ここを外さなければ、改定漏れは大幅に減らせます。
● 現状分析
最初の一歩は、いきなり条文を書き換えることではなく、「現状を正確に把握する」ことです。
一般論として、次のような観点から棚卸しを行います。
- 現行の就業規則(総則・休日・労働時間・安全衛生・副業関連)
- 付属規程(勤務時間管理規程、シフト規程、在宅勤務規程など)
- シフト作成ルール(明文化されているか、店舗ごとの差異はないか)
- 店舗・部署単位でのローカルルール
- 勤怠システムの設定内容(休日区分、インターバル、連勤、深夜など)
この段階の目的は、
「どこが古いのか」「どこと法改正のズレが大きいのか」を可視化することです。
● 法改正とのギャップ確認
次に、2026年前後の制度見直しのポイントと照らし合わせ、
「現状」と「求められる状態」のギャップを洗い出します。
主な論点は、一般論として次のとおりです。
- 法定休日の事前特定
- 勤務間インターバル(11時間を基準とした休息時間)
- 連続勤務の上限(極端な連勤の抑制)
- 週40時間基準・週44時間特例廃止の影響
- 副業・兼業における労働時間通算と割増の考え方
就業規則・シフト運用・勤怠設定のそれぞれについて、
「何が足りないか」「何が今後のルールと合っていないか」を整理します。
● 規程案作成
ギャップを把握したら、ようやく規程案の作成に進みます。
ここで重要なのは、次の3点です。
- 「必要に応じて」「原則」だけで終わらない、具体的な記載
- 実際のシフト運用・勤怠設定と矛盾しない文言にすること
- 現場の店長が読んでも意味が理解できるレベルの平易さ
条文だけが立派でも、
現場の運用に落とし込めなければ「改正したつもり」で終わってしまいます。
● 従業員代表の意見聴取
就業規則の変更には、従業員代表の意見聴取が必要です。
形式的な署名だけで終わらせず、
- 改正の背景(2026年改正の概要)
- 会社としての方針
- 現場への影響(休日・シフト・残業の考え方)
を丁寧に説明しておくと、後々の運用がスムーズになります。
● 労基署届出
従業員代表の意見を聴取し、規程を確定させたら、所轄労働基準監督署への届出を行います。
届出と同時に、
- 社内イントラや掲示板での周知
- 店長会議・管理職向けの説明
- 勤怠システムの設定変更
まで一気通貫で進めておくと、
「届出はしたが、中身は誰も知らない」状態を防ぐことができます。
2026年改正に向けた優先順位
就業規則を全面的に一度に変えようとすると、現場がついて来られず、プロジェクトも迷走しがちです。
そこで、一般論としての優先順位を整理します。
① 休日の特定(最優先)
もっとも優先度が高いのは、「法定休日を事前に特定する仕組み」です。
- 週1日の休日をどの曜日とするか、原則ルールがあるか
- シフト制の場合、いつまでに翌月の法定休日を決めるか
- シフト表のどこで法定休日を判別できるか(記号・色分け等)
- 休日を変更する場合の手順・通知期限
休日は割増賃金の計算・36協定の範囲にも直結するため、最優先テーマと考えるのが自然です。
② 勤務間インターバル(11時間)
次に押さえたいのが、勤務間インターバル(原則11時間)です。
- 遅番→早番、夜勤明け→日勤の制限
- シフトパターンごとの「組み合わせ NG 集」の明文化
- インターバル不足時の代償措置の考え方
シフト制の企業では、インターバルは「就業規則」×「シフト」×「勤怠設定」の3つを同時に見直す必要があります。
③ 連続勤務制限
2026年前後の見直しでは、極端な連勤を抑制する方向性が強まります。
- 原則として何日以上の連続勤務を認めないのか
- 連勤が見込まれる場合の是正フロー(人事・本部への相談など)
- 店長・管理職だけが過度に連勤になっていないか
を就業規則やシフトルールに落とし込んでおくことが求められます。
④ 時間外算定(週40時間ベース)
週44時間特例の廃止等を踏まえ、
「どこからが時間外労働なのか」を明確にしておく必要があります。
- 週40時間を超えた部分の扱い
- 変形労働時間制を採用している場合の考え方
- 深夜・休日との複合割増の取扱い
時間外算定の考え方は、就業規則と36協定と勤怠設定を同時に見直す領域です。
⑤ 副業のルール(副業時間の扱い)
最後に、副業・兼業に関するルールです。
- 副業の事前申告(開始・変更・終了)
- 他社での労働時間の月次報告
- 本業と通算した際の時間外・割増の考え方
- 健康・安全への影響がある場合の制限の仕組み
副業は「原則容認」の流れである一方、
通算で見た場合の長時間労働リスクが高まりやすいため、就業規則上のルール整備が欠かせません。
就業規則と勤怠システムの整合性を取る方法
就業規則だけを整えても、
勤怠システムの設定が古いままでは、実務上は何も変わりません。
ここでは、代表的な整合ポイントを整理します。
● 休日判定ルール
まず確認したいのは、勤怠システムで法定休日と所定休日が正しく区別されているかです。
- 「休日」区分が一種類だけになっていないか
- 法定休日に勤務した場合、割増計算が自動で行われるか
- 就業規則上の休日定義と、システム上の休日区分が一致しているか
● インターバルアラート
次に、勤務間インターバルのアラート機能です。
