サービス業の2026年改正対応ガイド|美容・介護・ホテルのシフト・休日・勤務間インターバル

〜施術予約・夜勤・突発欠勤に頼る働き方から、“休息と安全”を前提にしたシフト運用へ〜


2026年前後に予定されている労働時間制度の見直しは、
美容・介護・ホテルなどのサービス業にとって、働き方の前提そのものを問い直すテーマになりつつあります。

現在、公表資料や審議会で議論されている内容を整理すると、今後の方向性として次のようなポイントが意識されています。

  • 勤務間インターバル(終業から次の始業までの休息)の制度化・強化
  • 一定日数を超える連続勤務を抑制する考え方
  • 週40時間を基準とした時間外労働のより厳格な管理
  • 法定休日を「事前に特定して示す」方向性
  • 副業・兼業を含めた労働時間管理・健康確保の必要性

一方で、美容・介護・ホテルといったサービス業は、もともと次のような特徴を持っています。

  • 営業時間が長い、もしくは24時間稼働
  • 予約・利用者対応の都合で休憩を取りにくい
  • 夜勤・宿直・泊まり勤務がある
  • 急なキャンセル・欠勤への対応でシフト変更が頻発する
  • 人材不足の中で「特定の人が頑張る」運用に頼りがち

この「サービス業特有の働き方」と「2026年以降の労働時間ルールの方向性」は、放置すると衝突しやすい組み合わせです。

本記事では、現時点で公表されている情報や議論の方向性を前提にしつつ、
制度が確定した際にスムーズに移行するために“今から整えておきたい実務ポイント”を、次の観点から整理します。

  • サービス業特有の労務リスク
  • 2026年改正の影響が出やすいポイント
  • 美容業・ホテル業・介護業それぞれの注意点
  • よく起こる矛盾と考え方
  • 業種別の改正対応チェックリスト

なお、本記事の内容はあくまで執筆時点の情報にもとづく一般的な整理であり、
最終的な制度内容や運用は、厚生労働省の正式公表や通達を必ずご確認ください。


サービス業特有の労務リスク


● 施術予約から長時間労働につながる構造(美容)

美容院・エステ・リラクゼーションなどの美容関連サービスでは、
「予約状況に勤務時間が引きずられる」構造があります。

  • 施術が押して閉店時刻を超える
  • お客様都合の遅刻・延長
  • ラスト枠に複数の予約が集中する
  • キャンセルの埋め合わせで当日予約を受けがち

その結果、
1日あたり10時間前後の拘束が連続する・終業時刻が読みづらいといった状態になりやすく、
勤務間インターバルや連続勤務の管理が難しくなります。

● 夜勤・宿直・泊まり勤務(ホテル・介護)

ホテル・宿泊業や介護事業所では、夜勤・宿直・泊まり勤務が日常的です。

  • ホテルの夜勤(夕方〜翌朝)+朝食対応
  • 介護施設の夜勤(長時間勤務)+明け後の業務
  • 小規模事業所での宿直・オンコール体制

夜間から日中へとまたぐ働き方は、
勤務間インターバルの確保・連続勤務の判定・深夜労働の割増計算など、複数の論点と密接に関わります。

● 急な欠勤補填による連勤・長時間化

サービス業は、どうしても「人が現場にいること」が前提のビジネスです。
そのため、スタッフの急な欠勤が出ると、次のような事態が起こりがちです。

  • 店長・リーダーが連日現場に入る
  • 夜勤者・ベテラン社員に負荷が集中する
  • 本来休みだった人が穴埋めシフトに入る

この「現場でなんとか回す」運用は、
連続勤務日数の増加・勤務間インターバル不足・週40時間超過といったかたちで、制度見直し後のリスク要因となる可能性があります。


2026年改正の影響(方向性を整理)


ここでは、現在議論されている主な方向性が、サービス業にどう影響し得るかを整理します。

● 連続勤務上限に関する議論

今後、一定日数を超える連続勤務を抑制する方向性が示されており、
「2週間を超えるような連続勤務」は、健康確保の観点から問題視されやすくなると考えられます。

サービス業では、次のような場面で連勤が発生しやすくなります。

  • 美容院の繁忙期(年度末・祝日前・イベントシーズン)
  • ホテルの大型連休・イベント・観光シーズン
  • 介護事業所での人員不足・欠勤補填

今後は、「何日連続まで働けるか」を会社ルールとして明文化し、シフト作成の段階でチェックする仕組みが必要になります。

● 勤務間インターバル(勤務間休息)の強化

勤務間インターバルについては、
終業から次の始業までに、おおむね11時間程度の休息を確保することを目安とする考え方が資料等で示されています。

美容・ホテル・介護の典型的な例を挙げると、次のような組み合わせは、
今後インターバルの観点から見直しが必要になる可能性があります。

  • 美容:ラスト枠対応で21:00過ぎ退勤 → 翌朝9:00出勤
  • ホテル:17:00〜翌9:00の夜勤 → 当日午後からの勤務
  • 介護:16時間夜勤明け → 当日中の残り勤務

