物流業界(倉庫・配送)の2026年改正対応ガイド|シフト・残業・勤務間インターバルの実務
〜「早朝荷受け・深夜配送・長距離移動」という“時間の歪み”を、2026年の制度見直しに耐える働き方へ整える〜
2026年前後に予定されている労働時間ルールの見直しは、
物流業界(倉庫業・配送業)の働き方に特に大きな影響を与える可能性があります。
物流の現場は、そもそもの業務特性として次のような要素を抱えています。
- 深夜・早朝の荷受けや仕分け
- 長距離輸送にともなう長時間の移動
- 渋滞・天候・荷主都合による拘束時間のブレ
- シフト交代のズレや、現場判断での残業延長
- 派遣・パート・請負・協力会社が混在する体制
- 他社配送との掛け持ち(副業ドライバー)の存在
一方で、現在の議論では
勤務間インターバルの確保、連続勤務の上限、時間外労働の厳格管理、週40時間基準の徹底、副業時間の通算
といった論点が重視されており、物流業界はこれらのテーマと真正面から向き合う必要があります。
本記事では、厚生労働省の公表資料や審議会での議論の方向性を前提としつつ、
制度内容が確定した後に慌てないための「事前に整えておきたい実務ポイント」を、次の観点から整理します。
- 物流業界特有の「時間構造」
- 2026年改正で特に影響が出やすいポイント
- 倉庫業での注意点
- 配送業での注意点
- 勤怠設定・シフト運用の再構築ステップ
あくまで「現時点の情報にもとづく整理」であり、
最終的な制度内容や運用は今後の正式な公表により変わる可能性がある点にはご注意ください。
物流業界の特殊事情
まず、物流業界がそもそもどのような「時間の使い方」をしているのかを整理します。
● 早朝・深夜の荷受け
倉庫や物流センターでは、荷主や輸送スケジュールの都合により、
深夜帯〜早朝帯の入出庫作業が日常的です。
- 0:00〜3:00 長距離便の到着に合わせた荷受け
- 3:00〜6:00 仕分け・積み替え作業
- 6:00〜8:00 早朝便・ルート配送に向けた積み込み
このように、
「いつが終業で、いつが始業か」が日によって揺れやすいことが、物流ならではの構造的な課題です。
● 長距離移動
配送業、とりわけ長距離トラックや幹線輸送では、
「移動時間=そのまま労働時間」となります。
- 片道数百キロの移動
- 渋滞・事故・気象条件による到着遅延
- 荷待ち・荷降ろし待機時間の発生
こうした要素が積み重なることで、
週40時間・時間外上限・勤務間インターバルのいずれにも影響しやすい構造になっています。
● シフト交代のズレ
倉庫・配送ともに、
「作業が終わるまでが勤務」という性質が強く、予定していたシフトより終了が押しやすい業界です。
- 荷物量の想定違いで残業が延びる
- 交代要員が渋滞などで遅れ、交代が後ろ倒しになる
- トラブル対応で現場責任者だけ退勤が遅くなる
この「ズレ」が積み重なると、
勤務間インターバル不足・連続勤務日数の増加・時間外労働の膨張につながりやすくなります。
2026改正が物流に直撃するポイント
次に、2026年前後の制度見直しに関する議論のうち、物流業界が特に意識しておきたいポイントを整理します。
● 勤務間インターバル義務化(11時間)方向の議論
勤務間インターバルとは、
「前日の終業時刻から、翌日の始業時刻まで、一定時間以上の休息を確保する」という考え方です。
日本でも、
おおむね11時間程度の休息を確保することをひとつの目安とする方向性が資料等で示されており、
今後は物流業界でも、勤務間インターバルの確保を前提にしたシフト設計が求められる可能性があります。
例として、次のような働き方は、
制度見直し後には再検討が必要になるかもしれません。
- 22:00〜4:00 深夜の荷受け・仕分け
- 8:00〜17:00 翌日の出荷準備・積み込み
この場合、終業4:00 → 始業8:00で、休息は4時間しかありません。
深夜帯と日中シフトを同一人物でつなぐ運用は、今後リスクが高まると考えられます。
● 連続勤務の上限(14日連続勤務など)に関する議論
連続勤務が長期化すると、睡眠不足・疲労蓄積・事故リスクが高まります。
物流はまさにその影響が出やすい業界です。
- 繁忙期に倉庫スタッフが10日以上連続勤務
- ドライバーが連続で乗務し、休日が実質機能していない
今後、「一定日数以上の連続勤務を避けるべき」という考え方が制度面でも強まっていく方向性が示されており、
物流企業としては、早めに「連続勤務日数の上限」を内規として決めておくことが重要です。
● 時間外計算の厳格化
物流では、拘束時間が長くなりやすい一方で、
従来は「業務の特性だから仕方ない」とされてきた場面も少なくありません。
しかし、週40時間を基本とした時間外労働管理を厳格に行う方向性が強まっているため、
「いつ・どこからどこまでを労働時間とするか」を改めて明確にしておくことが大切です。
● 副業ドライバーの労働時間通算
軽貨物ドライバーや個人事業主との組み合わせも含め、
物流業界では「本業+副業」で働く人が増えています。
- 平日:倉庫内作業(本業)
- 夜間:フードデリバリーや宅配便(副業)
- 休日:別会社の配送応援
今後、副業・兼業の労働時間を通算して健康確保・時間外上限を管理していく流れが進めば、
企業側も「副業の有無」「副業でのおおよその労働時間」を把握しておくことが求められる場面が増えていきます。
● 週44時間特例の見直し
一部の事業場では、
週44時間までを法定労働時間として扱う特例が認められてきましたが、
働き方の公平性や健康確保の観点から、週40時間へ基準を揃えていく方向での見直しが議論されています。
この方向性が具体化すると、
長距離輸送を前提とした「週44時間前提のシフト」は、
週40時間内での再設計が必要になる可能性があります。
