【2026労基法改正】“失敗する会社”と“勝ち抜く会社”の差が開く理由|人件費×労務戦略で見る中小企業の勝ち筋

〜勤務間インターバル、連続勤務、週40時間化、副業管理…「現場ルールの設計力」が利益を守る時代へ〜


「2026年に向けて論点は増えているのに、結局どこから手を付ければいいか分からない」

「就業規則は直したつもりだが、勤怠やシフト運用が追いついていない気がする」

「人件費がじわじわ上がる未来は見えるが、打ち手が“採用”しか思い浮かばない」

2026年に向けて議論が進む労働時間制度の見直しは、単なる“書類の更新”では終わりません。店舗型・シフト型の企業ほど、シフト設計、勤怠設定、人件費の出方、管理者教育まで連鎖して影響が出やすいテーマです。
ここで注意したいのは、現時点では制度の方向性が整理されつつある段階であり、施行時期や細部は今後の公表情報で更新され得る、という点です。

それでも、経営として先に整理できることがあります。ポイントは「法律の正解を当てにいく」よりも、「どう転んでも崩れない運用の土台」を先に作ることです。
同じ論点を前にしても、経営が失速する会社と、むしろ強くなる会社に分かれます。
その差は、制度への“知識量”よりも、規程・勤怠・シフト・教育を一体で設計できるかで決まりやすいのが現場のリアルです。

本記事では一般論として、①失敗する会社の共通点、②勝ち抜く会社の共通点、③人件費×労務を経営戦略に落とす視点、④6ヶ月で形にするロードマップ、⑤最終チェックリストを整理します。


2026対応で“失敗する会社”の共通点


● 就業規則が古い

就業規則が古い会社は、現場の努力が成果に変わりにくくなります。典型は、休日・労働時間・シフト運用のルールが曖昧で、勤務間の休息や連続勤務、兼業・副業の扱いが整理されていない状態です。ルールの土台が古いと、管理者が判断できず、現場で“都度相談→都度例外”が増えていきます。

● 勤怠設定がバラバラ

店舗・部署ごとに休日区分や深夜帯の扱いが違う、残業の起算点が統一されていない、アラートが無いなど、勤怠設定がバラバラだと、人件費が静かに漏れます。就業規則を整えても、勤怠が追いついていないと「運用は結局いつも通り」になり、結果として是正・説明・精算のコストが膨らみます。

● 属人的シフト

ベテラン店長の経験で回しているシフトは、平時は強いのに、ルール変更の局面で一気に弱くなります。属人化の本質は「判断基準が言語化されていない」ことです。判断基準が共有されていないと、管理者が変わった瞬間に品質が崩れ、違反リスクや人件費のブレが増えます。

● 直前のシフト変更が常態化

前日・当日の交代依頼、穴埋めの電話連絡が常態化している会社は、今後さらに厳しくなります。直前変更が増えると、勤務間の休息が削られ、連続勤務が伸び、休日の位置が崩れ、結果として“残業で吸収”が増えやすくなります。直前変更は、現場の頑張りに見えて、経営としては最もコストが高い運用になりがちです。

● 副業管理が無い

副業・兼業は、禁止でコントロールするより、申告と見える化でリスクを下げる発想が現実的です。副業管理が無い会社は、本人の働き方が見えないまま過重労働や健康面のリスクを見落としやすく、トラブル時に「会社が何も整えていなかった」点が争点化しやすくなります。


逆に“勝ち抜く会社”の共通点


● 休日位置を固定し、シフトの設計自由度を上げている

勝ち抜く会社は、休日を“運用で何とかするもの”ではなく“設計で守るもの”として扱います。休日位置が見えると、週内の稼働時間が組み立てやすくなり、連続勤務や休息の確保も管理しやすくなります。休日位置の固定は、地味に見えて、人件費のブレを抑える強い基礎工事です。

● 早期シフト確定で、違反とムダを設計段階で潰している

前月中に翌月シフトを確定させる会社ほど、突発対応が減り、結果として残業と人件費が落ち着きます。早期確定の価値は“従業員満足”だけではなく、経営として「高コストな当日対応」を減らせる点にあります。シフトは、作ってから直すのではなく、作る時点で整えるほうが圧倒的に安く済みます。

● 勤務間の休息ルールを明確化し、勤怠アラートで実装している

勤務間の休息は、現場感覚だけに頼ると崩れます。勝ち抜く会社は、ルールを明確にし、勤怠でアラートを出し、管理者が気づける仕組みに落としています。ルールを“守らせる”より、“守れる状態にする”ほうが、現場の反発が少なく、定着も早くなります。