現段階では「必ずこの時間・この形で義務化される」と確定しているわけではありませんが、
インターバルを確保する方向性は明確になりつつあるため、実務上は“義務化を前提に準備しておく”ことが現実的といえます。

● 休日の事前特定・見える化

シフト制のサービス業では、
「シフト上の休み=法律上の休日」と扱っているケースが少なくありません。

今後の議論では、
週1日の法定休日を“事前に特定して示す”方向性が示されており、
「非勤務日」と「休日(法定休日・所定休日)」の区別を就業規則とシフトの両面で明確にする必要があります。

● 週40時間を基準とした時間外計算の厳格化

サービス業は、もともと「1日の時間が長い」「週あたりの拘束が長い」業態です。

  • 美容:早番〜遅番で10〜11時間拘束が続く
  • ホテル:長時間の夜勤を含むシフト
  • 介護:夜勤を含めた変則勤務

週40時間を超える時間外労働の管理が厳格になる方向性のなかで、
「なんとなく月間で合算している」管理から、「週ごとの時間を把握してアラートをかける」管理への移行が重要になります。

● 副業・兼業の労働時間通算

サービス業では、次のような副業パターンが珍しくありません。

  • 美容師+夜の飲食業
  • ホテルスタッフ+軽貨物ドライバー
  • 介護職+別事業所のパート勤務

今後、本業と副業の労働時間を通算して健康確保や時間外上限を考える方向性が強まると、
会社としても、少なくとも副業の有無やおおよその時間帯を把握し、
過重労働が疑われる場合にはシフト調整などの対応を検討する必要が出てきます。


美容業の注意点


● 10時間前後の勤務が連続しやすい

美容院やサロンでは、営業時間が長いだけでなく、

  • オープン準備・清掃・片付け
  • カウンセリング〜施術〜アフターまでの一連対応
  • SNS更新・レジ締めなどの付随業務

によって、1日あたりの拘束時間が実質的に10時間前後になることも少なくありません。

この状態が連続すると、勤務間インターバルの確保・週40時間の管理・連続勤務の上限いずれの面からも、
改善を求められる可能性が高くなります。

● 「ラスト担当」からの翌日早番

美容業で特に注意が必要なのが、ラストまでお客様対応を行ったスタッフが、翌日も早番に入るパターンです。

終業が押しやすいラスト枠と、開店準備を伴う早番の組み合わせは、

  • 勤務間インターバルの不足
  • 睡眠時間の短縮
  • ミス・健康障害リスクの増加

につながりやすく、
「ラスト担当と翌日早番は組み合わせない」というルール化が重要になります。

● 休憩不足・休憩時間の形骸化

予約制の業態では「予約が詰まっているので休憩を後ろ倒しする」「気づいたら休憩を取れなかった」という状況が起きがちです。

今後は、

  • 予約枠の設計段階で休憩時間をブロックする
  • 休憩取得状況を勤怠システムで可視化する
  • 「休憩を削って売上を追う」文化を見直す

といった観点が求められます。


ホテル・宿泊業の注意点


● 夜勤の扱いと勤務間インターバル

ホテル・宿泊業では、夜勤・宿直が不可欠ですが、夜勤明けの当日中に日勤を組み込む働き方は、勤務間インターバルの観点から見直しが必要になる可能性が高い領域です。

例として、

  • 夜勤:17:00〜翌9:00
  • 明け:仮眠を挟んで同日午後のシフト

のような組み方は、
健康確保の観点からも慎重な検討が必要です。

● シフト変更が多い・属人的になりやすい

予約状況・団体対応・トラブルなどによって、宿泊業のシフトはどうしても変動しやすくなります。

しかし、店長やマネージャーの裁量だけでシフト変更を繰り返す運用は、
勤務間インターバル・連続勤務・休日特定など、全てのルールに影響するため、
「シフト変更の基準」と「変更時のチェック項目」を明文化しておくことが重要です。

