シフト制×副業通算ルール|2026年からの“割増賃金リスク”をどう防ぐか

〜副業時代のシフト管理は“本業+副業の労働時間”を前提に再設計しなければ守れない〜


副業・兼業が当たり前になった今、ひとりの従業員が「昼は本業」「夜は副業」といった働き方をするケースが確実に増えています。
同時に、2026年に向けた労働時間ルールの見直しの流れの中で、
「本業と副業の労働時間を通算して管理する」という考え方の重要度が一段と高まっています。

もともと副業の通算ルールは労働基準法上すでに存在する考え方ですが、
実務では「形だけ」「そこまで手が回らない」とされてきた側面があります。
しかし、勤務間インターバル、連続勤務上限、週40時間基準、休日特定などが強化されていく流れの中で、
通算を前提としない労働時間管理は、割増賃金や健康確保の面でリスクが高い運用になっていきます。

特にシフト制の企業──飲食・小売・物流・宿泊・サービス業などでは、
「本業のシフト」と「副業のシフト」が互いに影響し合い、次のような問題が起こりやすくなります。

  • 本業+副業の合計で週40時間を超えているのに残業として扱えていない
  • 勤務間インターバルが事実上確保できていない
  • 連続勤務日数が実際には14日を超えている
  • 「どの会社が割増を払うのか」があいまいなまま放置されている

この記事では、

  • 副業・兼業の「労働時間通算」とは何か
  • シフト制で起こりやすい具体的なトラブル
  • 割増賃金リスクがどこで顕在化しやすいか
  • シフト制企業が今から整えるべき実務対応
  • 就業規則に入れておきたい“副業ルール”のポイント

を、実務目線で整理していきます。


副業・兼業の労働時間通算とは


● 本業と副業の時間を合算する考え方

労働基準法上は、労働者が複数の事業場で働く場合、
「同じ1人の労働者の労働時間」として合算して考えるという前提があります。

イメージとしては次のとおりです。

  • 本業:週30時間
  • 副業:週15時間
  • 合計:週45時間 → 40時間を超えた5時間分は「法定外労働」として扱うのが原則

どの会社がどの程度割増賃金を負担するかは、実務上の調整が必要ですが、
「本人の働き過ぎをどう防ぐか」「週40時間・時間外上限をどう守るか」という視点では、合計時間でみることが前提になります。

● 36協定の上限にも影響する

副業時間は、時間外労働の上限(36協定)にも影響を与えます。

  • 月45時間・年360時間といった上限規制
  • 特別条項付き36協定の上限

本業の残業だけを見れば「月30時間」であっても、
副業側の時間も含めて通算すると「実質的にはそれ以上働いている」という状態は珍しくありません。

● 「管理者は誰か」問題と企業の責任

労働時間の管理責任は、原則としてそれぞれの使用者(企業)にあります。
「副業しているのは知っていたが、時間までは把握していなかった」という状態は、
割増賃金や健康確保の観点から見るとリスクの高い運用になり得ます。

もちろん、現実的に「相手企業の全てのシフトをリアルタイムで把握する」のは難しいため、
就業規則・申告制度・確認フローを通じて、会社として“把握に努めていること”を示せる状態が重要になります。


シフト制で起こりやすい副業トラブル


● シフト外で副業する従業員

シフト制企業では、以下のような組み合わせが増えています。

  • 昼:接客・販売(本業)
  • 夜:デリバリーや別店舗でのアルバイト(副業)
  • 早朝:品出しや倉庫作業

一見「うまく時間をやりくりしている」ように見えても、
本業側からは実態が見えにくく、気づかないうちに週40時間を超えたり、勤務間インターバルが確保できていなかったりします。

● 労働時間の申告不足・申告遅れ

よくあるパターンは次のとおりです。

  • 「副業の時間はざっくりしか覚えていない」
  • 「今月どれくらい働いたか分からない」
  • 「月末にまとめて言えばいいと思っている」
  • 「そもそも副業を会社に伝えていない」

これでは、本業側で正しく時間外・割増計算をすることはできません。

● 「知らなかった」では済まない場面もある

副業時間を前提とした通算管理の必要性が強調されていく中で、
「副業をしていることは把握していたが、具体的な時間は確認していなかった」という状態は、
行政指導や是正勧告の際に指摘対象となる可能性があります。


