副業時の割増賃金は誰が払う?|本業×副業の労働時間通算と2026年を見据えた実務整理

〜「誰が、どこまで、いくら払うのか?」を整理しておきたい人事・経営者様へ〜


「副業している社員が残業した場合、本業と副業のどちらが割増賃金を払うべきか分からない」

「“副業だから残業代はいらない”と言われたが、本当に問題ないのか不安」

「2026年前後で副業の割増賃金ルールが変わると聞くが、現時点で何を基準に考えればいいのか分からない」

副業・兼業が一般化した現在、中小企業やベンチャー企業の人事・労務担当者から、こうした相談が増えています。

労働基準法の基本原則では、労働時間は事業場を異にしても通算して考えるとされています。 一方で、割増賃金の支払いについては、

  • どの会社が
  • どの時間について
  • どの水準で

責任を負うのかが分かりにくく、制度と実務の間にギャップが生じやすい分野でもあります。

さらに2025年12月時点では、副業・兼業を前提とした割増賃金の扱いについて、 実務負担や健康管理の観点から整理・見直しの検討が進められている段階です。 ただし、具体的な制度として確定した新ルールが施行されているわけではありません。

本記事では、現行ルールを前提としつつ、

  • 副業者の割増賃金に関する考え方の整理
  • 企業が誤解しやすいポイント
  • 具体的な計算イメージ(A社8h+B社4h など)
  • 就業規則に盛り込んでおくべき実務ルール

を、人事・経営の実務目線で解説します。


副業者の割増賃金に関する「現行の考え方」と見直しの方向性

まず押さえておきたいのは、労働時間の通算割増賃金の支払い義務は、 同じルールで処理されているわけではない、という点です。

● 本業+副業を通算して考える原則

労働基準法上、労働者が複数の会社で働いている場合でも、 労働時間は原則として通算して考えます。

  • 本業A社:8時間
  • 副業B社:4時間

であれば、その労働者は1日合計12時間働いている、という整理になります。 この「労働時間を通算する」という考え方自体は、現行法でも維持されています。

● 割増賃金は「後から雇用した事業場」が支払うのが現行ルール

一方で、割増賃金の支払い義務については、労働時間の通算とは別の整理がされています。

現行法および行政解釈では、

  • 本業と副業を通算した結果、1日8時間・週40時間を超える部分が生じた場合
  • その超過部分については、後から雇用契約を締結した事業場(副業先)
  • 時間外労働として割増賃金を支払う

という整理が基本とされています。

つまり、副業先は「自社では短時間勤務であっても」、 本業との通算により法定労働時間を超える場合には、 割増賃金の支払い義務を負う可能性があります。

● 見直しが検討されている方向性

もっとも、この現行ルールについては、

  • 割増賃金の負担が副業先に一方的に集中しやすい
  • 本業側が「8時間以内だから関係ない」となりやすい
  • 副業・兼業が一般化した実態と合わなくなっている

といった課題が指摘されています。

そのため現在は、

  • 労働時間は引き続き通算する
  • 健康確保・安全配慮義務は本業・副業の双方に及ぶ
  • 割増賃金については、各社が自社内の労働時間を基準に判断する

といった形への整理・見直しが議論されている段階です。

ただし、2025年12月時点では法改正は施行されていません

そのため、

  • 「副業だから割増賃金は不要」
  • 「本人が希望しているから支払わなくてよい」

といった扱いは認められておらず、現行ルールを前提に運用する必要があります。


企業が誤解しやすいポイント


● 「副業なら残業扱いしなくていい」は誤り

副業であっても、雇用契約に基づき労働させている以上、 労働時間・割増賃金の原則は適用されます。

「本人がいらないと言った」「勉強のためだと言っている」 といった理由で割増賃金を支払わない場合、 未払い残業と評価されるリスクがあります。

● 勤務間インターバル・連続勤務との衝突

本業と副業を組み合わせることで、

  • 勤務間インターバルが極端に短くなる
  • 実質的に連続勤務が続く

といった状態が生じやすくなります。 割増賃金を支払っていても、 健康配慮義務の観点で問題が指摘される可能性があります。

● 労働時間を把握していない会社のリスク

副業を完全に本人任せにし、労働時間を一切把握していない場合、 安全配慮義務違反を問われるリスクが高まります。

最低限、

  • 副業の申告義務
  • 長時間労働が疑われる場合の面談・調整

といった仕組みは整えておく必要があります。


割増賃金の計算イメージ(実務例)


● A社8h+B社4h のケース

A社では実働8時間のため、法定内労働として通常賃金を支払います。

一方、B社では実働4時間であっても、 本業A社との通算により法定労働時間を超えるため、 副業先であるB社が時間外割増賃金を支払うのが現行ルールです。

なお、改正議論では、 労働時間は通算しつつ、割増賃金は各社ごとに判断する方向性が検討されていますが、 現時点ではあくまで現行ルールに基づく対応が必要です。

● 深夜帯を含む副業の場合

副業先で22時〜翌5時の深夜帯に働いた場合、 副業先は深夜割増賃金を支払う必要があります。

「副業だから深夜割増は不要」といった扱いは認められません。


就業規則に盛り込むべき実務ルール


● 副業の申告義務

副業を行う場合は事前申告を義務付け、 勤務時間帯や内容を把握できるようにします。

● 割増賃金と健康管理の考え方

自社内の労働時間については法令どおり割増賃金を支払うこと、 副業を含めて長時間労働が疑われる場合は、 健康管理上の措置を行うことを明記しておくと実務が安定します。


まとめ


副業と割増賃金の問題は、 「誰がいくら払うか」だけでなく、 働き方全体をどう管理するかという問題です。

2025年時点では、 労働時間の通算という原則は維持されつつ、 割増賃金の実務負担をどう整理するかについて検討が進められています。

企業としては、

  • 副業の申告ルールを整える
  • 自社内で発生する割増賃金は確実に支払う
  • 副業を含めた長時間労働には健康配慮で対応する

という基本姿勢を持つことが重要です。


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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

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