40時間労働の全面適用で何が変わる?2026年に中小企業が取るべき実務対応まとめ

〜週44時間の特例廃止 → 全業種40時間へ。人件費・運用・規程をどう最適化するか〜


2026年の労働基準法改正により、これまで一部業種に認められてきた「週44時間特例」が完全に廃止され、すべての企業が週40時間労働へ一本化される方向で議論が進んでいます。

ここで押さえたいのは、単なる“週4時間の差”ではないという点です。この変更は、

  • シフト総労働時間の再計算
  • 固定残業代(みなし残業)の設計変更
  • 変形労働時間制の再構築
  • 人件費の再試算
  • 勤怠システムの設定見直し
  • 就業規則の全体改定

といった具合に、企業の「労務管理の土台」を組み替えるレベルのインパクトを持ちます。

特に中小企業では、

  • ギリギリの人員数で現場が回っている
  • 一部の社員に業務負荷が集中している
  • 固定残業の設計が古いまま使われている
  • 就業規則が5〜10年以上アップデートされていない
  • 変形労働時間制を「名ばかり」で運用している

といった状況も少なくありません。週40時間制への移行を誤ると、「違反リスク」と「コスト増」が同時に表面化しやすくなります。

本記事では、

  • 40時間全面適用のインパクト
  • 固定残業代・変形勤務制・シフト制の再計算ポイント
  • 今後増えやすい法違反リスク
  • 今日から着手すべきチェックポイント

を、人事・労務の実務目線で整理します。
2026年に向けて、「現場を止めずに法対応するためのロードマップ」を一緒につくるイメージで読み進めてみてください。


40時間全面適用のインパクト

まずは、週40時間労働の全面適用がどの程度のインパクトを持つのか、数字でイメージをそろえておきます。

● 労働時間の均一化

従来、商業・接客サービス・小売・飲食など一部業種では、週44時間まで所定労働時間を延ばせる特例が認められていました。

これが週40時間に統一されると、

  • 毎週4時間分の労働枠が消える
  • 月換算でおよそ17時間減る
  • 年間ではおよそ206時間分の労働力が消滅する

というイメージになります。社員が10名いれば、年間2,000時間超の労働力をどこかで埋め合わせる必要が出てきます。

● 特例廃止で生じる新コスト

週44時間特例がなくなることで、次のようなコスト増要因が生じます。

  • 所定労働時間が短くなることで、残業が発生しやすくなる
  • 同じシフトでも「残業扱い」となる時間帯が増える
  • 不足分をパート・アルバイト・派遣等で補う必要が出る
  • 繁忙期の変形労働時間制が機能しにくくなる

売上や営業時間は変わらないのに、労働時間だけが狭まるため、「人件費の構造」を見直さざるを得ない企業が増えると想定されます。

● 業種ごとの影響差

40時間全面適用の影響度合いは、業種によって差があります。

  • 影響が大きい:小売・飲食・宿泊・サービスなどの店舗ビジネス
  • 中程度の影響:製造・物流など、もともと残業が多い業種
  • 相対的に小さい:オフィスワーク・IT・専門職中心の業種

特に店舗型ビジネスでは、「営業時間 × 人員配置 × 所定労働時間」の三つ巴で再設計が必要になります。


固定残業代・変形勤務制・シフト制の再計算

週40時間制への移行の中で、最も手戻りが起きやすいのが「数字の再計算」です。
固定残業代・変形労働時間制・シフト総労働時間の3点は、必ず見直しが必要になります。

● 固定残業代の含め方

固定残業代(みなし残業)は、「所定労働時間」とセットで設計されています。
週44時間前提で決めた金額を、そのまま週40時間制に持ち込むと、次のような問題が生じやすくなります。

  • 固定残業に含めてよい時間数の上限を超えてしまう
  • 基礎時給の計算方法と整合しなくなる
  • 「何時間分の残業代を含めているのか」が説明できない

週40時間制へ移行するタイミングでは、固定残業代の「時間数」「金額」「内訳」を改めて棚卸しし、就業規則・雇用契約書・給与規程の三つを揃えておくことが重要です。

● 変形労働時間制の上限計算

1か月・1年単位の変形労働時間制を使っている企業は、週40時間制への移行に最も慎重さが求められます。

週44時間特例がなくなると、

  • 月平均の労働時間数
  • 年間総労働時間
  • 必要な休日数
  • 変形カレンダーの山・谷の設計

といった数値をすべて40時間基準で再計算し直さなければなりません。
ここを曖昧なままにしておくと、「変形制を採用しているはずなのに、実は時間外が過大だった」という事態を招きかねません。

● シフトの総労働時間調整

44時間前提で回してきたシフトも、総見直しが必要になります。

  • 1日8.25〜8.5時間が当たり前になっている
  • 土日フルシフト+平日ピークも社員が担っている
  • 開店準備・閉店作業を含めると実質9時間近い拘束になる

こうしたシフトは、40時間制に切り替えた途端に「残業の塊」になり、人件費負担が一気に増えます。
単に労働時間を削るのではなく、「営業時間・サービス内容・人員配置」の見直しもセットで検討する必要があります。


