週44時間特例はなぜ見直されるのか?商業・サービス業が40時間へ統一される背景と実務対応

〜「なぜ今なのか」が分かれば、2026年対応の優先順位が一瞬で決まる〜


2026年を見据えた労働時間制度の整理の中で、商業(小売)・サービス(飲食等)に長年認められてきた「週44時間特例」が見直される流れにあります。

現場ではすでに、「週44時間で回してきたが40時間に合わせなければならないのか」「特例は昔からある制度ではなかったのか」「なぜ今になって見直されるのか」といった戸惑いの声が多く聞かれます。

特に、週44時間を前提にシフト・営業時間・人件費を設計してきた店舗ほど、この変化は経営に直結する問題になります。

しかし、週44時間特例はもともと無期限の優遇措置として設けられた制度ではありません。労働時間を週40時間へ統一していく過程で、一定の業種に限り一時的に設けられた経過措置にすぎません。

この記事では、週44時間特例の歴史的背景、なぜ今見直しが進むのか、影響が大きい業種、40時間全面適用で起きやすい問題、そして商業・サービス業が取るべき実務対応を、法律・労働経済・現場運営の3つの視点から整理します。


週44時間特例とは何か(歴史的背景)


● 1990年代に設けられた経過措置

週44時間特例は、労働時間を段階的に週40時間へ移行するため、1990年代に導入された制度です。当時は、商業・サービス業を中心に人手不足や長時間営業が一般的で、急激な時間短縮が現場混乱を招くと考えられていました。

そのため、「あくまで移行期間の措置」として、一定の業種に限り週44時間までの所定労働時間が認められました。

● 商業・サービス業の労働需要

当時の商業・サービス業は、土日祝日勤務、早朝・深夜業務、立ち仕事中心といった特徴が強く、40時間へ即時対応することが難しいと判断されていました。人件費抑制と長時間営業を両立させるため、特例が残された側面もあります。

● 「例外」が長期化した理由

本来は短期の経過措置であったものの、人手不足の慢性化、景気変動への配慮、業界調整の難しさなどから、結果として30年以上続く例外となりました。


2026年を見据えて見直しが進む根拠


● 働き方改革の第2フェーズ

国は、時間外労働の上限規制導入後の次段階として、労働時間制度全体の整合性を重視しています。特例を残し続けることが、健康確保や過重労働抑制という目的と整合しないとの考えが強まっています。

● 深刻化する人手不足

飲食・小売・宿泊業では離職率が高く、長時間労働が人手不足を悪化させる要因と評価され始めています。特例による長時間運用が、結果として人材確保を難しくしている側面が指摘されています。

● 国際基準との乖離

国際的には週40時間以内を基準とする国が大多数です。EUでは労働時間上限と休息時間を法定化しており、日本だけが44時間を許容している状況は不自然とされています。

● 業態そのものの変化

セルフレジ、省人化、オンライン販売の普及などにより、1990年代と比べて商業・サービス業の業態は大きく変化しました。営業時間短縮や人時生産性重視の運営が進み、「44時間でなければ回らない」前提が崩れつつあります。


廃止の影響が特に大きい業種


● 小売業

品出し・棚卸し・朝番が重なりやすく、週40時間へ移行すると残業が発生しやすい業態です。人員配置の見直しや営業時間短縮を検討せざるを得ないケースも出てきます。

● 飲食業

遅番と早番を組み合わせた2直体制が崩れやすく、40時間管理を前提としたシフト再設計が不可欠になります。深夜営業の継続可否が経営判断に直結します。

● 宿泊業

24時間運営を前提とするため、夜勤・日勤の管理が一層厳格になります。夜勤明け翌日の扱いがシビアになり、人手不足の影響を受けやすい業種です。

● 美容・一部介護分野

予約制・夜間対応・夜勤を含む業態では、週40時間化に伴うシフト再設計が必須になります。


40時間全面適用で起きやすい問題


● 残業時間の急増

これまで44時間内で収まっていた労働が、そのままでは残業扱いになります。繁忙期には人件費が急上昇するリスクがあります。

● シフト移行の混乱

曜日固定シフトや長時間勤務の見直し、夜間帯の人員配置変更など、構造的な再設計が必要になります。

● 非正規雇用の週時間調整

パート・アルバイトの所定労働時間が44時間から40時間に下がることで、追加採用が必要になる店舗も出てきます。

● 人件費上昇

残業代、追加採用、時短営業などが同時に発生し、収益構造の見直しが避けられません。


特例見直しに向けた具体的対応策


● 営業時間と業務の見直し

夜間営業の短縮、オープン・クローズ作業の固定化、時間帯別の人員最適化が重要になります。

● 勤務帯の固定化

遅番→早番を避け、朝番・中番・遅番を明確に分けることで、40時間運用が安定します。

● 非正規の契約見直し

契約上の所定労働時間やシフト条件を整理し、運用とズレが生じないようにします。

● 36協定・制度の再点検

残業上限、特別条項、年間計画との整合性を見直し、制度と実態を一致させる必要があります。


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