勤怠システム・就業規則・シフト運用を揃える方法|2026改正に備える“三位一体”の実務設計
〜「規程ではOKなのに現場はNG」を減らすための、定義・設定・運用の合わせ方〜
「就業規則は直したのに、勤怠の計算が合わない」
「勤怠システムは新しくしたのに、シフト運用が追いつかない」
「店長ごとに基準が違って、結局“誰が正しいの?”になる」
2026年に向けて、勤務間インターバル、連続勤務、法定休日の扱い、週40時間の考え方など、“数字で判定される領域”が増える方向で議論・整理が進んでいます。
ここで現場がつまずきやすいのは、法改正そのものよりも、「就業規則」「勤怠システム」「シフト運用」の前提が揃っていないことです。
よくあるのは、次の“ねじれ”です。
- 就業規則:方針は書いたが、定義が曖昧なまま
- 勤怠:設定が途中で、判定ロジックが旧前提のまま
- シフト:現場の経験で回っているが、判断基準が共有されていない
この状態だと、「規程は整っているのに現場でエラーが出る」「勤怠上はOKなのに説明ができない」といったトラブルが起きやすくなります。
逆に言えば、三者を同じ定義・同じ計算単位・同じ運用フローで揃えるだけで、事故率は目に見えて下がります。
“高いシステムを入れる”より先に、“前提を揃える”がコスパ最強、というやつです(地味ですが強い)。
本記事では、制度を断定するのではなく、2026年に備える実務設計として、三位一体で揃える順番と要点を整理します。
なぜ「3つの不一致」がトラブルの原因になるのか?
● 就業規則が古い
シフト制なのに「原則9:00〜18:00」の定型文が残っていたり、法定休日・所定休日の扱いが曖昧だったりすると、現場は“運用で補う”しかありません。
すると、勤怠の判定結果と、就業規則の文面が噛み合わず、説明が難しくなります。
● 勤怠システムの設定が不足している
勤怠システムは「入れたら終わり」ではなく、会社のルールを判定する装置です。
休日区分、週の起算日、深夜またぎ、勤務間インターバル、連続勤務カウントなどが未設定だと、シフト側で頑張っても“ズレた判定”が出やすくなります。
● シフト運用が属人化している
店長の経験と勘で回っている状態は、平時は強いのですが、数値基準が増える局面では揺れます。
担当者が変わると判断が変わり、「今月はOK、来月はNG」になりがちです。
属人化のリスクは、能力の問題ではなく、基準が共有されていない構造にあります。
● 計算単位がズレている
就業規則は「週」前提、勤怠は「月」前提、シフトはカレンダー週で作成…のように単位がズレると、同じ勤務でも結果が変わります。
特に「週の起算日」「変形労働時間制の期間」「深夜またぎの所属日」は、揃っていないと誤差が積み上がります。
3つを一致させるための「基準作り」
● 休日の定義(法定・所定)
最初に揃えるべき共通言語は、休日です。
法定休日(週1日または4週4日)と所定休日(会社の休み)を、就業規則・勤怠・シフトで同じ意味で扱えるように定義します。
シフト表上でも、記号や色分けで区別できる形にしておくと運用が安定します。
● 勤務日の定義
「どこからどこまでを1勤務(1日)として数えるか」を揃えます。
深夜またぎ勤務を開始日基準にするのか、終了日基準にするのか。夜勤を1勤務として統一するのか。
ここがズレると、残業・連続勤務・勤務間インターバルの判定が連鎖的に崩れます。
● 深夜またぎの取り扱い
深夜帯(22時〜翌5時)を含む勤務は、判定論点が重なりやすいゾーンです。
勤務の所属日、深夜割増の集計、翌日の勤務との連続性を、会社として“ひとつのルール”に寄せます。
「同じ勤務を見ても、誰が計算しても同じ結論になる」状態が目標です。
● 勤務間インターバルと連続勤務の基準
勤務間インターバルと連続勤務は、現場の“うっかり”が起きやすい領域です。
基準値そのものだけでなく、手前で気づけるライン(注意喚起の設計)も含めて、就業規則・勤怠設定・シフト作成手順に落とし込みます。
