飲食・小売の“深夜またぎ問題”をどう整理する?|2026年改正版の実務ガイド

〜日付変更の壁を越えるために。0時を境に崩れがちな労働時間の扱いを再設計する〜


飲食業・小売業の現場で、もっとも混乱が起きやすい領域のひとつが深夜またぎ(0時をまたぐ勤務)です。

深夜またぎは、勤務日の区切り、深夜割増、休日カウント、連勤カウント、そして勤務間インターバル(休息時間)の確保が一気に絡みます。
制度面でも議論が進んでおり、勤務間インターバルについては11時間確保を原則とし、義務化も視野に段階的に実効性を高めるといった方向性が示されています(※2025年12月時点では「検討・議論」段階の論点を含みます)

現場で起きがちな困りごとは、だいたい次の5つに集約されます。

  • 閉店作業や棚卸しが0時を超え、翌日の勤務可否判断が崩れる
  • 深夜に働いたスタッフを翌朝に入れてしまい、勤務間インターバルが不足する
  • 深夜割増(22時〜翌5時)計算が手作業・属人化で漏れやすい
  • 休日扱い・残業扱いのズレで、割増や連勤の判定が狂う
  • シフトと勤怠(実績)が一致せず、後から修正地獄になる

この「深夜またぎ問題」を放置すると、割増未払い・連勤カウント誤り・休息不足による安全配慮リスクなど、複数の火種が同時に育ちます。逆に言えば、深夜またぎのルール統一勤怠設定を先に整えるだけで、トラブルの多くは予防できます。


深夜またぎが一番トラブルになりやすい理由


● 24時をまたぐ勤務の扱いが「店舗でバラバラ」になりやすい

日付が変わると「翌日の勤務に入った」と感覚的に捉えがちですが、実務では勤務日の区切りルールを店舗で統一しない限り、休日カウント・連勤カウント・割増計算が連鎖的にズレます。

ここで大事なのは、0時またぎのときに次の3点が必ず影響を受けることです。

  • どの日の労働時間として集計するか(勤怠の締めと整合が取れるか)
  • 深夜割増の対象時間が正しく拾えているか(22時〜翌5時)
  • 退勤から次の出勤までの休息(勤務間インターバル)が確保できているか

● 深夜→朝番で勤務間インターバルが不足しやすい

現場で最も多い事故は、0時前後まで働いたスタッフを翌朝の開店準備に入れてしまうケースです。勤務間インターバルに関しては、11時間確保を原則とする考え方が議論されており、今後の制度運用ではより厳格な整合が求められる流れです(検討状況の紹介)。

「忙しいから一回だけ」は、積み上がるとパターン化します。深夜またぎの店舗ほど、シフト作成側がルールで止める設計にしておく必要があります。

● 休日扱い・残業扱いの誤計算が起きやすい

深夜帯の勤務は、休日の位置づけ(法定休日か所定休日か)や、週40時間の管理(時間外の扱い)と絡みます。ここがズレると、割増賃金の計算が崩れ、後からの修正・説明コストが跳ね上がります。


飲食業の深夜またぎポイント


● 閉店作業の固定化で「退勤時刻のブレ」を減らす

飲食店の深夜またぎは、閉店作業が読めないことから始まります。ラスト担当が毎回変わると、片付けの手順・スピードが安定せず、退勤時刻がぶれます。

対策としては、まず閉店作業の担当固定(または固定チーム化)が有効です。退勤見込みが読めるようになると、翌日のシフト判断(勤務間インターバル確保)も安定します。

● 深夜作業と翌朝の「入れてはいけない時間帯」を決めておく

深夜に働いたスタッフを翌朝に入れるかどうかを、毎回“感覚”で判断すると事故が増えます。店舗内ルールとして、例えば「退勤が23時以降の場合は翌日の午前帯に入れない」など、禁止時間帯を設定しておくと、シフトの修正回数が減ります。

● 清掃・納品の時間帯を見直し「0時またぎ」を減らす

深夜またぎをゼロにしようとして、現場のオペレーションを壊すのは本末転倒です。ただ、清掃や納品の時間帯は調整余地があることが多く、ここを動かすだけで0時超えが減る店舗もあります。

  • 清掃を「閉店後一括」から「営業中の分割」にする
  • 納品や仕込みの一部を「深夜」から「朝」に寄せる
  • 閉店前の片付け工程を標準化し、残作業を減らす

小売業の深夜またぎポイント


● 品出し夜勤→翌日シフトの連鎖を止める

小売の深夜またぎは、品出し・売場整理・レジ締めなどで発生します。夜勤のあとに翌日の早番が入ると、勤務間インターバル不足が起こりやすく、長期的には体調不良・欠勤の連鎖につながります。

