飲食・小売・宿泊・物流の2026年労務対応ガイド|共通5大ポイントと実務チェックリスト

〜「長時間営業×深夜×属人的シフト」から、“ルールと仕組みで守る働き方”への転換〜


2026年前後を目安に、労働時間や休日の在り方についての見直しが本格的に議論されています。
現時点で全てが法律として確定しているわけではありませんが、厚生労働省の公表資料や審議の方向性を見ると、
「勤務間インターバル」「連続勤務」「休日の特定」「週40時間基準」「副業を含めた通算管理」といったテーマが、今後ますます重要になることはほぼ間違いありません。

特に、次の4業種は共通して“影響を受けやすい働き方”を持っています。

  • 長時間・広時間帯の営業(早朝〜深夜)
  • 繁忙期と閑散期の差が大きい
  • 人員不足の中で属人的なシフト調整に頼りがち
  • 副業・ダブルワークのスタッフが多い
  • 深夜またぎ・早朝業務が組み込まれている

その4業種がこちらです。

  • 飲食業
  • 小売業(スーパー・コンビニ・ドラッグストアなど)
  • 宿泊業(ホテル・旅館など)
  • 物流業(倉庫・配送)

この記事では、現時点の公表情報や議論の方向性を前提に、
この4業種が「共通して押さえておきたい2026年前後の労務対応ポイント」を整理します。

  • 2026年に向けて意識すべき5つの核心ポイント
  • 多くの企業が見落としがちな共通の落とし穴
  • どの業種にも共通する“改正対応の基本方針”
  • 業種別にカスタムすべき運用のポイント
  • 2026年までに整えておきたい書類・勤怠設定の一覧

なお、本記事はあくまで執筆時点で示されている方向性にもとづくものであり、
最終的な制度内容や運用は、厚生労働省の正式な告示・通達・Q&A等をご確認のうえで判断してください。


2026年に一斉に意識すべき5つの核心ポイント


● 勤務間インターバル(終業から次の始業までの休息)

勤務間インターバルについては、終業から次の始業までに一定の休息時間を確保する方向で議論が進んでいます。
資料上は「おおむね11時間」が一つの目安として示されるケースが多く、
今後、制度としての位置づけが強まる可能性が高いテーマです。

飲食・小売・宿泊・物流はいずれも、

  • 閉店作業や棚卸しで退勤が遅くなる(飲食・小売)
  • 夜勤・宿直から日勤へと連続しやすい(宿泊)
  • 深夜〜早朝の荷受けや配送が連続する(物流)

といった事情から、勤務間インターバルが不足しやすい構造を持っています。

● 連続勤務日数の上限(いわゆる「14連勤」などの抑制)

過重労働対策の一環として、
「一定日数を超える連続勤務を避けるべき」という考え方が明確に意識されはじめています。

特に次のような場面では、連勤が起きやすくなります。

  • 飲食・小売・宿泊の繁忙期(年末年始、連休、イベント期間など)
  • 物流の荷量増加時(セール・繁忙期・災害対応など)
  • 人員不足による店長・リーダーの長期間連勤

今後は、「何日まで連続勤務を認めるか」を自社ルールとして定め、シフト作成時にチェックする仕組みが求められます。

● 法定休日の事前特定と見える化

シフト制の企業では、

  • シフトに入っていない日=何となくの「休み」
  • 非勤務日と休日の区別があいまい

といった運用が続いているケースが少なくありません。

今後の議論では、
「法律上必要な休日(法定休日)を、あらかじめ特定して示す」方向性が示されており、
「非勤務日」「法定休日」「所定休日」を就業規則とシフト表の両方で区別することが重要になっていきます。

● 週44時間特例の見直し・廃止方向(中小小売・サービス等)

一部の小売・サービス業では、
従業員数などの条件を満たす事業場に対して「週44時間」を上限とする特例が認められてきました。

今後は、週40時間を基準とした統一的な考え方に揃える方向で見直しが検討されており
「週44時間を前提にしたシフト構成」は、そのままでは成立しない可能性があります。

特に、小規模な飲食店や小売店舗では、

  • 5.5日勤務+長めの営業時間
  • 週6日勤務+短時間休日

といった組み方でギリギリ回しているケースが多く、
「週40時間以内で回す」ことを前提としたシフト再設計が、早めに必要になります。

● 副業・兼業時間の通算管理(割増賃金・健康確保)