2026年の割増賃金ルールと通算リスク


● 通算で法定外労働が発生しやすくなる

勤務間インターバル、連続勤務上限、週40時間基準、法定休日の特定など、
労働時間周りのルールが重層的になるほど、「合計するとオーバーしている」ケースが増えます。

たとえば、次のようなケースです。

  • 本業:週38時間
  • 副業:週5時間
  • 合計:週43時間 → 3時間は法定外労働の考え方に引っかかる

● 割増賃金の支払い義務がどこで発生するか

実務上の争点になりやすいのは次のポイントです。

  • どの会社が割増賃金を支払うのか
  • どの時間帯が「40時間超」に該当するのか
  • 本人の申告内容にどこまで依拠できるのか

いずれにしても、「副業の存在を前提に何も確認していない」状態は最も危険です。
一定のルール・手続・記録がないと、後から説明ができません。

● 本業・副業間の情報共有の難しさ

企業同士が直接やり取りをすることは現実的には難しく、
多くの場合、「従業員本人を介して情報をやり取りする」形になります。

  • 本人経由で「勤務時間証明書」をやり取りする
  • 副業先から本業側への時間情報の提供に同意を得る
  • 本業側がその情報を前提にシフト・残業を調整する

このような運用を支えるためには、就業規則と書面フローをきちんと整備しておくことが不可欠です。


シフト制企業がとるべき対策


● 副業申告フォームの整備

最初の一歩は、「副業をしているかどうか」「どこで・どの程度働いているか」を把握できる仕組みをつくることです。

  • 副業の有無(している/していない)
  • 副業先の名称・業種
  • 勤務形態(シフト制・固定時間など)
  • 週あたり・月あたりのおおよその予定時間
  • 深夜時間帯の勤務有無

Googleフォームや社内ポータル、入社時書類など、会社の実情に合った形で構いませんが、
「申告してもらう仕組みがある」こと自体が重要です。

● 副業時間の月次申請フロー

予定時間だけでなく、「実績としてどれくらい働いたのか」を月次で把握する運用も検討する必要があります。

  • 毎月の勤怠締めと合わせた「副業時間報告」
  • 勤怠システムに副業入力欄を設ける
  • 簡易なフォーマットで構わないので、時間数を残す

完璧な通算をいきなり目指すのではなく、
「少なくとも、会社として確認しようとしている」状態をつくることが現実的なスタートラインです。

● シフト作成時に確認すべきポイント

シフト制企業では、次の観点で副業の影響をチェックします。

  • 本業+副業の合計で週40時間を大きく超えていないか
  • 深夜明けの翌日に早番を入れていないか(インターバル不足)
  • 本業の法定休日に副業勤務が集中していないか
  • 連続勤務日数が14日を超えるような組み合わせになっていないか

とくに「深夜明け → 翌日早番」は、
本業側では“普通のシフト”でも、副業と合わせると睡眠時間がほとんどないという状況を生みがちです。


就業規則に追記したい“副業規程”のポイント


● 副業の申告義務

例としては、次のような趣旨です。

  • 従業員が副業・兼業を行う場合は、事前に会社へ申告すること
  • 勤務先・勤務時間・業務内容など、会社が指定する事項を届け出ること

● 労働時間の報告義務

通算管理の実務を支えるためには、次のような条文イメージが考えられます。

  • 副業先での労働時間について、会社の定める方法により定期的に報告すること
  • 報告内容に虚偽があった場合は、就業上の措置の対象となることがある

● 労働時間通算と割増賃金の考え方

例えば、次のようなポイントを明文化するケースが多く見られます。

  • 本業と副業の労働時間は、法令に基づき通算して管理すること
  • 通算の結果、会社に割増賃金の支払義務が生じる場合は、法令に従い支払うこと
  • 健康確保の観点から、必要に応じてシフト変更・勤務制限を行うことがある

実際の条文作成にあたっては、最新の行政資料や専門家の助言を踏まえながら、
自社の規模・業態に合わせて調整していくことが重要です。


まとめ


  • 副業・兼業の労働時間は「本業と通算する」という考え方が前提になる
  • シフト制企業は、本業+副業の組み合わせで週40時間超・インターバル不足が起きやすい
  • 副業申告フォームと月次報告フローは、割増賃金リスクを下げるための最低ライン
  • 就業規則に“副業のルール”の条文をきちんと入れておくことで、運用と説明がしやすくなる

副業が前提の時代だからこそ、
“本業だけを見ればいい”という発想から一歩踏み出し、
労働時間の通算を意識したシフト・勤怠・ルールづくりを進めていくことが、企業と従業員の双方を守ることにつながります。


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※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

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