飲食業は2026年改正で何が変わる?シフト・残業・勤務間インターバル実務ガイド

〜「遅番→早番」「深夜営業」「属人的シフト作成」を前提にした働き方を“つくり直す”ための実務ガイド〜


2026年前後を見据えた労働時間制度の見直しにおいて、
「もっとも影響が大きい業種のひとつが飲食業」と言われています。

その背景には、飲食業特有の働き方があります。

  • 閉店時間が読みにくい遅番シフト
  • 深夜までの長時間営業
  • 店長やリーダー個人に依存した“属人的シフト作成”
  • 突発欠勤を現場の気合いで埋める運用
  • 繁忙日・イベント時の長時間勤務

こうした運用は、勤務間インターバル、連続勤務の上限、法定休日の事前特定、週44時間特例の見直し、
副業時間の通算など、現在議論が進んでいる論点と正面からぶつかる構造を持っています。

特に、今後の制度設計の方向性として次のようなポイントが挙げられています。

  • 勤務間インターバル(勤務終了から次の勤務開始までの一定時間の休息)の確保
  • 一定日数を超える連続勤務の制限
  • 法定休日を事前に特定し、曖昧な「休み」をなくすこと
  • 週44時間特例の見直しと週40時間基準への収れん
  • 本業+副業の労働時間の通算を踏まえた健康確保

本記事では、現時点で公表されている情報や議論の方向性を前提に、
飲食業が押さえておくべきシフト・残業・勤務間インターバルのポイントを、実務の視点で整理します。


飲食業が“最も影響を受ける”と言われる理由


● 遅番→早番の連続が多い

飲食店でよく見られるパターンは次のようなものです。

  • 遅番:17時〜23時(閉店作業次第では24時近くまで)
  • 翌日早番:9時〜15時(開店準備含む)

この場合、実際の勤務終了時刻から次の勤務開始時刻までの休息時間が短くなりがちです。
勤務間インターバルの基準が強化される流れの中では、「遅番の翌日に早番を入れる」運用自体を見直す必要が出てきます。

● 長時間営業・深夜帯が前提の業態

飲食業は次のような特徴があります。

  • ラストオーダーが遅く、閉店時間が読みづらい
  • 閉店後の片付け・締め作業が長くなりやすい
  • 繁忙日には想定外の残業が発生しがち

結果として、「実際に何時間働いたのか」「どこからが時間外なのか」の線引きが曖昧になりやすい構造を持っています。

● 属人的シフト作成に頼りがち

多くの店舗では、シフト作成が次のようなスタイルになっています。

  • 店長や一部の社員の経験則に依存
  • 「この人はよく頑張ってくれる」という感覚で連勤・長時間をお願い
  • 法定休日・勤務間インターバル・連続勤務日数を“感覚的”に処理

こうした属人的な組み方は、ルールが明確になるほど、「意図せず法令とズレる」リスクを高めます。


2026改正論点による主な影響ポイント


● 勤務間インターバル11時間の確保

勤務間インターバル制度では、
「前日の勤務終了時刻から次の勤務開始時刻まで、一定時間以上の休息を確保する」ことが重視されています。

飲食店では、

  • 遅番の終了が日によって大きくブレる
  • 翌日の開店準備は固定時間で早い
  • 人手不足で「少し早めに来てほしい」が常態化

といった事情から、インターバル不足が構造的に発生しやすいとされています。

● 14日を超える連続勤務への規制強化の方向

連続勤務日数についても、
「一定の日数を超える連続勤務を制限すべき」という方向性が示されています。

飲食業では、次のような理由から連勤が起こりがちです。

  • 土日・連休・イベント時の人員不足
  • 急な欠勤の穴埋めを同じメンバーが何度も担当
  • 店長・ベテラン社員が長期連勤で店舗を支える文化

今後は、「何日連続で働いているか」をシフト段階でチェックする仕組みが重要になります。

● 法定休日の事前特定

飲食業では、

  • 「シフトに入っていない日=休日」という運用
  • 店舗ごと・人ごとに休日基準がバラバラ

といったケースが少なくありません。

一方、今後の方向性としては、
「法定休日を事前に特定し、いつが休日なのかを分かるようにしておく」ことが求められています。
この考え方が強まるほど、「休日なのか、単なる非勤務日なのか」を分けて管理する必要が出てきます。

● 週44時間特例の見直しと週40時間基準への収れん

飲食・小売・サービス業など一部の事業場には、
週44時間までを法定労働時間として扱える特例が認められてきました。

しかし今後は、この特例の見直しが議論されており、
「週40時間を基本とした運用」に揃えていく方向が示されています。

週40時間への収れんが進むと、

  • 8時間×5日勤務 → すでに限界ライン
  • 7時間×6日勤務 → 週42時間で法定外労働の考え方と衝突

といった状況が生じやすくなります。

● 副業時間通算の重要度アップ

飲食業の従業員は、副業や掛け持ちが多い傾向にあります。

  • 夜:飲食店のホール
  • 早朝:コンビニ・清掃・品出し
  • 休日:イベントスタッフ

本業と副業の労働時間を通算して健康確保・時間外上限を考える流れが強まると、
「自社のシフトは適正でも、通算すると過重労働になっている」ケースが問題視されやすくなります。


飲食店のシフト作成はどう変わる?