副業・兼業はすでに一般化しており、

  • 飲食+軽貨物配送
  • 宿泊+コールセンター
  • 小売+清掃・警備
  • 物流+別会社での配送

といった組み合わせが珍しくありません。

今後、本業と副業の労働時間を通算して、健康確保や時間外上限、割増賃金をどう扱うかが、より実務的な論点になります。

会社側としても、
副業の有無やおおよその勤務時間帯を把握し、過重労働になりそうな場合はシフトを調整するといった運用が求められる場面が増えていくと考えられます。


多くの企業が見落としている共通の落とし穴


● 深夜またぎの処理と日付・休日判定のズレ

4業種すべてで共通しているのが、
「深夜帯をまたぐ勤務」と「日付・休日・割増の判定」がズレやすいという問題です。

  • 飲食の閉店作業・仕込み
  • 小売の棚卸し・売場変更
  • 宿泊のナイトシフト・夜勤
  • 物流の深夜荷受け・早朝仕分け

深夜をまたぐ勤務は、

  • どの日の労働時間としてカウントするか
  • どの休日にかかっているか
  • どの割増率を適用するか

といった判定が難しく、
勤怠システム側の設定と運用ルールのすり合わせが不可欠です。

● 属人的なシフト管理

「店長が経験で組んでいる」「長年同じ担当者がExcelで管理している」といった属人的運用は、
インターバル・連続勤務・休日・週40時間・副業通算といった複数の論点が絡む2026年以降、
ほぼ確実に限界を迎えます。

人の勘や現場感覚に頼るのではなく、
「シフトパターンを標準化し、勤怠システム側でチェックをかける」スタイルへのシフトが必要です。

● 古いままの就業規則

飲食・小売・宿泊・物流では、

  • 10年以上就業規則を改定していない
  • 休日の定義が曖昧なまま
  • 勤務間インターバルや副業に関する条文が存在しない

といったケースが少なくありません。

制度見直しの方向性を踏まえると、
「休日」「非勤務日」「深夜勤務」「副業」などのキーワードは、少なくとも条文上で一度棚卸し・再定義しておく必要があります。

● 勤怠設定と現場運用の不一致

実際のところ、次のようなズレはよく発生しています。

  • シフト表上は「休日」だが、勤怠システム上は「非勤務日」
  • 深夜・休日の割増率が、システムと就業規則で一致していない
  • 「遅番→早番禁止」のルールがシステムに反映されていない

このズレは、
割増賃金の誤計算・休日数不足・長時間労働の見落としといったかたちで、一気にリスク化します。

● 労働時間の通算(1日の中の組み合わせも含む)

副業通算だけでなく、同じ会社・同じ店舗の中でも、

  • 早朝品出し+本シフト(小売)
  • 夜の仕込み+翌日の仕込み(飲食)
  • 夜勤+明け後の一部時間(宿泊・介護)

といったかたちで、複数の勤務を合算して考えるべきケースが存在します。

「1コマずつは短いシフトだが、実際にはほぼ1日拘束されている」という状況は、
今後の制度見直しの中で、より厳しく見られる可能性があります。


すべての業種に共通する“改正対応”の基本


● 休日位置の固定と見える化

まず何よりも大切なのは、
「会社として、週のどこを法定休日とするのか」を決めて明文化することです。

  • 日曜日を法定休日とする、あるいは特定の曜日を基準とする
  • 店舗ごと・職種ごとの例外扱いが必要であれば、就業規則や別規程で整理する
  • シフト表・勤怠システム・就業規則の表現を揃える

「休みっぽい日」が存在するだけでは、今後の運用には耐えられません。

● 勤務間インターバルを前提にしたシフト設計

今後の方向性を踏まえると、
「インターバルを確保できるシフトだけを、そもそもパターンとして登録する」ことが重要です。

  • 遅番の翌日に早番を組み込まない(飲食・小売)
  • 夜勤の翌日に日勤を組み込まない、または開始時刻を十分に遅らせる(宿泊・介護・物流)
  • 深夜帯と早朝帯を兼務させない

「インターバルを守れる組み合わせ」と「絶対に避けるべき組み合わせ」を、
あらかじめルールとして一覧化し、店長やシフト作成者に周知しておくことがポイントです。

● シフト確定の早期化と変更ルールの明文化

勤務間インターバルや連続勤務・休日特定をきちんと運用するには、
「前日・当日になってからのシフト大幅変更」を前提にしない運用が必要です。

  • シフトは原則として前月末までに確定
  • 確定後の変更は「インターバル」「連勤」「休日」をチェックしてから反映
  • 急な欠勤補填は、代替要員のプールや応援要請ルールで吸収する