夜勤担当は「夜勤専任」または「夜勤翌日は休み」など、構造で守るのが現実的です。

● 棚卸しの深夜作業は「翌日の運用」までセットで設計する

棚卸しは深夜に及びやすく、翌日の営業と衝突します。棚卸し後の翌日は、営業体制・人員配置・休息確保をセットで組む必要があります。

  • 棚卸し翌日の早番を減らす/別メンバーに切り替える
  • 棚卸しチームと翌日営業チームを分ける
  • 棚卸し作業を前倒し・分割して深夜帯を短縮する

● 翌日営業の人員配置は「深夜組の戦力外」を前提にする

深夜に働いた人を翌日の戦力に数えると、勤務間インターバル確保の観点でシフトが破綻します。翌日営業は、原則として深夜組を外した前提で組み、足りない部分は短時間パートや中番で埋めるほうが運用が安定します。


シフト管理での正しい取り扱い


● 勤務日の区切りを店舗で統一する

0時またぎの勤務をどう扱うかは、勤怠集計のルールと整合していることが最重要です。店舗として「勤務日の区切り」を統一し、シフト作成者・勤怠担当者・現場責任者で共通認識にします。

ここが統一されると、休日・連勤・割増の判断が揃い、説明コストが減ります。

● 深夜労働の割増(22時〜翌5時)を自動計算に寄せる

深夜割増は計算漏れが起きやすい領域です。勤怠システム側で自動計算が可能なら、なるべく手作業を減らします。手作業が残る場合は、深夜帯の実績抽出→確認→確定のフローを固定化します。

● 勤務間インターバルの計算は「退勤→次の出勤」で見る

深夜またぎの核心は、日付ではなく退勤時刻と次の出勤時刻の間隔です。議論では勤務間インターバル11時間を原則とする方向性が示されており、現場としても「深夜→朝番」を構造で避ける運用が望ましい流れです(検討状況の紹介)。

● “1勤務扱い”の判断基準を決めておく

深夜帯をまたぐ勤務が、シフト上「1勤務」なのか「2勤務」なのかが曖昧だと、休憩付与・割増・休日・連勤の判断がズレます。実務では、次のような基準を店舗で決めておくのが現実的です。

  • 1回の連続した就労は原則「1勤務」として扱う(勤怠の集計仕様と合わせる)
  • 休憩の付与基準・深夜割増の拾い方を同じ基準で統一する
  • 深夜またぎの翌日に別勤務を入れる場合は、勤務間インターバルを優先して可否判断する

勤怠設定の最適化


● 深夜またぎの事故は「設定」で減らせる

深夜またぎ問題は、気合いではなく設定で減らせます。勤怠システムで次の項目が設定できるかを確認し、店舗のルールと一致させます。

  • 深夜帯(22時〜翌5時)の割増自動計算
  • 勤務間インターバル不足のアラート
  • 連勤カウントのアラート(シフト変更・欠勤を含む運用ルールもセット)
  • 週40時間超の自動通知(短時間×長時間の混在に対応)
  • シフトと実績の不一致チェック
  • 副業者の申告・通算管理の入力欄(社内ルールとセットで運用)

設定を整えるだけで、深夜またぎのトラブルは「発生してから直す」から「起きる前に止める」に変わります。店長・SVの管理負担が軽くなり、現場も回りやすくなります。


まとめ


飲食・小売の深夜またぎ問題は、労務トラブルの起点になりやすい一方で、ルールと設定を揃えれば改善効果が出やすい領域です。2026年に向けた制度議論では、勤務間インターバルの確保などについて実効性を高める方向性が示されており、現場も「深夜→朝番」のような組み合わせを構造で減らす運用が重要になります(※2025年12月時点は検討段階の論点を含みます)。

深夜またぎを安定させるポイントは、次の3つです。

  • 勤務日の区切り・“1勤務扱い”を店舗で統一する
  • 深夜割増(22時〜翌5時)と休日・連勤カウントを同じ基準で判定する
  • 勤務間インターバル不足をシフト構造と勤怠設定で止める

深夜またぎは“現場が悪い”ではなく、“仕組みが未整備”で起きます。今のうちにルールと設定を固めておくことで、2026年以降のシフト運用は安定し、店長・SVの負担も確実に下がっていきます。


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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

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