副業従業員の労働時間をどう管理する?|2026年労基法改正の最新整理と実務対応
〜「通算管理」と「割増賃金の分離計算」を前提に、企業が迷わないための実務ガイド〜
「副業している社員の労働時間、どこまで把握すべき?」
「通算は必要と聞くけど、割増賃金は誰が払うのか分からない」
「本人申告に任せていて、本当に大丈夫なのか不安」
2026年に向けた労基法改正の流れの中で、副業・兼業を前提とした労働時間管理の考え方は、大きく整理されつつあります。
特に重要なのが、次の2点です。
- 労働時間は「本業+副業」で通算して管理する
- 割増賃金は、原則としてメイン・サブそれぞれの雇用先で計算・支払う方向
これにより、企業実務では次のような“ズレ”が起きやすくなっています。
- 通算管理は必要だが、他社分の賃金までは分からない
- 割増賃金の未払いリスクを、どこまで自社が負うのか不安
- 本人申告が不十分な場合、責任の所在が曖昧になる
つまり、副業時代の労働時間管理は、「すべてを抱え込む」でも「本人任せ」でもなく、企業として合理的な管理ラインを設計することが求められます。
本記事では、2025年12月時点の最新整理を前提に、次の点を実務目線で解説します。
- 副業者の労働時間管理が難しい理由
- 企業が取るべき5つの実務対応
- 労働時間通算の具体例と注意点
- 本人が申告しない場合の企業責任
- 副業管理でよくあるQ&A
副業者の管理が難しい理由
● 労働時間が把握できない
副業者管理で最大の課題は、副業先の労働時間が企業から見えないことです。
- 副業先の勤怠システムが別
- シフトが月ごとに変動
- 深夜・休日勤務が多い
このため、本人申告がなければ、総労働時間の把握は実質不可能になります。
● 本人申告が不正確
実務では、次のようなズレが頻発します。
- 副業時間を少なめに申告する
- 申告そのものを忘れる
- 深夜・休日の区別が曖昧
本人の感覚と実際の労働時間がズレるほど、通算管理・健康配慮の判断が難しくなります。
● 割増計算の負担が増える
現在整理されている方向性では、
- 労働時間:本業+副業で通算管理
- 割増賃金:メイン・サブそれぞれで計算・支払い
という構造になります。
このため企業側は、
- 自社の所定・法定時間の管理
- 副業を含めた長時間・健康リスクの把握
という二層管理を行う必要があります。
企業が取るべき5つの実務対応
① 副業者の事前登録
まず必要なのは、「誰が副業しているか」を把握することです。
- 副業の有無の申告
- 副業内容・勤務先
- 勤務時間帯(深夜・休日の有無)
事前登録がなければ、管理は始まりません。
② 月次労働時間申告フォーム
副業先の労働時間は、月次で本人申告を受けるのが実務的です。
- 専用フォーム
- アプリ入力
- シフト表の写し提出
③ 自己申告の記録化
申告は「聞いた」だけでは不十分です。
- デジタルで保存
- 月次で履歴管理
- 説明責任を果たせる状態にする
④ シフト作成時の配慮
副業者のシフトでは、次を必ず確認します。
- 通算で週40時間を超えないか
- 深夜副業翌日の勤務負荷
- 法定休日・インターバルの確保
⑤ 36協定との関係整理
通算時間が長くなるほど、
36協定との整合性が問題になります。
自社の時間外が少なくても、副業を含めた長時間状態が続けば、健康配慮義務の観点で調整が必要になります。
労働時間通算の代表例
● 平日×深夜×休日が重なるケース
副業が深夜・休日に及ぶと、
- 長時間労働
- インターバル不足
- 健康リスク
が一気に高まります。
● 所定労働時間との比較
所定8時間×5日=40時間。
ここに副業が加わるだけで、「通算時間外状態」になります。
● 休暇付与との関係
通算時間が多い従業員ほど、年休取得や休息確保の配慮が重要になります。
本人が申告しない場合の企業責任
● 指導義務
企業は、申告を求め続ける義務があります。
- 定期的なリマインド
- 書面での注意喚起
● 健康配慮
長時間が疑われる場合、
- 面談
- 勤務調整
- 深夜・残業制限
が必要になります。
● 事故発生時の責任
副業中の事故は原則副業先の労災ですが、過重労働を放置していた場合、本業側の責任が問われるケースもあります。
副業者管理のQ&A
● 副業先へ直接確認できる?
できません。本人申告が原則です。
● 副業禁止にすれば安全?
全面禁止はガイドライン上NGです。
● 割増賃金は誰が払う?
現行整理では、各雇用先がそれぞれの労働時間を基に支払う方向です。
まとめ
副業時代の労働時間管理は、「通算管理」と「割増賃金の分離計算」という前提で設計する必要があります。
企業が整えるべきは、
- 副業の事前申告
- 月次の労働時間申告
- 記録の保存
- シフトと健康配慮の調整
副業はもはや例外ではありません。禁止ではなく、管理する。
これが2026年に向けた現実的な労務対応です。
人事・労務の実務対応でお困りの方へ
副業・労働時間管理・割増賃金対応など、
制度だけでなく「実務でどう動くか」のご相談を受け付けています。
※中小企業の経営者・人事担当者の方からのご相談が中心です。
👉 人事部門導入のご相談は: トナリの人事課長®公式ページ
「トナリの人事課長®」は、中小企業の“人事部門まるごと導入ではなく、実務伴走で仕組みを整えるHR支援サービス”です。
※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。
※登録はいつでも解除できます