40時間制で固定残業代はどう見直す?設計ミスを防ぐ実務ポイント【2026年対応】

〜週44時間特例の見直しでズレやすい“古い固定残業設計”を、実務で破綻しない形に組み替える〜


「固定残業代を入れているから、人件費は読みやすい」
そう思っていても、制度の前提が変わる局面では“設計のズレ”が一気に表面化します。

週40時間を基準に運用する方向が強まると、所定労働時間・時間外の発生ライン・割増賃金の計算が連動して動きます。
その結果、固定残業代(みなし残業)の根拠が弱い会社ほど、未払い・説明不足・契約不一致が起きやすくなります。

この記事では、固定残業のありがちな危険パターンと、40時間制への移行を見据えて「どこをどう直すか」を、実務目線で整理します。
固定残業を“使える制度”として維持したい企業向けの、再設計ガイドです。


固定残業の“危険な設計パターン”


● みなし残業の短絡設定

固定残業で最も危ないのは、「なんとなく○時間」「前例どおり」といった、根拠が曖昧な時間数設定です。
実態とズレると、会社側・従業員側の双方に不満とリスクが溜まります。

  • ズレの典型:固定は少ないのに実態の時間外が多く、差額が積み上がる
  • 逆方向のズレ:固定が大きいのに時間外が少なく、制度の納得感が下がる
  • 見落としがち:所定労働時間が古いままで、固定残業の前提が崩れている

40時間基準へ寄せる運用になると、週・月の“時間外の立ち上がり”が早く感じられるケースが増えます。
固定残業時間は、実績(勤怠)から逆算して「適量」を作り直すのが安全です。

● 深夜割増の取り扱い

深夜時間(22:00〜5:00)の割増賃金は、通常の時間外とは別に考える必要があります。
固定残業の内訳が不明確なまま深夜分まで“込み”のように扱うと、説明・計算の整合が取れなくなりやすいです。

  • 実務の要点:固定残業の対象が「何の割増」かを明確にする
  • 注意:深夜帯が多い業種ほど、内訳不明確はトラブル化しやすい
  • 対応:給与明細・規程・契約書で、深夜分の扱いを整理する

● 休日労働の混同

休日労働は、所定休日と法定休日が混ざりやすく、割増の扱いがブレやすい領域です。
固定残業の設計や運用で休日労働を“同じ箱”に入れてしまうと、説明不能になりやすいので注意が必要です。

  • 危険サイン:休日出勤が常態化しているのに、扱いが曖昧
  • 起点:法定休日と所定休日を社内で揃えて説明できない
  • 対策:休日の定義・割増の区分を先に固めてから固定設計を行う

40時間制移行でやるべき見直し


● 所定時間の再定義

40時間基準へ寄せる場合、最初に直すべきは「所定労働時間の前提」です。
所定時間がズレたままだと、固定残業の計算根拠もズレ続けます。

たとえば、6日勤務前提の所定設計が残っている場合、週40時間を超える“構造”になりやすいです。
勤務日数・1日あたりの所定・業務の割り振りまで含めて再定義するのが現実的です。

● 残業の基準点変更

運用上の論点は、「いつから時間外として計算するか(基準点)」です。
週44時間枠を前提にしていた設計が残っていると、時間外の立ち上がり・固定消化の見え方が変わり、現場の体感として“急に残業が増えた”ように見えることがあります。

  • ポイント:週・月の管理単位(どちらを主に見るか)を統一する
  • 現場設計:繁忙期は「延長で吸収」ではなく「人員・業務配置で吸収」へ寄せる
  • 副作用:パート・アルバイトの週時間上限の管理がより重要になる

● 労働契約の修正

固定残業を採用する場合、労働契約・就業規則・賃金規程の整合が重要です。
所定労働時間や固定残業の時間数・金額・対象範囲が、書面上で説明できる状態にしておく必要があります。

  • 修正の柱:所定労働時間(勤務体系)の更新
  • 明記:固定残業の対象・時間数・計算根拠・精算方法
  • 整理:深夜・休日の扱いを区分して説明できる状態にする

固定残業を安全に運用するためのポイント


● 労使協定の明記

固定残業は、制度としての説明責任が重い分、透明性が成果を左右します。
協定や規程、給与明細の記載が整っている企業ほど、運用が安定しやすいです。

  • 実務:固定残業の内訳が追えるようにする
  • 運用:誰が見ても同じ計算になる状態に揃える
  • 説明:採用・面談時に制度を言語化できるようにする

● 超過分の追加払い

固定残業は「手当の前払い」という性格が強く、固定を超えた時間外が出た場合の精算が運用の肝になります。
ここが曖昧だと、未払い疑義が出やすくなります。

  • 整備:超過分の追加払いルール(締め日・計算・支払)を固定する
  • 誤解防止:固定時間=働かせてよい上限、という運用にならないようにする
  • 現場:月末に帳尻合わせが起きないよう、週単位の管理も併用する

● 管理職と非管理職の線引き

固定残業とセットで揉めやすいのが「店長=管理監督者」の思い込みです。
役職名だけで判断すると、後から説明がつかなくなるケースがあります。

  • 観点:労働時間の裁量、職責、処遇水準、経営関与の実態
  • 整理:管理職(管理監督者)とリーダー職(非管理職)を混ぜない
  • 運用:線引きを賃金規程・職務定義・勤怠ルールで揃える

まとめ

40時間制への移行を見据えると、固定残業代は「そのまま維持する」よりも「根拠を作り直す」方が安全です。
特に、根拠の薄い時間数設定、深夜・休日の混同、契約書と運用の不一致は、早めに手当てしておく価値が大きいポイントです。

  • 優先順位:所定労働時間の再定義→残業基準点→契約・規程の整合
  • 要点:固定残業の対象範囲(時間外・深夜・休日)を区分して説明できる状態にする
  • 運用:超過分の精算ルールと、管理職の線引きを“実態ベース”で揃える

固定残業は、設計が整うほどコスト管理と採用説明がしやすくなります。
一方で、前提が崩れたまま放置すると、後からの修正コストが跳ね上がりやすい制度でもあります。



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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

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