2026年対応|変形労働時間制と法定休日の特定ルールで企業が陥りやすい落とし穴
〜“休日が曖昧な変形制”は制度見直しに耐えられない。年間カレンダー・シフト・就業規則の整合性が企業を守る〜
2026年に向けて、法定休日の扱いを事前に明確化する方向で制度の見直しが進んでいます。
この影響をとくに大きく受けると考えられるのが、変形労働時間制を採用している企業です。
変形労働時間制は、繁忙期と閑散期のメリハリをつけやすい一方で、次のような“構造的な弱点”を抱えています。
- 休日の位置づけが曖昧になりやすい
- 年間カレンダーを作っていても「法定休日」が特定されていない
- カレンダー上の休日とシフト上の休日が矛盾する
- 非勤務日と休日の区別があいまい
- 振替休日・代休の扱いが統一されていない
- 変形制の計算に意識が向き、休日運用は後回しになりがち
これまでは「とりあえず年間カレンダーを作っておけばよい」という運用でも、なんとか回っていた企業も多いですが、今後は休日の特定・示し方まで含めて整理しておくことが重要になります。
特に飲食・小売・サービス業など、1か月変形・1年変形・多店舗シフトが組み合わさる企業では、法定休日が不明確なままでは、連続勤務や割増賃金、変形制の上限管理が破綻するおそれがあります。
この記事では、「変形労働時間制 × 法定休日の特定」というつまずきやすい領域を、2026年対応の観点から整理します。
変形労働時間制と休日ルールの関係
● 1か月変形
1か月単位の変形労働時間制では、1か月の中で忙閑に応じて労働時間を増減させることができます。
一方で、次のような理由から休日運用が曖昧になりやすい傾向があります。
- 月内で忙閑の波が大きい
- シフト確定が直前になりがち
- 「非勤務日=休日」と扱われることがある
- 所定休日が明確に固定されていない
- 法定休日を別途特定していない
とくに「非勤務日=休日」とみなしてしまう運用は、割増判定や連続勤務のカウントを誤らせる原因になります。
● 1年変形
1年単位の変形労働時間制では、多くの企業が年間カレンダーを作成しますが、次のような誤解がよく見られます。
- 年間カレンダーに記載した休日=法定休日だと考えている
- 年間休日数を決めれば十分だと思っている
- 法定休日の「位置づけ」が明確に示されていない
- カレンダーと実際のシフトが一致しない
1年変形では、「何日休ませるか」だけでなく「どこを休みにするか」まで整理しておくことが重要です。
● 特例の組み方
繁忙期に休日数を抑え、閑散期にまとめて休みを与える運用を行う企業も少なくありません。
しかし、この運用は法定休日の位置が曖昧なままでは適切な管理が難しくなります。
- 法定休日の固定または基準日の明示
- 振替休日の条件と手続き
- 休日変更時のルール
- 年間カレンダーとの整合性
これらは、就業規則や関連規程にあらかじめ定めておくことが望ましいポイントです。
休日が曖昧だと“違法”扱いになる可能性があるケース
● 休日がカレンダー化されていない
変形制を採用しているにもかかわらず、次のような状態はリスクが高いといえます。
- バイトのシフト表だけで休日を判断している
- 店舗ごとに休日がバラバラで、全体のカレンダーがない
- 誰が休日を決めているのか明文化されていない
- 休日が直前に決まる
- 非勤務日をそのまま休日として扱っている
法定休日を事前に特定していないと、行政からの確認や是正指導の対象になる可能性があります。
● シフトで休日がブレる
たとえば、次のようなケースです。
- スタッフAは日曜が休日
- スタッフBは月曜が休日
- スタッフCは週ごとに休日が変わる
個々人で休日の曜日が異なること自体は問題ではありません。
課題となるのは、「何を基準に休日を決めているのか」が会社として明確にされていない場合です。
基準がないまま休日を動かすと、休日労働かどうかの判定や割増計算が不安定になります。
● 代休と振替の混同
変形制を採用している企業では、代休と振替の違いがあいまいなまま運用されている例も多く見られます。
- 代休:休日に働かせたあとで与える休み
- 振替休日:あらかじめ休日を別日に移しておく運用
この違いが就業規則に明記されていないと、割増賃金の支払いが不足するリスクがあります。
事前特定が求められるようになると変形労働制はどう変わる?