現場が「見れば分かる」「アラートで気づける」設計が、結局いちばん強いです。
勤怠設定の優先順位
① 休日判定
休日区分(法定・所定・代休・振替)を設定し、勤怠側で“休日の意味”がブレない状態を作ります。
ここが固まると、時間外・連続勤務カウントの精度が一段上がります。
② 勤務間インターバル
退勤→次回出勤の間隔を判定できるように設定します。
シフト作成者・管理者・本人のどこに通知するか、アラート後に何を変えるか(差し替え・承認・記録)まで含めて設計します。
③ 週40時間計算
週の起算日、週の集計単位、時間外の判定基準を揃えます。
シフト運用がカレンダー週で動いている場合ほど、勤怠側の週定義がズレると誤差が出やすいので要注意です。
④ 変形労働時間制
変形(1ヶ月・1年など)の期間と計算ロジックを、就業規則の規定と一致させます。
“山と谷”の運用がある会社ほど、勤怠設定の単位が揃っているかが事故の分かれ目になります。
⑤ 残業計算ロジック
所定内・法定外、深夜・休日の重なりなど、勤怠の計算ルールを確定させます。
人の手計算が残るほど、後追い修正が増え、現場も人事も消耗します。できるだけ“判定はシステム、例外はログ”に寄せます。
就業規則側に書いておきたい項目
● 休日特定
法定休日をどのように特定するか、シフト制の場合の扱いを明文化します。
「シフト表で示す」「休日記号で区別する」など、運用に落ちる書き方にするとズレが減ります。
● 連続勤務の制限
連続勤務が長くなりやすい職場ほど、制限と例外手続きを規程に置くと運用が安定します。
例外があり得るなら、「誰が承認し、どこに記録するか」までセットにします。
● 勤務間インターバル
勤務間インターバルの考え方、対象、例外の扱いを整理します。
“現場努力”ではなく、“運用ルール”として書くほど、シフト設計と勤怠設定が一致しやすくなります。
● シフト確定時期
前月中に翌月シフトを確定する、変更手続きを決める、承認者を置く。
この3点があるだけで、勤務間インターバルや連続勤務の“事前チェック”が回りやすくなります。
● 例外運用ログ
例外的な勤務が出たときは、理由・承認・代替措置(別日の休息確保など)を記録します。
ログは「現場を縛るため」ではなく、説明責任と再発防止のための保険になります。
2026までに整備するためのロードマップ(3ヶ月モデル)
● 1ヶ月目:現状棚卸しと基準設計
就業規則、勤怠設定、シフト運用を棚卸しし、「休日・勤務日・深夜またぎ・勤務間インターバル・連続勤務」の社内定義を一枚にまとめます。
まずは“共通の物差し”を作る月です。
● 2ヶ月目:就業規則と勤怠設定を揃える
基準に合わせて就業規則を整え、勤怠システムに設定を反映します。
勤務パターンを数種類テストし、規程の想定と勤怠の判定結果が一致するかを確認します。
● 3ヶ月目:シフト運用の標準化と教育
シフト作成ルール(休日の置き方、夜勤の扱い、確定時期、変更手順)をマニュアル化し、管理者へ共有します。
アラートが出たときの動き方も決め、運用の“型”を定着させます。
まとめ
2026年に備える実務で大切なのは、「就業規則だけ」「勤怠だけ」「シフトだけ」を個別最適にしないことです。
トラブルの多くは、制度よりも不一致から起きます。
ポイントは、休日・勤務日・深夜またぎ・勤務間インターバル・連続勤務の定義を揃え、基準→勤怠設定→シフト運用を一本の線でつなぐこと。
そして、例外が出る前提でログを残し、次回の改善に回すことです。
“ルールがあるのに守れない”状態は、現場の根性不足ではなく、設計の問題であることがほとんどです。
三位一体で揃えておくと、現場の負担はむしろ軽くなり、人件費の予測可能性も上がります。
仕組みで回る状態を作って、店長の睡眠時間も利益も守っていきましょう。
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