● 遅番→早番を“前提”にしない

勤務間インターバルの確保を前提にすると、
「遅番の翌日は基本的に遅めの勤務にする」という設計に切り替える必要があります。

  • 遅番専任メンバーと早番専任メンバーを分ける
  • 遅番明けの翌日は休みに寄せる
  • 遅番明けの早番は禁止ルールとして明文化する

● 2交代制から“3つ以上の時間帯”への再設計

「早番/遅番」の2交代制だけでは、
勤務間インターバルや週40時間基準を守りながら運用するのが難しくなります。

  • 早番/中番/遅番の3交代にし、1人あたりの拘束を短くする
  • ピーク時間帯だけをカバーする短時間シフトを増やす
  • 閉店作業専任の“クローズ要員”を設ける

こうした工夫により、「長時間連続で働く人」を減らしていくことがポイントです。

● 深夜営業のシフト調整

深夜帯は、次のようなリスクが重なります。

  • 勤務間インターバル不足
  • 深夜割増のコスト増
  • 連続勤務日数の増加
  • 副業との掛け持ちで健康リスクが高まる

そのため、今後は、

  • 深夜帯は担当者を限定し、勤務パターンを固定する
  • 深夜担当者の翌日勤務を「原則休み」または「大幅に遅い時間」へ寄せる
  • 深夜営業自体の見直しを検討する

といった「構造として無理がない形」に変えていく必要があります。


厨房・ホールそれぞれの注意ポイント


● 調理スタッフの拘束時間が長くなりやすい

厨房では、営業前後の業務が多くなりがちです。

  • 仕込み作業での早出
  • 営業終了後の片付け・清掃
  • 翌日の準備作業

これらを「勤務時間として正しく把握できているか」を確認しないと、
勤務間インターバル・週40時間の両方でズレが生じやすくなります。

● ホール人員の休日確保ルール

ホールは、

  • 短時間パート
  • 学生アルバイト
  • フルタイムの正社員

が混在するため、「誰がどのタイミングで休めているのか」が見えづらくなります。

法定休日の考え方が強まる中では、
「個々人について週1日の休日をどう位置付けるか」をシフト表上で明示することが大切です。

● 兼任ポジションの時間管理

飲食業では、

  • 厨房+ホール
  • 仕込み+ホール
  • 閉店作業+翌日の準備

といった兼任パターンが多く、「気づいたら1日中お店にいる」という状態が生じがちです。

兼任を禁じる必要はありませんが、
「1人あたりの連続拘束時間」が長くなりすぎないように線引きすることが、今後はより重要になります。


2026年までに整えるべき運用チェックリスト


  • 遅番→早番を原則禁止する運用ルールを決めたか
  • シフトを前月末までに確定するフローを作ったか
  • 法定休日の考え方を明確にし、シフト表に反映しているか
  • 2交代制から3交代制・短時間シフトへの移行を検討したか
  • 深夜専任者の勤務パターンと翌日勤務のルールを決めたか
  • 副業の有無・副業時間を確認する仕組み(申告フォーム等)を用意したか
  • 厨房の仕込み・片付け時間を「見える化」し、拘束時間を把握したか
  • 店長一任ではなく、本部や人事と連携してシフトをチェックする体制を整えたか

まとめ


  • 飲食業は、労働時間制度の見直しの影響を特に受けやすい業種
  • 勤務間インターバル・連続勤務・法定休日・週40時間の考え方が、これまでの感覚的なシフトとぶつかりやすい
  • 遅番→早番前提のシフトや、店長の経験だけに頼る属人的運用は見直しが必要
  • 「早番/中番/遅番+短時間シフト」の組み合わせで、1人あたりの負荷を下げる発想が重要
  • 副業との通算も含め、“どれだけ働いているか”を見える化することが2026年以降の前提になる

制度の詳細は今後もアップデートされていく可能性がありますが、
飲食業としては「ギリギリで対応する」のではなく、
今のうちからシフト・残業・勤務間インターバルの考え方を一段引き上げておくことが、現場と経営の両方を守る鍵になります。


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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

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