● 休日割増の判断基準が明確になる
法定休日を事前に示すことで、次のような判断がしやすくなります。
- 法定休日に労働させた → 休日割増(35%)の検討
- 所定休日に労働させた → 時間外(25%)の検討
- 深夜帯と重なる → 深夜割増との重複
休日位置が曖昧なままだと、遡及して割増計算を見直す必要が生じる場合もあるため、早めの整理が重要です。
● 連続勤務上限との関係
連続勤務の上限管理や勤務間インターバルの確保を行ううえでも、休日の特定は欠かせません。
- どこを「勤務日」とカウントするか
- 休日を挟んだ連続勤務日数の把握
- インターバル確保時間の算定
休日が明確でないと、連続勤務やインターバルの管理自体ができなくなってしまいます。
● 年間カレンダーの役割
今後、年間カレンダーは単なるシフトの目安ではなく、次の要素を示すものとして重要性が高まると考えられます。
- 法定休日
- 所定休日
- 繁忙期・閑散期の労働時間の配分
- 振替休日が発生し得る期間
- 変形期間の開始日・終了日
「年間休日が何日か」だけでなく、「どこが休日なのか」まで把握できるカレンダーが望ましい形です。
実務で必ず見直したいポイント
● 休日の定義を明確化
就業規則では、少なくとも次の内容を整理しておくことが有効です。
- 法定休日の定義
- 所定休日の定義
- 非勤務日の位置づけ
- 休日の特定方法(曜日・基準日・カレンダー等)
- 休日を変更する場合の手続き
● 前月末までのシフト確定
休日を事前に示すには、シフト確定のタイミングも重要です。
「仮シフト→直前修正」が常態化している企業では、休日特定の趣旨に合致しない運用となる可能性があります。
● 就業規則×勤怠連動
2026年対応を見据えた場合、次の順番で整合性を取ることがポイントです。
- 就業規則(休日条文・変形制条文)
- 年間カレンダー
- シフト作成ルール
- 勤怠システムの休日判定・週基準時間設定
どこか一つだけを修正するのではなく、一連の流れとして見直すことが重要です。
2026年までに整えるべき書類一覧
変形労働時間制を採用している企業が、2026年までに見直しておきたい代表的な書類は次のとおりです。
- 就業規則(休日条文・変形労働時間制の条文)
- 年間カレンダー
- シフト作成ルール・運用マニュアル
- 振替休日・代休の取扱いルール
- 勤怠システムの設定(休日判定・週基準時間など)
- 雇用契約書・労働条件通知書(休日に関する記載)
- 36協定(休日労働欄の整理)
就業規則だけを修正し、カレンダーや勤怠設定が従来のまま、というケースは特に注意が必要です。
まとめ
変形労働時間制は、うまく運用すれば人件費と労働時間のバランスを取りやすい一方で、休日の取り扱いが曖昧なままだと、2026年以降の制度見直しに対応しきれないリスクがあります。
- 変形制は休日が曖昧になりやすいため、法定休日・所定休日・非勤務日の区別が重要
- 法定休日を事前に示す仕組みを整えることで、割増計算や連続勤務管理が安定する
- 「仮シフト+直前修正」から「前月確定+事前周知」の運用への見直しが有効
- 就業規則 → カレンダー → シフト → 勤怠設定の一気通貫で整合を取ることが鍵
- 制度内容は今後変更される可能性があるため、最新情報を確認しつつ段階的に整備を進めることが望ましい
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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。
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