- 前日終業〜翌日始業までの時間を自動計算できるか
- 11時間未満の場合に警告を出せるか
- シフト作成段階でアラートを表示できるか
インターバルは、「事後で集計しても既に違反」という性質が強いため、
事前チェックの仕組みがあるかどうかが重要です。
● 連続勤務判定
連勤上限を設ける場合、
勤怠システムで何日連続勤務になっているかを自動カウントできるかも確認しておきたいポイントです。
- シフト作成時に「◯連勤以上はエラー」といった設定が可能か
- 店長・管理職だけが常に連勤になっていないかを集計できるか
● 深夜またぎ処理
飲食・小売・宿泊・物流では、
22時〜5時の深夜帯をまたぐ勤務が日常的に発生します。
- 深夜帯が正しく割増計算されているか
- 日またぎ時の「勤務日」の扱いが就業規則と一致しているか
- 深夜またぎがインターバル・休日判定に与える影響を把握できているか
ここがズレていると、
「システム上は適法だが、実態としては違法」というギャップが生まれやすくなります。
改定漏れが起こる企業の共通点
一般論として、法改正対応で「抜け」が多くなる企業には、いくつかの共通パターンがあります。
● 属人運用に依存している
店長やベテラン社員の経験と勘に依存しているケースです。
- 「今までも何とか回ってきたから大丈夫」という思い込み
- 個人の善意・気合いで無理をしている
- 本部がシフト内容を十分に把握していない
この状態のままでは、
就業規則を変えても現場の運用が変わらないリスクが高くなります。
● 古いテンプレートを使い続ける
10年以上前の就業規則ひな形をベースに、
一部だけ書き換えて使い続けているパターンです。
この場合、
- 休日・労働時間に関する規程が現行法とズレている
- インターバルや副業にまったく触れていない
- 実態と全く合っていない規定がそのまま残っている
といった問題が残りやすくなります。
● 就業規則と勤怠が別管理
紙の規程とシステムの設定が噛み合っていないケースも要注意です。
- 規則上は「週1日休日」となっているが、システム上は別の設定になっている
- 深夜の定義や休日の区分が、就業規則と勤怠で違う
- シフト表の表示と、勤怠の集計ロジックが一致していない
このギャップは、のちのち未払い残業・休日手当の請求につながりやすいポイントです。
● シフト作成者への教育不足
最後に、店長・シフト担当者への教育不足も典型的な原因です。
- 2026年改正の内容を知らない
- インターバルや休日の考え方を理解していない
- 「勤怠のことは本部が何とかしてくれる」と思っている
どれだけ就業規則を整備しても、
「シフトを実際に組む人」が理解していなければ、運用は変わりません。
2026年までに仕上げる“完全対応チェックリスト”
最後に、改定漏れを防ぐためのチェックリストを、
一般論として整理します。
● 就業規則・関連規程
- 休日の定義(法定休日・所定休日)が明確である
- 法定休日の事前特定方法が規定化されている
- 勤務間インターバル(11時間)の考え方が明記されている
- 連続勤務の上限・是正フローが定められている
- 週40時間基準・時間外算定の考え方が整理されている
- 副業のルール(申告・月次報告・通算の考え方)が定められている
● 勤怠システム
- 法定休日・所定休日の区別が設定されている
- インターバル不足(11時間未満)のアラートが設定済である
- 連勤判定ができる仕組みがある
- 深夜・休日・時間外の割増計算が就業規則と整合している
● シフト運用
- シフト確定の締切日が決まっている
- シフト表上で「法定休日」が判別できる
- 遅番→早番、夜勤明け→日勤などの禁止パターンが明文化されている
- 欠員時の埋め方(連勤・長時間に頼らない)が整理されている
● 管理者教育
- 2026年前後の制度見直しのポイントを把握している
- 休日・連続勤務・インターバルの基本を理解している
- 副業と労働時間通算の考え方を理解している
● 届出・社内周知
- 従業員代表への説明・意見聴取が済んでいる
- 労基署への届出が完了している
- 改正後の就業規則を社内に周知している
まとめ|“規程だけ直した会社”と“運用まで仕上げた会社”の差
2026年に向けた就業規則改正は、「規程を書き換えるだけ」では不十分です。
とくに、シフト制・多店舗運営の企業では、
- 休日の特定(法定休日の事前設定)
- 勤務間インターバル(遅番→早番・夜勤明けの禁止)
- 連続勤務の上限と是正フロー
- 週40時間ベースの時間外算定
- 副業のルール(申告・時間通算の考え方)
といった論点を、就業規則・勤怠システム・シフト運用・管理者教育の四つでそろえておく必要があります。
逆に言えば、この記事で整理した「改正の順番」と「チェックリスト」を軸に、一つずつ対応していけば、「どこか抜けている気がする」という不安をかなり減らすことができます。
2026年改正はゴールではなく、自社の働き方をアップデートするためのスタートラインです。
順番を決めて、一つひとつ整えていけば、“やったつもり”ではなく“運用まで含めて仕上がった就業規則改正”に近づいていきます。
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