勤務間インターバル違反は“健康障害リスク”へ直結|企業の安全配慮義務はどう変わる?

〜「11時間空いていないシフト」が、労災・訴訟・離職を招く時代の企業防衛戦略〜


「残業時間の上限は守っている」「36協定もきちんと締結している」──それでも、

  • メンタル不調での長期休職
  • 脳・心臓疾患による労災申請
  • 過労を理由とした退職・紛争

が後を絶たない会社があります。

原因のひとつが、「勤務間インターバル(終業から次の始業までの休息)」に対する感度の低さです。

1か月の時間外はそれほど多くない、年間の上限も超えていない。にもかかわらず、

  • 深夜まで勤務 → 翌朝早番
  • 閉店作業で終電帰宅 → 翌日もフル出勤
  • 土日・祝日の連続シフト

といった働き方が続いていると、「数値上はセーフだが、身体はアウト」という状態に陥ります。

今後、勤務間インターバル制度の義務化、14日連勤禁止、週40時間基準の徹底などが進めば、「休ませ方」を含めた安全配慮義務がこれまで以上に問われることになります。

この記事では、

  • 勤務間インターバル違反と健康被害の関係
  • 企業の安全配慮義務が問われる具体場面
  • 2026年対応として構築すべき社内仕組み
  • 実務で押さえるべき3つのポイント

を整理し、“働かせすぎない会社”から“一人ひとりの回復まで設計できる会社”に変わるための視点を解説します。


勤務間インターバル違反と健康被害の関連性


●睡眠不足による事故リスク

勤務間インターバルが短いと、真っ先に削られるのが睡眠時間です。

例えば、

  • 終業:23時
  • 帰宅:24時
  • 就寝:25時
  • 起床:6時
  • 出勤:7時〜

といった勤務が続けば、実際に睡眠に充てられる時間は4〜5時間程度にとどまります。

睡眠不足は、

  • 判断力の低下
  • 反応速度の遅延
  • イライラ・集中力低下
  • ミスの増加

を引き起こし、

  • 交通事故
  • 機械操作ミス
  • 接客でのトラブル

など、労災・事故につながるリスクを一気に高めます。

「時間外自体は多くないから大丈夫」という感覚のままでいると、こうした“見えない危険性”を放置することになりかねません。

●過労死ラインとの関連

日本では、いわゆる「過労死ライン」として、

  • 月100時間超の時間外労働
  • 2〜6か月平均で月80時間超

などが目安とされています。

しかし、インターバルが短い働き方が続けば、

  • 時間外はそこまで多くない
  • ただし、休息時間が極端に短い

という、「質的な過労」の状態が生まれます。

  • 長時間労働 + インターバル不足
  • 深夜労働 + インターバル不足
  • 連勤 + インターバル不足
といった要素が重なれば、数値上の時間だけでは説明できない健康リスクが発生し、脳・心臓疾患や精神障害の発症・悪化の要因となり得ます。

●メンタル不調

インターバル不足は、

  • 睡眠の質・量の低下
  • 生活リズムの乱れ
  • 休日の「回復力」の低下

を通じて、メンタル不調とも深く関係します。

具体的には、

  • 不眠・中途覚醒
  • 朝起きられない
  • 疲れが取れない
  • 気分の落ち込み
  • 意欲低下・集中困難

といった症状が慢性化し、うつ病・適応障害などの発症リスクが高まります。

「労働時間の数値は増えていないのに、メンタル休職だけが増える」という会社は、インターバル・連勤・シフト設計に問題が隠れている可能性が高いと言えます。


企業の安全配慮義務が問われる場面


●深夜明けの早番

もっとも典型的に「安全配慮義務が問われやすい」のが、

  • 深夜残業・深夜シフトの翌日に
  • 早朝から勤務をさせた結果、事故・健康障害が発生した

というケースです。

たとえ就業規則や36協定の上では形式上問題がないとしても、

  • 実態としてインターバルが確保されていない
  • それが継続的だった
  • 会社も把握できた、あるいは把握すべき状況だった

と評価されれば、「安全配慮義務を怠った」とみなされるリスクがあります。

●副業者の過労

本業と副業を掛け持ちする従業員が増えるなか、

  • 本業側ではインターバル・時間外を守っている
  • しかし、副業と合算すると明らかな過重労働になる

というケースも増えています。

会社は、副業の全てを管理する義務までは負わないとしても、

  • 就業規則上、副業の申告義務を定めているか
  • 申告された勤務状況をもとに、危険な働き方を是正する姿勢を示しているか
  • 過労の兆候があった際に、適切な面談・措置を取っていたか

