勤務間インターバル制度とは?2026年から義務化される内容を専門家が解説

〜「11時間休息」を“守れる制度”にするための条文・運用・勤怠設定の実務ガイド〜


勤務間インターバル制度(終業〜始業の間に一定の休息を確保する仕組み)は、2026年以降、事実上の義務レベルで企業に求められる方向に進んでいます。

ところが実務では、次のような声が多く聞かれます。

「就業規則にどう書けばいいかわからない」

「11時間って、どの職種にも一律で適用すべき?」

「例外をどこまで認めていいのか判断しづらい」

「シフト制との整合性が取れない」

「勤怠システムが対応しきれない」

つまり、“条文を作るだけでは運用できない”という現場課題が、すでに顕在化しているのです。

勤務間インターバルは、就業規則、シフト、勤怠システム、運用フローの4点が揃ってはじめて成立します。

本記事では、次の内容を労務専門家として分かりやすく整理します。

  • 2026年対応で就業規則に必ず明記すべき事項
  • そのまま使える基本条文・特例条文・副業者向け条文
  • NG文例と“危険な曖昧さ”の修正ポイント
  • 就業規則×現場運用×勤怠システムの整合方法
  • 労基署届出までの流れ

“条文はあるが守れない”状態を回避するための実務ガイドです。


就業規則に明記すべきインターバル関連事項

まず、勤務間インターバル制度を導入する際、就業規則に最低限明文化すべき内容を整理します。

休息時間の長さ

一般的には11時間が基準ですが、業種・役職・変形労働時間制・店舗運営の実態により「10時間」「12時間」など調整するケースもあります。

ただし、健康確保の観点から11時間を下回る設定は推奨されません。厚労省の指針でも“11時間確保”が最も安全性の高いラインとされています。

適用範囲

次のように区分して定義します。

  • 正社員
  • 契約社員
  • パート・アルバイト
  • 深夜帯勤務者
  • 管理監督者(対象外とせず、健康面への配慮を明記すると望ましい)
  • 副業・兼業者(必ず別項目で扱う)

ここが曖昧だと、「管理職だから対象外」「シフト制は別扱い」といった誤解が生まれます。

例外的な短縮ルール

例外は最も注意が必要です。常態化させない前提で、限定列挙します。

  • 災害・事故・システムトラブル
  • 緊急の顧客対応
  • 社屋・設備の重大トラブル
  • 交通インフラの遅延

繁忙期・人手不足は原則例外にできない、という考え方も併せて明記しておくと良いでしょう。


条文例(11時間インターバル)

ここでは、そのまま使える条文例を提示します。(社内規程との整合は別途調整が必要です)

基本条文(標準版)

(勤務間インターバル)
第○条 会社は、労働者の健康確保のため、終業時刻から次の始業時刻までの間に、原則として11時間以上の休息時間(勤務間インターバル)を確保する。
2 勤務間インターバルを確保できないおそれがある場合、上長は速やかに勤務変更その他の必要な措置を講じる。

特例条文(緊急時のみ)

(勤務間インターバルの例外)
第○条 前条の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するやむを得ない事由が生じた場合は、勤務間インターバルを短縮して勤務させることができる。
(1)災害、事故その他緊急事態への対応が必要な場合
(2)システム障害等により業務に重大な支障が生じる場合
(3)その他、会社が特に必要と認める場合
2 前項に基づきインターバルを短縮した場合、会社は健康状態に配慮し、必要に応じて勤務変更、代休付与その他の措置を行う。

副業者対応の条文

(副業・兼業者のインターバル確保)
第○条 副業・兼業を行う労働者は、他の事業場における勤務時間を会社に申告しなければならない。
2 会社は、申告された勤務時間を踏まえて勤務間インターバルの確保に努め、必要に応じて勤務調整を行う。
3 労働者が虚偽の申告をした場合、懲戒の対象となることがある。


よくあるNG条文と修正ポイント

「可能な限り確保する」は危険

「可能な限り確保するものとする」といった書き方は、法的にも運用上も弱い表現です。

  • 管理職の裁量に丸投げになりやすい
  • “できなかった理由づくり”に悪用される
  • 労基署指導の際に評価されにくい

「原則とする」の曖昧さ

「原則として11時間のインターバルを確保する」とだけ書くと、例外が無数に生まれ、結果的に“原則崩壊”を招きがちです。どのような場合にどこまで例外を認めるのか、条文側で具体化しておく必要があります。

例外規程がないケース

例外がないと、現場が勝手に例外扱いを始めてしまう危険があります。

  • 何が例外なのか分からない
  • 「人が足りないから仕方ない」が常態化する
  • 全員が例外扱いになり、制度が崩壊する

必ず「例外は限定列挙+事後の健康配慮」をセットで書いておくことが重要です。


就業規則×現場運用のズレを防ぐ方法

条文を書くだけでは制度は動きません。就業規則・勤怠システム・現場運用の三位一体が必要です。

勤怠システムの設定

終業〜始業の間隔が11時間未満の場合の自動アラート、深夜跨ぎ勤務の扱い、副業時間の取り込み方法などを、勤怠システム側で整備します。

これにより「違反に気付ける→防げる」状態をつくることができます。

シフト基準の共有

シフト制の現場では、インターバル違反の多くがシフト段階で決まります。

  • 深夜勤務翌日は遅番か休みにする
  • 開店・閉店作業の連続担当を禁止する
  • 週単位・月単位の最低休日数を明示する

こうした基準を店長・シフト担当者と共有し、研修等で定着させることが重要です。

責任者のチェック体制

部門長・店長・エリアマネージャー・人事労務部が、それぞれどのデータをいつ確認するのかを明確にします。

誰が・いつ・何をチェックするかを決めておくことで、見落としや負担の偏りを防ぎやすくなります。


労基署届出までの流れ

勤務間インターバル制度を就業規則に組み込む場合、労基署への届出が必要です。一般的な流れは次の通りです。

  • 規程案の作成
  • 労働者代表からの意見聴取
  • 意見書の添付
  • 労基署への届出(電子申請も活用)
  • 社内への説明・周知
  • 勤怠設定・シフト基準の調整と連動

届出だけ急いでしまい、その後の運用が追いつかない企業も多くあります。届出は「運用準備が整ってから」が鉄則です。


まとめ

勤務間インターバル制度は、2026年以降、多くの企業で「就業規則の中心テーマ」になっていくことが確実です。

  • 就業規則には「休息時間・適用範囲・例外・副業対応」を必ず明記する
  • 例外は限定列挙とし、曖昧な表現は極力避ける
  • 勤怠システム・シフト基準・責任者体制の三位一体で運用する
  • 届出は規程→運用→勤怠設定が揃ってから行う

勤務間インターバルは、「社員を守りながら企業を守る」ための制度でもあります。2026年を待たず、今年中に就業規則の骨格づくりとテスト運用を進めておくことが、最も実務的で安全なアプローチと言えるでしょう。


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※本記事は公開時点の公表情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、記載内容が変わる可能性があります。

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