● ルールの標準化で、属人の穴埋めを減らしている

標準化とは、現場を縛るためではなく、現場を助けるために行うものです。シフト作成の判断基準、勤怠修正のルール、休日・深夜・時間外の定義を統一すると、管理者が変わっても品質が落ちません。標準化が進むほど、教育コストも下がり、人件費の見通しが立ちやすくなります。

● スタッフ教育が整っていて、“なぜ必要か”が共有されている

ルールは、現場に理由が伝わった瞬間に守られやすくなります。管理者向けのポイント整理、シフト担当向けの設計研修、一般スタッフ向けの働き方ガイドを用意している会社は、例外運用が減り、トラブルも減ります。教育はコストではなく、例外を減らす投資です。


2026年に向けた“経営戦略の視点”


● 人件費構造を“率”ではなく“中身”で再設計する

人件費率だけを見ても打ち手は出ません。役割別(店長・社員・パート・学生・夜勤)、時間帯別(朝・昼・夕・深夜)、店舗別で分解し、「どこで伸び、どこで漏れているか」を見える化します。見える化すると、採用以外の打ち手(業務削減・配置変更・営業時間の最適化)が現実的に選べるようになります。

● 勤務体系を標準化し、例外を“例外”に戻す

早番・中番・遅番・夜勤を何パターンかに絞り、標準の型として運用します。例外が増えるほど、休息確保も連続勤務の管理も難しくなり、結果としてコストが高い運用になります。標準化は、経営として“高コストな例外”を減らす仕組みです。

● システム連動を強化し、規程と勤怠とシフトを一枚にする

規程だけ整っても、勤怠の判定が違えば意味がありません。勤怠が最新でも、シフトが現場判断で崩れれば漏れます。勝ち筋は、規程→勤怠設定→シフト運用の順に連動させ、判断ポイントをアラート化し、管理者が迷わない状態を作ることです。

● 業務削減を先に実行し、“人で埋める前”に穴を小さくする

制度がどう整理されても、業務が重い会社は人件費が上がりやすくなります。まずはサービスラインと業務の棚卸しを行い、「やめる・減らす・時間帯を限定する」を先に決めます。人を増やすのは最後でよく、先に業務の穴を小さくすると、増加幅は抑えやすくなります。


中小企業が取り組むべきロードマップ


● 1ヶ月目:規程整備

就業規則・関連規程の棚卸しを行い、休日、労働時間、シフト運用、兼業・副業の扱い、健康確保の考え方を“運用できる言葉”で整えます。ここでの狙いは、現場が判断できる土台を作ることです。

● 2〜3ヶ月目:勤怠設定

休日区分、深夜帯、時間外の起算点、アラートなどを統一し、店舗間の差を潰します。規程と勤怠の整合が取れると、説明可能な運用になり、後追い修正と精算が減ります。

● 4〜5ヶ月目:シフト運用

標準シフトの型を定義し、前月確定の運用に寄せ、直前変更を減らす仕組みを作ります。店長やシフト担当に対して、判断基準の共有と、例外処理のルールを教育で落とし込みます。

● 6ヶ月目:全体最適

人件費の出方、残業の発生ポイント、欠員や離職の兆候をモニタリングし、問題店舗・部署を特定します。業務削減、役割再配置、サービスラインの見直しを検討し、「回る仕組み」に仕上げます。


最終チェックリスト


● 就業規則・規程

  • 休日・労働時間・シフト運用の判断基準が明文化されている
  • 勤務間の休息、連続勤務、健康確保、兼業・副業の申告ルールが整理されている

● 勤怠システム

  • 休日区分、深夜帯、時間外の判定が統一されている
  • 勤務間の休息や連続勤務の“気づき”につながる設定が入っている

● シフト運用

  • 前月確定の運用が回っている
  • 標準シフトの型があり、例外が例外として扱われている

● 教育・運用

  • 店長・管理者が判断基準を理解し、説明できる
  • 申告・面談・調整の社内フローが固定され、証跡が残る

まとめ


2026年に向けた制度見直しの論点は、結局のところ「現場運用の設計力」で差がつきます。失敗する会社は、古い就業規則、バラバラな勤怠設定、属人的なシフト、直前変更の常態化、副業管理の不在といった“場当たり運用”が積み重なり、人件費とトラブルで体力を削られやすくなります。

勝ち抜く会社は、休日位置の見える化、早期シフト確定、勤務間の休息ルールの明確化、標準化、教育を通じて、規程・勤怠・シフトを一体で整えます。
完璧を目指すより、6ヶ月のロードマップで確実に形にすることが現実的です。制度の結論がどう整理されるとしても、“崩れない土台”を先に作った会社ほど、2026年以降の人件費上昇局面でも負けにくい体質になります。


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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

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