といった点は重要です。

「知っていたのに何もしなかった」「知り得る状況なのに放置していた」と評価されれば、安全配慮義務の観点から企業側の責任が問われる可能性が高まります。

●管理職の長時間勤務

「管理職だから仕方ない」という理由で、

  • 深夜までの勤務
  • 休日出勤
  • 連勤
  • インターバル不足

が常態化している企業も少なくありません。

しかし、管理監督者であっても人である以上、健康障害リスクは同じです。

  • ノー残業デーの対象外
  • 深夜残業・休日対応の“最後の砦”扱い
  • メール・チャットが事実上24時間体制

といった状況を放置すれば、

  • 脳・心臓疾患の発症
  • メンタル不調
  • 自殺等の重大事案

が発生したときに、企業側の安全配慮義務違反として厳しく問われる可能性があります。


2026年対応で必要な社内の仕組み


●勤務間インターバル管理

まず必要なのは、「インターバルを“感覚”ではなく“数字”で管理する仕組み」です。

  • 勤怠システムで終業〜始業を自動計算
  • 11時間未満の場合に自動アラート
  • 深夜帯を含むシフトの翌日制限ルールを設定
  • 月単位で「インターバル不足者の一覧」を確認

こうした仕組みにより、「気付いたらインターバル違反が続いていた」という状況を防ぎます。


●健康診断との連動

健康診断は、単に実施すればよいものではなく、

  • 長時間労働者
  • インターバル不足・連勤が多い従業員
  • 深夜勤務が多い部署

といった“ハイリスク層”を早期に発見するためのツールとして活用すべきです。

具体的には、

  • 問診票に「睡眠」「疲労感」「勤務実態」に関する項目を追加
  • 医師の意見をもとに、勤務軽減・配置転換などを検討
  • 高リスク者について、産業医・上長・人事が連携してフォロー

といった仕組みづくりが求められます。

●シフト変更権限

安全配慮義務を果たすうえで重要なのが、「現場で危険なシフトを止める権限があるかどうか」です。

  • 店長・管理職が、従業員の健康状態を見てシフトを変更できるか
  • 人事・労務部門が、データ上のリスクを見て対応を指示できるか
  • 産業医の意見をもとに勤務制限をかけられるか

これらが機能していなければ、どれだけインターバルや時間外をルール化しても、実態として安全配慮義務を果たしているとは言えません。


実務で押さえるべき3つのポイント


●休息不足の即時発見

最初のポイントは、「危険な働き方をいち早く見つける仕組み」です。

  • インターバル不足
  • 連勤
  • 深夜勤務と早番の連続
  • 副業との掛け持ちによる過重労働

といった指標を、

  • 日次レベルでアラート
  • 週次・月次でレポート
  • 部署別・職種別に“危険度マップ”化

しておくと、「どこから手をつけるべきか」が明確になります。

●勤怠アラートのログ管理

インターバルや連勤に関するアラートは、

  • いつ
  • 誰に
  • どのような内容で出たのか
  • その後、どのような対応が取られたのか

を、ログとして残しておくことが重要です。

将来、万が一労災や紛争が発生した際に、

  • 会社としてリスクを把握し、
  • 相応の対応を行っていたかどうか

を説明できるかどうかは、このログの有無に大きく左右されます。

●安全衛生委員会との連携

一定規模以上の事業場では、安全衛生委員会が設置されています。

インターバル・連勤・過重労働の状況は、

  • 月次レポートとして委員会に報告
  • 高リスク部門・職種について議論
  • 必要に応じて改善提案・勧告

といった形で、組織全体で共有・対策を検討すべきテーマです。

人事・労務部門だけで抱え込むのではなく、経営・現場管理職・衛生管理者・産業医などを巻き込んだ議論が、安全配慮義務を果たすうえで不可欠になります。


まとめ


勤務間インターバル違反は、

  • 睡眠不足による事故リスク
  • 過労死ラインとの複合リスク
  • メンタル不調・長期休職

といった「健康障害リスク」に直結する問題です。

そして2026年以降は、

  • 勤務間インターバル制度
  • 14日連勤禁止
  • 週40時間基準の徹底

などとあわせて、 「どれだけ働かせたか」だけでなく「どれだけ休ませたか」も安全配慮義務の中身として問われる時代に入っていきます。

この記事のポイントを振り返ると、

  • インターバル不足は、睡眠・事故・過労死・メンタル不調と深く結びつく
  • 深夜明けの早番・副業者の過労・管理職の長時間勤務は、特に安全配慮義務が問われやすい
  • 2026年対応では「インターバル管理」「健康診断との連動」「シフト変更権限」が3本柱になる
  • 実務では「休息不足の即時発見」「アラートログの保存」「安全衛生委員会での議論」が重要になる
  • 形式上の時間管理から、「実態として回復できる働き方設計」への転換が企業防衛にも直結する

勤務間インターバル対応は、単に法律の要求に応えるためだけのものではありません。

「人が長く、健やかに働き続けられる会社であるかどうか」を示す、わかりやすい指標でもあります。

2026年をひとつの区切りとして、

  • 勤務間インターバル
  • 連勤
  • 副業
  • 深夜勤務

といったテーマを「健康」と「安全配慮義務」の文脈で捉え直し、データとルールと現場運用をつなげていくことが、これからの企業に求められる対応と言えるでしょう。


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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

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