今後増える“法違反リスク”

40時間制への移行期は、法令違反が発生しやすいタイミングでもあります。特に注意したいポイントを整理します。

● 総労働時間の超過

よくあるパターンが、次のようなケースです。

  • 週5日 × 8.5時間勤務を「フルタイム」としてしまう
  • 月173時間・176時間といった所定時間をそのままにしている
  • フルタイム契約の定義が旧制度のまま変更されていない

見かけ上は大きく変えていないつもりでも、週40時間制のもとでは「総労働時間が常にオーバーしている」という状態になっていることがあります。

● 休日割増の誤計算

週40時間制では、法定休日の取り扱いが一段と重要になります。

  • 所定休日と法定休日の違いが整理されていない
  • 月間休日数だけを見て、週ごとの休日が抜けている
  • シフト制で休日がバラバラになり、どこが法定休日か分からない
  • 変形労働時間制と休日のルールが噛み合っていない

こうした状態のまま週40時間制に移行すると、「本来は法定休日なのに平日扱いで割増なし」という誤計算が起きやすくなります。

● 勤務間インターバルとの衝突

週40時間化と並行して、勤務間インターバル(終業から次の始業までに一定時間の休息を確保するルール)や、14日を超える連続勤務の禁止といったテーマへの注目度も高まっています。

具体的には、

  • 閉店作業で22時・23時まで勤務 → 翌朝の開店準備で早朝出勤
  • 深夜帯シフトの翌日に、通常の早番シフトで連続勤務
  • 変形制の繁忙期に、勤務間インターバル確保がおざなりになる

といった働き方が続くと、「週40時間は守っているが、勤務間インターバルや連勤上限を満たしていない」という複合的なリスクが生じます。


企業が今日から取り組むべきチェックポイント

「2026年直前にまとめて対応する」は、現実的ではありません。今日から少しずつ進めておくべきポイントを整理します。

● 就業規則の棚卸し

まずは、就業規則と各種規程の見直しです。最低限、次の項目をチェックします。

  • 所定労働時間が週40時間前提になっているか
  • 休日の定義(法定休日・所定休日)が明確か
  • 変形労働時間制のカレンダーが実態に合っているか
  • 勤務間インターバルや連続勤務上限についての規定があるか
  • 固定残業代の時間数と計算方法が明文化されているか

古い規程を前提に運用を変えてしまうと、「現場は40時間基準で動いているのに、規程が追い付いていない」というズレが生じ、後々のトラブル要因になります。

● 勤怠設定の見直し

次に重要なのが、勤怠システムの設定です。週40時間制への移行に際しては、少なくとも次の設定を見直しておきたいところです。

  • 週40時間を超えた部分を自動で時間外としてカウントできているか
  • 所定労働時間・法定休日・所定休日が正しく設定されているか
  • 勤務間インターバルの未達をアラートできるか
  • 14日を超える連続勤務が発生したときに気付けるか
  • 変形労働時間制を採用している場合、そのカレンダーと上限が反映されているか

勤怠設定が古いままでは、「どこで違反しているのか」を把握することすらできません。就業規則の見直しとセットで進めることがポイントです。

● 役割・配置の最適化

最後に、人の配置と役割分担です。週40時間制に合わせて、

  • 開店担当・閉店担当をある程度固定化する
  • 仕込み・清掃・片付けなどを専任スタッフや外部に振り分ける
  • 学生アルバイト・パートの戦力化を進める
  • 社員が「本来やるべき仕事」に集中できる環境をつくる

といった施策を進めることで、「時間を減らしても回る現場」に近づけることができます。


まとめ

週44時間特例の廃止による「40時間労働の全面適用」は、中小企業にとって、労務管理全体を見直すきっかけとなる大きな転換点です。

ポイントを整理すると、次の通りです。

  • 毎週4時間・年間約206時間分の労働枠が消える
  • 残業ラインが前倒しになり、人件費は上昇しやすくなる
  • 固定残業代・変形労働時間制・シフト総労働時間の再計算が必須
  • 勤務間インターバルや連続勤務上限との複合管理が必要
  • 就業規則と勤怠システムの双方を40時間制に合わせて整える必要がある

2026年を「ただの法対応の年」と見るのではなく、働き方の土台を作り直すチャンスと捉え、今日から少しずつ準備を進めていくことが、最も安全で、最も生産性の高いアプローチと言えます。

まずは、自社の就業規則・勤怠設定・シフト設計を「週40時間労働」の目線で棚卸しし、「どこから手をつけるべきか」を明らかにするところから始めてみてください。


👉 人事部門導入のご相談は:トナリの人事課長®公式ページ

「トナリの人事課長®」は、中小企業の“人事部門まるごと導入”を専門とする実務型HR支援サービスです。


※本記事は公開時点の情報にもとづいて作成しています。今後の制度変更や運用の見直しにより、内容が変わる可能性があります。

ブログ一覧に戻る

人事ニュースを受け取る

※登録はいつでも解除できます