副業・兼業の「労働時間通算」とは?割増賃金・申告・健康管理まで実務で迷わない整理【2026対応】

〜「本業40時間+副業ちょっと」のつもりが、“通算で時間外・深夜・休日”に触れるときの会社ルール設計〜


「副業OKにしたいが、労働時間はどこまで見ればいい?」

「割増賃金って、本業と副業を足して判断するの?」

「そもそも他社の勤務時間なんて、会社が把握できるの?」

副業・兼業が一般化するほど、“現場の実感”と“制度上の扱い”がズレやすい論点が、労働時間です。
特にポイントになるのが、「労働時間通算(通算管理)」という考え方です。

通算とは、簡単に言えば「同じ人が複数の勤務先で働くなら、労働時間は合計で見ていく」という枠組みです。
この枠組みは、時間外・深夜・休日労働の判定や、長時間労働の健康リスク管理に影響します。

  • 割増賃金:通算すると「時間外扱い」になる時間が出る
  • 36協定・上限:長時間労働の管理が“個人ベース”で重くなる
  • 安全配慮:副業を把握した上での対応が問われやすい

本記事では制度を断定せず、2026年の見直し議論も踏まえた実務設計として、通算の基本・典型ケース・会社が整えるべき仕組み・リスクを整理します。
「副業を認める/認めない」の前に、まず“管理の型”を作っておくと、社内が揉めにくくなります(ここが地味に効きます)。


副業時間通算とは?(基本定義)


● 本業+副業の労働時間を合算

労働時間通算とは、「同じ労働者が複数の事業場で働く場合、その労働時間を合計して扱う」という考え方です。
たとえば、次のようなケースです。

  • A社(本業):1日8時間×週5日=週40時間
  • B社(副業):1日2.5時間×週2日=週5時間

合計は週45時間となり、「週40時間を超える部分」が時間外労働の判定に関わることになります。
ここで重要なのは、“会社ごとに見たら法定内”でも、個人ベースではラインを超える場面がある点です。

● 時間外・深夜・休日労働の判定に影響

通算が問題になりやすいのは、次の3つの判定が“足し算前提”で絡むためです。
(論点は長時間労働の心配だけではなく、計算ロジックそのものに直結します)

  • 時間外労働:1日8時間・週40時間を超えるか
  • 深夜労働:22時〜翌5時の勤務があるか
  • 休日労働:法定休日に当たる勤務があるか

本業+副業の組み合わせ次第で、「時間外+深夜」「時間外+休日」といった重なりが起きやすくなります。
副業が“短時間でも夜型・休日型”だと、会社の負担(計算・配慮・説明)が増えやすいのが実務の特徴です。

● 企業側の責任範囲

ここでよく出るのが、「他社の分まで会社が責任を負うのか?」という論点です。
通算は“個人の総労働時間”を前提にした枠組みなので、企業としては次の2つの観点で整理すると運用が安定します。

  • ① 自社として、本人をどの程度働かせているか(自社の管理責任)
  • ② 副業の状況を把握した上で、健康確保の観点で必要な対応をしているか(配慮と記録)

「知らなかった」で終わらせないために、申告・面談・記録の“型”を作ることが、結局いちばんコスパが良いです。
副業そのものより、放置状態が一番トラブルになりやすい設計です。


2026年改正で変わるポイント


● 割増賃金の「通算」見直しが議論に入っている

直近の制度検討では、副業・兼業における通算のうち、特に「割増賃金の支払に係る通算管理」の扱いが論点として整理されています。
方向性としては、「健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金は通算を要しない扱いも含めて検討する」ことが検討課題として示されています。
つまり、今後は「健康管理としての通算」と「割増賃金計算としての通算」が分かれて整理される可能性がある、という構図です。

● 本人申告のルール強化(実務は“仕組み化”が前提)

副業・兼業の労働時間管理は、現実には「本人からの申告」に依存する部分が大きい領域です。
そのため実務では、次の3点を“会社の仕組み”として置くことが重要になります。

  • 副業の有無を確認する(入社時・年1回・変更時など)
  • 副業時間を月次で申告してもらう(フォーマット固定)
  • 記録保全(申告・面談・注意喚起の履歴を残す)

運用が属人化すると、「言った/言わない」「聞いた/聞いてない」の泥試合になりやすいので、フォームと手順で“淡々と回る設計”に寄せます。

● 長時間労働対策が必須に(健康確保措置の設計)

副業時間通算は、割増賃金だけでなく、長時間労働による健康リスクともセットで扱われます。
実務で問題になりやすいのは、次のようなパターンです。

  • 本業がフルタイムで、副業が夜間・休日に偏っている
  • 副業が複数あり、本人も把握が曖昧になっている
  • 移動時間が長く、休息が削られている(勤務間インターバルが取りにくい)

