副業トラブルが増える企業の共通点|2026年改正後のリスクマップ
〜「気づかないうちに揉めていた」を防ぐための、実務チェックリスト〜
副業・兼業が一般化する中で、企業側のリスクは静かに、しかし確実に増えています。
特に近年目立つのが、「副業をしている従業員がいる会社ほど、人事・労務トラブルが複合的に発生しやすい」という傾向です。
副業は従業員にとって収入源の分散というメリットがある一方、企業側では次の要素が同時に絡み合います。
- 本業と副業を合算した労働時間の把握
- 深夜帯(22:00〜5:00)に及ぶ勤務の有無
- 休息時間(インターバル)が足りているか
- 休日の位置がズレたことによる連続勤務
- 体調不良・事故・判断ミスの兆候
これらは単体では問題にならなくても、重なった瞬間にトラブルへ発展しやすくなります。
2026年以降に向けた制度・運用の見直しが進む中で、企業に求められる管理水準は一段階引き上がると見られています。
本記事では、副業トラブルが増えやすい企業の共通点と、今後リスクが顕在化しやすいポイント、
さらに事前に整えておきたい実務対策を、中小企業でも実行できる形で整理します。
トラブルが生まれやすい会社の特徴
● 勤務時間の曖昧さ
副業トラブルが多い会社に共通するのが、勤務時間の「運用上の曖昧さ」です。
この曖昧さは、労働時間を通算で把握する際に大きなズレを生みます。
- 退勤時刻が日によって前後する
- 終業後の片付けや引き継ぎが勤怠に反映されない
- 口頭での早出・残業依頼が多い
- シフトどおりに終われない日が頻発する
本業だけでも把握が難しい中、副業分の労働時間が重なると、
「実際には長時間労働なのに会社が気づけない」状態が生まれやすくなります。
● 休日の未特定・未整理
休日の位置が曖昧な会社も、副業トラブルを抱えやすい傾向があります。
副業をしている従業員の場合、休日が副業の勤務日に置き換わり、連続勤務が長期化しやすくなります。
- シフト確定が遅く、休日が直前に変更される
- 月末月初で休日が抜けやすい
- 管理職や店長の休日が固定されていない
休日が整理されていないと、結果として休息不足の状態で出勤させてしまうリスクが高まります。
● シフト制の運用ミス
シフト制の職場では、運用ミスがそのまま法的・安全面のリスクに直結します。
副業者がいる場合、本業側のシフトだけを見ていると問題を見落としやすくなります。
- 遅番の翌日に早番が入る
- 閉店作業が延びて深夜帯にかかる
- ヘルプ出勤が重なり連勤になる
- シフト変更の履歴が残っていない
現場判断の積み重ねが、後から見ると「危険な勤務」になっているケースは少なくありません。
● 副業者の管理不足
副業トラブルの最大の要因は、副業申告制度が形だけになっていることです。
制度があっても、実態把握につながっていなければ意味を持ちません。
- 副業届が出しっぱなしで更新されない
- 勤務時間帯や深夜勤務の有無を確認していない
- 連続勤務や休息不足をチェックしていない
- 面談やヒアリングが行われていない
副業がある以上、健康面の問題も「本人任せ」にはできなくなります。
2026年以降に増える可能性が高いトラブル
● 割増賃金の計算ミス(通算と支払いの混同)
副業に関するトラブルで特に誤解が多いのが、割増賃金の考え方です。
現在の整理では、労働時間は通算して把握する一方、割増賃金の支払いは各事業場が自社分として行うのが基本とされています。
また、どの時間が法定外労働に該当するかは、
所定外労働がどの順番で発生したか(雇用契約の関係など)によって整理される点も重要です。
現場で起きやすいミスには、次のようなものがあります。
- 「副業先がまとめて払うはず」と誤解して未対応
- 通算管理をせず、法定外労働の可能性を見落とす
- 深夜帯の勤務整理が不十分で割増計算がズレる
通算管理と割増賃金の支払いを混同しないことが、実務上の重要ポイントです。
● 過重労働による体調不良
副業が絡むと、会社が把握しているのは本業の勤務だけになりがちです。
その結果、実際には休息が足りていない状態で働かせてしまうことがあります。
- 深夜の副業後に朝から本業勤務
- 休日が副業で埋まり実質的な連勤が続く
- 繁忙期に本業と副業が重なる
体調不良やミスは突然起こるのではなく、前兆があるケースがほとんどです。
● 行政対応・是正指導リスク
副業者が関わる事案では、行政対応時に「当時どのように管理していたか」が問われやすくなります。
- シフト変更の記録が残っていない
- 副業申告の内容が実態と合っていない
- 面談や注意喚起の記録がない
完璧なシステムよりも、「確認した事実が残る運用」が重要です。
事前に避けるための実務対策
● 申告制度を“更新前提”で設計する
- 入社時だけで終わらせず定期更新をルール化
- 勤務時間帯・深夜勤務の有無を必須項目にする
- 変更時の再申告を就業規則に明記
● シフト運用で危険パターンを潰す
- 遅番→早番が起きやすい日を洗い出す
- 繁忙日・閉店作業が延びやすい日を特定
- ヘルプ出勤の記録ルールを決める
● 管理職が気づける兆候チェックを置く
- 遅刻・ミス・欠勤の増加
- 週後半の集中力低下
- 表情や声の変化
大がかりな制度より、現場で回せるチェックがトラブル防止に直結します。
まとめ
副業トラブルが増える企業には、「曖昧な運用」と「把握・記録不足」という共通点があります。
特に、労働時間の通算と割増賃金の支払いを混同すると、
意図せずリスクを抱え込むことになりかねません。
申告制度・シフト運用・記録の3点を先に整えることで、
副業に関するトラブルの多くは未然に防ぐことができます。
人事・労務の実務対応でお困りの方へ
副業・労働時間管理・割増賃金対応など、
制度だけでなく「実務でどう動くか」のご相談を受け付けています。
※中小企業の経営者・人事担当者の方からのご相談が中心です。
👉 人事部門導入のご相談は: トナリの人事課長®公式ページ
「トナリの人事課長®」は、中小企業の“人事部門まるごと導入ではなく、実務伴走で仕組みを整えるHR支援サービス”です。
※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。
※登録はいつでも解除できます