● 連続勤務の判定が複雑になりやすい

夜勤・宿直を挟むと、

  • どこからどこまでを「1日分の勤務」とみなすか
  • 休日がどこに入っているのか
  • 夜勤をまたぐ連続勤務をどうカウントするか

が分かりにくくなります。

今後の改正を見据えると、
夜勤・日勤・明けのパターンごとに、連続勤務日数や勤務間インターバルの考え方を整理し、就業規則と勤怠設定を揃えることがポイントになります。


介護業は対象外?(よくある誤解と整理)


● 一部は別法令の枠組みも関わる

介護業界には、処遇改善加算など、介護保険制度に基づく独自の枠組みも存在しますが、
労働時間・休憩・休日といった基本ルールは、他の業種同様に労働基準法の対象です。

したがって、

  • 夜勤・長時間勤務
  • 勤務間インターバルの確保
  • 連続勤務日数

といったテーマは、介護業だけ特別に“関係がない”わけではありません。

● 2026年以降は整合性がより重要に

介護特有の加算・配置基準などのルールと、
労働時間に関する一般的なルールの整合性をどう取るかが、今後ますます問われます。

たとえば、

  • 夜勤専従者の勤務パターン
  • 夜勤明けの当日勤務の有無
  • 週40時間・週休の取り扱い

などは、介護事業所ごとに一度きちんと整理しておく必要があります。

● 夜勤×勤務間インターバルの矛盾をどう解消するか

介護現場では、

  • 16時間前後の夜勤
  • 夜勤明けに会議・研修が入る
  • 明け翌日がすぐ日勤

といった働き方が続いているケースもあります。

勤務間インターバルを重視する方向性を踏まえると、
「夜勤明けは原則勤務を入れない」「明け翌日の勤務開始時間を遅らせる」などのルール整備が、
健康確保の観点からも重要になります。


業種別“改正対応チェックリスト”


  • 美容業:ラスト枠と翌日早番をセットにしない/予約枠の中に休憩を先に確保しておく。
  • 美容業:1日あたりの拘束時間と週40時間を見える化し、「10時間勤務+連続日数」が続かないように設計する。
  • ホテル・宿泊業:夜勤明けに当日勤務を入れないルールを検討し、夜勤専従・日勤専従などの役割分担も含めて再設計する。
  • ホテル・宿泊業:シフト変更時に「勤務間インターバル」「連続勤務日数」「休日位置」をチェックするフローを作る。
  • 介護業:夜勤パターンごとに、明け・翌日の勤務をどうするかを整理し、勤務間インターバルを意識した運用に改める。
  • 全業種共通:法定休日を事前に特定し、「非勤務日」と「休日」を就業規則とシフト表の両方で区別できるようにする。
  • 全業種共通:副業の有無やおおよその労働時間帯を把握する申告フォーム・月次報告の仕組みを整える。
  • 全業種共通:勤怠システムに、勤務間インターバル・連続勤務・週40時間・深夜帯・休日の各判定ロジックを設定しておく。

まとめ


  • サービス業(美容・介護・ホテル)は、もともとの働き方の構造と、勤務間インターバルや連続勤務の見直しという流れがぶつかりやすい業種です。
  • 2026年前後の制度改正では、「休息時間をどう確保するか」「週40時間の中にどう収めるか」「休日をどう特定するか」が、これまで以上に問われます。
  • 美容では、施術予約とラスト枠の設計を見直すことが、勤務間インターバルと休憩確保の第一歩になります。
  • ホテル・宿泊では、夜勤明けの当日勤務を前提とした文化から、「夜勤は夜勤、日勤は日勤」という役割分担を前提とした働き方への転換が重要です。
  • 介護では、「夜勤明け+日勤」「連続した変則シフト」が本当に続けられる前提なのかを、健康確保の観点から再検討する必要があります。
  • いずれの業種でも、「現場の頑張りに依存した運用」を続けることは難しくなり、シフト設計・就業規則・勤怠設定を一体で見直すことが、2026年以降の最大のリスクヘッジになります。

制度内容が最終的に確定した後にあわてないためにも、
今のうちから自社の勤務パターン・休日運用・副業状況を棚卸しし、
必要に応じて専門家と連携しながら、段階的に「無理のない働き方」への移行を進めていくことが重要です。


👉 人事部門導入のご相談は:トナリの人事課長®公式ページ

「トナリの人事課長®」は、中小企業の“人事部門まるごと導入ではなく、実務伴走で仕組みを整え、現場に定着させるHR支援サービス”です。


※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

ブログ一覧に戻る

人事ニュースを受け取る

※登録はいつでも解除できます