「副業OK」を掲げるほど、会社側は“長時間労働の兆候を拾える仕組み”が必要になります。
ここは精神論ではなく、データ(申告)と手順(面談・調整)で回すのが現実解です。


通算が必要になる“典型的なケース”


● 本業40h+副業5hで残業扱い

一番分かりやすいのが「週40時間+少し副業」のケースです。
本業が週40時間で固定されていると、副業の5時間は“通算上は時間外に触れる可能性がある時間”として扱われやすくなります。
どこから時間外として扱うか、割増賃金の負担関係をどう整理するかは、就業規則・申告運用・契約の組み方で論点が出ます。

● 深夜バイトで割増が増えやすい

本業が日中、副業が深夜(22時〜翌5時)に寄ると、割増の論点が一気に増えます。
副業が短時間でも、深夜帯が混ざると「深夜割増」+「通算による時間外判定」が同時に走るため、給与計算と説明の難易度が上がります。

● 休日副業で“重なり”が起きやすい

法定休日に副業が入ると、休日労働の論点と通算が重なりやすくなります。
特にシフト制で法定休日の特定が曖昧な会社ほど、「休日の定義」と「副業の申告」が噛み合わず、後から整理が難しくなります。
まずは社内の休日定義を揃えたうえで、副業の申告フローに落とし込みます。


企業が整えるべき制度


● 副業申告フォーム

第一歩は「副業の有無・内容・勤務形態」を把握することです。
紙でもWebでも構いませんが、フォーム化して記録として残せる形にします。

  • 副業の有無(雇用型か、業務委託か)
  • 副業先の業種・勤務時間帯(深夜・休日の有無)
  • 健康上の配慮が必要な事情(申告できる範囲で)

「副業は自由だが会社には言わなくてよい」という状態は、トラブル発生時の説明が難しくなりやすい運用です。
“言いやすく、出しやすい”申告設計にするほど、結果として会社も本人も守れます。

● 月次労働時間申請

次に、副業先での労働時間を月次で申告してもらう仕組みです。
実務上は「前月分を締め日までに申告」「未申告はリマインド」「提出後は保存」という流れにして、淡々と回る形が安定します。

  • 前月の副業労働時間(合計)
  • 深夜帯・休日の勤務があったか
  • 当月の見込み(増える月だけでも申告)

ここが整うと、長時間労働の兆候を早めに拾え、面談や業務調整の判断がしやすくなります。

● 申告漏れ時の対応

申告がない場合や、内容に整合が取れない場合の扱いも、あらかじめルール化しておきます。
ポイントは「懲戒ありき」ではなく、健康確保とリスク管理の手順として整えることです。

  • 未提出時のリマインド手順(誰が/いつ/どう連絡)
  • 長時間労働が疑われる場合の面談・業務調整の流れ
  • 注意喚起・面談結果の記録(後から説明できる状態)

“見て見ぬふり”が一番リスクになります。仕組みで拾って、仕組みで整える。これが副業時代の基本動作です。


違反した場合のリスク


● 未払割増・是正指導・安全配慮の論点

副業の労働時間通算をまったく想定せずに運用すると、一般に次のようなリスクが論点になります。
(“副業を許可したかどうか”よりも、“管理をどう設計していたか”が焦点になりやすい領域です)

  • 未払割増賃金:通算前提で見ると計算が変わる可能性がある
  • 労基署対応:労働時間管理の仕組み不備として指摘される可能性がある
  • 健康問題:長時間労働の兆候を把握しつつ放置したと評価される論点が出る
  • 採用・定着:副業OKでも運用が荒れると、社内不信が増えやすい

副業は“止めるか”ではなく、“整えるか”で会社の損益が変わりやすいテーマです。
早めに型を作っておくほど、後からの修正コストが下がります。


まとめ


副業・兼業の労働時間通算は、「本業と副業を足して、その人の総労働時間をどう扱うか」という枠組みです。
時間外・深夜・休日の判定や、長時間労働の健康確保と結びつくため、実務では“申告と記録”が重要になります。

2026年に向けた見直し議論では、健康確保のための通算を前提にしつつ、割増賃金の通算管理の扱いをどうするかが論点として整理されています。
だからこそ、いま会社がやるべきことは「制度の結論待ち」ではなく、申告・月次確認・面談・記録の運用を先に整えておくことです。

副業を一律に禁止するより、通算を前提に“淡々と回る管理の型”を作るほうが、現場も人事も疲弊しにくくなります。
仕組みで回る状態を作って、会社のリスクと、社員の体力の両方を守っていきましょう。


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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

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