倉庫業の注意点
● 荷受け作業の長時間化
倉庫業では、荷主・運送会社・到着時刻などの要素がからみ、
入庫・出庫作業が予定より長時間化しやすいという特徴があります。
- 予定時間を超えてトラックが到着する
- 荷物量が増え、仕分け作業が長引く
- 夜間〜早朝にかけて作業が伸びる
こうした状況が続くと、
- 勤務間インターバルが確保しにくい
- 週40時間を超える労働が常態化する
- 休憩時間が実質的に削られる
といった問題が起こりやすくなります。
● パート・派遣の混在
倉庫現場では、
- 派遣社員・短期アルバイト
- パートタイマー
- 契約社員・正社員
が同じラインで働くことが一般的です。
このため、
- 人材会社側と自社側で労働時間の把握方法が異なる
- 派遣スタッフの残業が、現場判断で追加される
といった状況が生じやすく、
全体としてどれだけの労働時間・連続勤務が発生しているのかを見えにくくする要因となります。
● 休憩と休日の位置づけ
倉庫作業では、荷物の入庫タイミングに合わせて休憩をずらすことも多く、
「休憩が取れなかった」「まとめて休んだ」など、運用が現場任せになりがちです。
また、
- 繁忙期に休日を後ろ倒しする
- シフト上「非勤務日」だが、応援出勤している
といったケースもあり、
休憩時間・休日の管理を就業規則と整合させることが、2026年以降はいっそう重要になります。
配送業の注意点
● ルートの遅延で勤務間インターバルが圧迫される
配送ドライバーは、
翌日の出発時刻が固定されている一方で、帰庫時刻が日によって大きく揺れるという特徴があります。
- 渋滞・事故・気象条件による遅れ
- 荷主側での積み込み・荷降ろし待機
- 追加配送の依頼
その結果、本来確保したい勤務間インターバルが、
現実には短くなっているケースが少なくありません。
● 過密スケジュールの改善
配送ルート表の作成は、
「経験のある運行管理者や配車担当者のノウハウ」に依存していることが多く、
無理のあるスケジュールが“慣習”として残っている場合があります。
2026年以降を見据えると、
- 1日の配送件数・走行距離に上限を設ける
- 休憩と勤務間インターバルをセットで設計する
- 「遅れ前提」のバッファ時間をルート表の中に組み込む
といった、安全性と法令適合を優先した設計へのシフトが求められていきます。
● 他社配送との副業通算
配送業では、次のような働き方が増えています。
- 平日:運送会社のドライバー(本業)
- 週末:軽貨物・宅配便の委託ドライバー(副業)
- 夜間:フードデリバリー
労働時間通算の考え方が実務上も重視されるようになると、
「本業だけを見れば法令内、通算すると過大」というパターンが問題化する可能性があります。
企業としては、少なくとも
- 副業の有無と業務内容
- おおよその労働時間帯と週・月の時間
を把握したうえで、
過重労働や勤務間インターバル不足が疑われる場合には、シフト調整や面談等の対応を検討することが重要です。
2026年までに再構築すべき勤怠設定
最後に、物流業界の企業が「今から準備しておきたい」勤怠設定・運用の見直しポイントをまとめます。
● 勤務間インターバルを意識したアラート設定
- 前日の終業と翌日の始業の間隔を自動計算する
- 一定時間未満(例:11時間未満)の場合にアラートを出す
- 深夜シフト担当者と日中シフトの兼任をチェックする
● 週40時間基準での時間外管理
- 週ごとの総労働時間を自動集計する
- 40時間を超えそうなタイミングで警告を出す
- 長距離ドライバーの拘束時間と労働時間の区別を整理する
● 深夜・休日・連続勤務の一体的な判定
- 深夜時間帯の労働を正確に区分して記録する
- 休日と非勤務日を区別した設定を行う
- 連続勤務日数を自動カウントし、上限に近づいたらアラートを出す
● 副業時間通算を見据えた情報取得フロー
- 副業・兼業の有無を申告してもらう仕組みを整える
- 副業先の勤務時間帯・おおよその時間数を定期的に確認する
- 過重労働が疑われる場合には、健康配慮の観点からシフト調整を行う
● 派遣・パート・請負を含めた「全体時間」の見える化
- 雇用形態や契約形態にかかわらず、勤務実績を一元的に把握する
- 協力会社とも情報共有のルールを整備する
- 現場管理者任せではなく、本社・人事部門で統一ルールを運用する
まとめ
- 物流業界(倉庫・配送)は、「深夜・早朝」「長距離移動」「荷量変動」によって、もともと時間管理が難しい業界です。
- 2026年前後の制度見直しでは、勤務間インターバル、連続勤務日数、週40時間基準、時間外労働の管理、副業時間通算といった論点が、一層重視される方向性が示されています。
- これまで「現場の頑張り」で乗り切ってきた働き方は、健康確保・法令適合の観点から、シフト・勤怠・就業規則の三位一体で見直す必要があります。
- 制度内容が最終的に確定する前であっても、「勤務間インターバルを意識したシフト」「連続勤務の上限を決める」「週40時間を基準にシミュレーションする」といった準備は、すぐに着手できます。
- 物流の現場を守るためには、“慣れている働き方”ではなく“続けられる働き方”に切り替えることが、2026年以降の最大のリスクヘッジになります。
自社の実態に合わせて、就業規則・シフト表・勤怠設定を順番に点検し、
必要に応じて専門家や社労士と連携しながら、無理のない移行プランを検討していくことが重要です。
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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。
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