「店長がその場で何とかする」スタイルは、今後の制度の方向性とは相性がよくありません。


業種別カスタム運用(飲食・小売・宿泊・物流)


● 飲食:遅番と閉店作業の見直し

飲食業では、

  • ラストオーダーが伸びる
  • 閉店作業・片付け・仕込みで退勤が遅くなる

といった理由から、
「遅番→翌日早番」の組み合わせは、勤務間インターバルの観点から特に慎重な検討が必要です。

対策としては、

  • 閉店作業時間をあらかじめシフト上に確保する
  • 遅番専任スタッフを置き、翌日は原則休みか遅めの勤務にする
  • ラスト枠の予約・入店ルールを見直す

といった手法が考えられます。

● 小売:早朝品出しと遅番の兼務問題

小売業では、

  • 早朝の品出し・開店準備
  • 夜のレジ締め・売場片付け

といった業務があり、
「早朝+遅番」を同じ人に任せると、インターバル不足・週40時間超・連勤増加につながりやすい構造です。

早朝専任・遅番専任といった役割分担や、
短時間勤務を組み合わせる運用に切り替えることが現実的です。

● 宿泊:夜勤と明け後勤務の整理

宿泊業では、

  • 夜勤明けに、そのまま朝食対応やチェックアウト対応に参加する
  • 夜勤明け翌日もすぐ日勤に入る

といったパターンが一般的でした。

しかし、勤務間インターバルや連続勤務を意識する時代には、
「夜勤明け当日の追加勤務をどう扱うか」「明け翌日の勤務開始時刻をどう設定するか」を、
シフトルールとして整理することが重要です。

● 物流:長距離・深夜・早朝の組み合わせ

物流では、

  • 長距離移動による拘束時間の増加
  • 深夜帯の荷受けや積み込み
  • 翌朝の仕分け・配達

などが一体となり、
「終わる時間も始まる時間も読みにくい」働き方になりがちです。

今後は、

  • 運行パターンごとにインターバルを確保できるかを検証する
  • 深夜と早朝を兼務させない勤務パターンを作る
  • 仮眠と休憩・休息の扱いを整理する

といった、運行管理と労務管理を一体で見直す作業が重要になります。


2026年までに整えておきたい書類&勤怠セット


  • 就業規則:休日の定義(法定休日・所定休日・非勤務日)、勤務間インターバル、副業・兼業の扱いなどを整理・追記する。
  • 36協定:時間外・休日労働の上限と、インターバルや健康確保措置との整合性を点検する。
  • 勤怠システム設定:勤務間インターバルアラート、連続勤務日数、深夜・休日・週40時間超の自動判定ロジックを設定する。
  • シフト作成ルール:紙・Excelベースであっても、休日位置・禁止組み合わせ・確定時期・変更手順を文書化する。
  • 副業申告書・月次報告フォーム:副業の有無・勤務先・おおよその時間を把握する仕組みを整える。
  • 店舗・事業所ごとの休日カレンダー:法定休日・所定休日を一覧で示し、現場でも一目で確認できるようにする。
  • 夜勤・早朝・遅番のパターン表:許容される組み合わせと禁止される組み合わせを一覧化し、店長・配車担当に周知する。

まとめ


  • 飲食・小売・宿泊・物流は、いずれも「営業時間が長い」「深夜・早朝がある」「人手不足で属人的運用になりやすい」という共通点を持っています。
  • 2026年前後の制度見直しでは、勤務間インターバル・連続勤務・休日の事前特定・週40時間基準・副業通算といったテーマが重なり合い、これら4業種には特に強い影響が及ぶと考えられます。
  • 「その場で店長が調整する」スタイルから、「就業規則・シフトルール・勤怠システムを揃えて、自動的にチェックが効く」スタイルへと切り替えることが、最も現実的な対策です。
  • 制度内容が正式に確定した時点で一気に対応するのではなく、今のうちから“休日位置”“インターバル”“連勤”“副業”といったキーワードで自社の運用を棚卸しすることが、リスクを抑える近道になります。

飲食・小売・宿泊・物流の現場で働く人の健康を守りつつ、事業を安定して継続するためにも、
2026年を一つの節目として、働き方そのものをアップデートする準備を進めていきましょう。


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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

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