副業者・兼業者の労働時間管理チェックリスト|企業側リスクを整理する実務ガイド
〜副業を前提とした時代に、企業が見落としやすいポイントを構造的に整理する〜
副業・兼業が一般化する中で、企業の労務管理は確実に複雑化しています。
とくに飲食・小売・サービス業では、シフト制・深夜勤務・短時間勤務が重なりやすく、「自社の勤務時間だけを見ていれば足りるのか」という疑問を持つ管理職も増えています。
厚生労働省の資料やガイドラインでは、複数の事業主のもとで働く場合、労働時間や休息の考え方を整理する必要性が示されています。
現時点で制度が最終確定しているわけではありませんが、今後は「副業があることを前提に、どこまで把握・配慮しているか」が企業側の評価軸になっていく可能性があります。
現場で起きやすいのは、次のようなケースです。
- A社で8時間勤務したあと、B社で4時間勤務している
- 深夜の副業アルバイト後、そのまま翌朝に本業の早番へ入っている
- 会社ごとに休日は設定されているが、本人にとっての「完全な休み」がない
これらは本人が問題ないと感じていても、合算して見ると負荷が大きく、企業側が配慮を求められる場面につながりやすい状況です。
この記事では、副業者・兼業者を抱える企業が、実務としてどこを確認しておくとリスクを抑えやすいかを、チェックリスト形式で整理します。
チェック1:副業・兼業の申告制度が機能しているか
副業者の管理で最初に整えるべきなのは、「情報が集まる入口」です。
申告制度が曖昧なままでは、どれだけ注意していても見えないリスクが残ります。
● 副業届のテンプレート整備
副業届には、最低限次の項目が含まれているかを確認します。
- 副業先の業種・業態
- 勤務曜日・時間帯(深夜帯の有無)
- 1週間あたりのおおよその労働時間
- 副業先での休日
- 勤務内容や時間が変わった場合の再申告ルール
一度提出して終わりではなく、定期的な更新や変更時の再提出を前提にしておくことで、情報の精度を保ちやすくなります。
● 自己申告だけに頼らない視点
自己申告は重要ですが、それだけで十分とは言い切れません。
本人が労働時間の合算ルールを正確に理解していない場合や、深夜・残業を軽く見積もってしまうケースもあります。
申告内容をもとに、「危険になりやすいパターンが含まれていないか」を確認する視点を持つことが大切です。
チェック2:労働時間を“合算”で捉えられているか
副業・兼業において重要なのは、事業所ごとではなく「本人ベース」で労働時間を見る発想です。
複数の会社で働いていても、身体は一つであるという考え方が基本になります。
● A社8時間+B社4時間の考え方
典型的なケースとして、A社で8時間、同日にB社で4時間勤務する場合があります。
合計すると12時間となり、法定労働時間を超える部分が発生する可能性があります。
現場では「自社では4時間しか働いていないから問題ない」と捉えられがちですが、合算の視点を理解しておかないと判断を誤りやすくなります。
● 深夜バイトと翌朝勤務の組み合わせ
深夜帯の副業と翌朝の本業が連続する場合、労働時間だけでなく休息時間の観点でも注意が必要です。
深夜勤務明けの早番が続くと、体調面の負荷が蓄積しやすくなります。
チェック3:勤務間インターバルとの関係を整理できているか
勤務間インターバルは、副業者管理と切り離せないテーマです。
前日の終業時刻と翌日の始業時刻をセットで見る視点が欠かせません。
● インターバルが短くなりやすいパターン
たとえば、前日に副業で23時頃まで働き、翌朝9時から本業に入る場合、休息時間が短くなります。
こうしたパターンが常態化していないかを確認することが重要です。
● 両社に配慮が求められる場面
副業先・本業先のどちらか一方だけで完結する問題ではなく、双方が一定の注意を払っているかが問われるケースも考えられます。
自社として、どこまで把握し、どう調整するかをルール化しておくと判断がしやすくなります。
チェック4:副業者の連続勤務が見えなくなっていないか
副業者の場合、会社ごとに休日が設定されていても、本人にとっては連続勤務になっているケースがあります。
いわゆる「見えない連勤」は、最も見落とされやすいポイントです。
● 休日が交互に配置されているケース
A社の休日とB社の休日がずれていると、形式上は問題がなくても、本人の休息が確保されにくくなります。
副業届に休日情報を含めることで、こうしたリスクを把握しやすくなります。
● 休日重複の意識づけ
可能な範囲で「両社の休日が重なる日」を意識的に作ることが、負荷軽減につながります。
長期的な連続勤務が疑われる場合は、本人との面談やシフト調整が有効です。
チェック5:安全配慮の視点を持てているか
副業者の管理は、最終的には安全配慮の問題に行き着きます。
副業だから自己責任と割り切るのではなく、把握できる範囲での配慮が求められやすくなっています。
● 長時間・高負荷になっていないか
合算すると長時間になっていないか、インターバルが極端に短い日が続いていないかを、定期的に確認します。
体調不良や疲労のサインが出ていないかを気にかけることも重要です。
● 過労リスクを想定した運用
長時間労働、連続勤務、休息不足が重なると、事故や健康トラブルのリスクが高まります。
副業を認めている企業ほど、事前にルールを整理しておくことがリスク低減につながります。
まとめ
副業者・兼業者の労働時間管理は、今後の労務管理において避けて通れないテーマです。
制度の最終形が確定していなくても、「副業がある前提で、どこを見ておくか」を整理することで、現場の判断ミスを減らすことができます。
申告制度、労働時間の合算、インターバル、連続勤務、安全配慮。
これらを個別に考えるのではなく、構造としてつなげて捉えることが、実務上のポイントです。
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